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筋トレは潰れるまで追い込まないのが新常識

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2020年代に入ってからの潮流の1つとして「筋トレは潰れるまで追い込まないのが新常識」というものがあります。

この文脈からVelocity Based Training(VBT)の必要性が出てくるわけですが、できる限りわかりやすく、お伝えする記事を書いてみますね。

「潰す」まで追い込ませないが新定番に

今まで常識的に行われていた「筋トレは潰れるまで」というか、「ギリギリまで追い込むぞ」という常識そのものが変わってきています。

「筋トレは挙上限界まで行う」というMuscle Failuerという考え方は、まだまだ一般的でしょう。

特に選手・アスリートは、ベンチプレスやインクラインベンチといった上半身のプッシュ系種目ほど、この形で追い込みたがりますよね。

自己満足というか充実感・充足感を得られるという点でのメリットはありますから、それが悪いわけではありません。ただ私が指導しているセッション内では、できるだけ、そこまではやらせないようにしています。

なぜかというと、筋力やパワーの向上、そもそも筋肥大に対してMuscle Failureまで追い込む必要ないのではないかという研究結果が多く出てきているからです。

筋力・パワー・筋肥大の違い

非常に大雑把な説明で恐縮ですが、筋力とパワー、筋肥大という言葉がありますので、その定義を説明します。

筋力

まず筋力というのは、どれぐらい重たいものが持ち上げられるかということです。最大筋力は質量という表現もしますが、力の出方のことなんですね。

パワー

次にパワーです。筋力と同じように感じるかもしれませんが、パワーは最大重量・筋量・質量に対して、スピードの要素が掛け算で関わってきます。仕事量と言いますが、決まった短い時間の中で、どれくらい重たいものを素早く動かせるのかがパワーです。

実際のフィールドで力を発揮する時、パフォーマンスに必要なのはパワーの要素が大きいです。

車で言うところのローのような、ゆっくりでも、とにかくグーッと力を入れていく動作は少ないですよね。どちらかというと、パパパンッと切り返して、4速・5速のトップにできるだけ早く入れて、軽やかに速く動けるかというところが勝負になってきます。

だからこそ、パワーの要素が大事になるわけです。

筋肥大

最後に筋肥大というのは、要するに体を大きくする、筋肉を張らせてサイズをアップするためのトレーニングです。

ただ、筋力を最大限向上させようとすると、筋肉の面積量を増やしていく必要もあるため、アスリートであれば筋肥大を主目的としたアプローチを取ることもあります。

常にボディービルディング専用のアプローチだ、という偏った考え方は違うよ、というのは理解しておいてもらいたい点ですね。

興味深い研究結果

ここで一つの研究結果をお伝えします。

6回挙げるのがギリギリの重さ(6RM)を、
① 6回×4セット行うグループ
② 3回×8セット行うグループ
③ 3回×12セット行うグループ

という三つに分けてベンチプレスという典型的な胸のトレーニング種目を行い、その結果を比較しました。

当然6回がギリギリの重さになりますから、

① 6回×4セットの群では、3・4セット目(後半の2セット)で、自力ではできなくなってからも補助がついて、その目標回数を行いました。

② 3回×8セットの群では、5セット目以降(後半の4セット)は3回が挙げられなくなり、補助がつきながら目標回数を行いました。

③ 3回×12セット群では、後半の6セットにおいて自力でできなくなってからも補助がついて目標回数を実施しました。

最後のグループ、③ 3回×12セットは、よっぽど苦しかっただろうなとちょっと同情してしまいますが…。

今回の研究結果の場合、補助つきの回数が大きく違うにも関わらず、3グループとも最大挙上量、ピークパワー(瞬間的にどれだけ最大の力が出るか)、平均パワー(物を挙上してる間のパワー値の平均)といったテスト結果の数値には変化がありませんでした。

つまり、それ以上反復できなくなるまで追い込むこと、強制的に反復を追加して行うことには効果がないという研究結果になりました。

完璧に言い切ることはまだまだできませんが、他の研究においても、その効果は非常に少ないだろうということが分かってきています。

追い込み型のデメリットは「挙上スピードの低下」

現場で選手を預かる私のような立場からすると、常に「基本的に潰れるまで頑張れ」と追い込むことのリスクはたくさんあります。

セット終盤における著しい挙上スピードの低下というのがその一つです。

スクワットをイメージして下さい。

例えば8回ギリギリできるスクワットを10回やらせようとして、「8回でやめるな。できるまでやれ。」とやるとします。

初めのうちは自分の思っているコントロールされた比較的、綺麗なスピードで行えていたものが、最後の2・3回はもう上がっているか上がっていないのか分からないぐらいの中で、プルプルと震えながらグーッと押し込んで、ゆっくりと上がってくるのは想像できると思います。

これを続けることによって筋・神経系という視点では、実際にフィールドでパフォーマンスを発揮する時のパワーに転換しづらくなる可能性が高くなります。

また、大きな筋損傷の程度を示すホルモンの上昇も見られます。要するに、ダメージが大きすぎるということです。その他、疲労の指標となる血中乳酸濃度やアンモニア濃度も急上昇でグーンと上がりますし、それらの回復の遅れもはっきりと分かります。こういったアプローチを日常的に続けていくと、オーバートレーニングをも助長するということになります。

そして、繰り返しになりますが、そこまで苦労してつけた筋力をパワーに転換するのが難しくなる可能性があります。

苦しい思いをしているけれど、あまり効果が上がらない… これは悲劇ですよね?

だからといって、無理しない程度にとりあえずさらりとやらせるだけでは、当然ですが効果は出づらいです。

それではどうしたらいいの?となる解決策として出てきたのが、VBTVelocity Based Trainingなんです。

VBTで挙上スピードをモニタリングする

特別な測定器を用いて、定期的に挙上スピード(実際にトレーニングを行うスピード)をフィードバックするというのが、一般的になってきています。
挙上スピードのフィードバックを1回ごとに行っていく、こういったトレーニングをVBTVelocity Based Trainingと呼びます。

2000年前後であれば100万円クラスのお金が掛かりましたが、今は安いものでは7~12万円ぐらいの間で、そういった機械や測定器を購入することができます。

現在最も普及しているタイプは、バーベルだとカポッと外側からはめるだけなので、すごく楽につけられます。本当にIT機器の日進月歩の進化ぶりは圧巻です…。

実際の運用法

具体的にどういう感じで行うのかというと、自分の目の前にディスプレイ(iPad やスマートフォン)があると思ってください。

基本的にはMean Velocity といって平均スピードを出していることが多いのですが、まずは60キロでやる、80キロでやるというように重量を決めてそれを入力します。

その上で、実際にスクワットを行いますが、実施する選手には「できるだけ速く最大努力で行って!」と伝えます。

【数値記載に誤りがありましたので訂正しています】8回から10回できる重さであれば、0.5〜0.75m/sが大体の平均値ですので、要するに1秒間に50〜75cmぐらいのスピードで動いているというのが、1回行うごとに表示されます。

これが0.5m/sを切る、要するに1秒間に50cm以下しか動かせないスピードまで遅くなってしまった場合にやめるといった基準を設けておくわけです(もちろん目的によって、基準とするスピードは変える必要はあります)。

こうすることによって、常に1回ごとに全力速度を出すという癖がつきますし、実際に求めているスピードが客観的に出なくなってしまった時にやめるという選択肢ができるので、ケガやオーバートレーニングのリスクを回避できるわけです。

適切な強度の負荷を安全に提供できるのが専門家

苦しいこと、痛いことをさせるのがトレーニングではありません。そして、追い込むだけなら素人でもできてしまうのがトレーニングの危険なところでもあります。

だからこそ専門家は、ギリギリ怪我のリスクがなく、長期的にトレーニングを続けさせるだけのスキルが必要になってきますし、不可欠だと思うんです。

その一環として最近は、追い込み続けるのではなく、速度を測って目標数値を下回ったらやめさせる、VBTというトレーニング方法を定期的に使いながら、選手たちとのトレーニングを進めています。

クオリティを上げよう

端的にまとめてみると、潰れるまでやるというのが今は常識的ではなくなってきているということ。

それでいながら、賢くトレーニングをするために1回の質をどんどん上げていくという仕組みづくりが大事だということですよね。

1つの方法論として、クオリティを上げる仕組みとしてVBTが重宝されています。このアプローチに関して、以下の本がとてもわかりやすかったので、興味のある方はぜひこちらで詳しく学んでみてください。

 

 

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。
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