スポーツや運動の現場に携わって17年が過ぎました。
実感することは「経験の時間的な長さが必ずしも精度や上達に直結するわけではない」という、ごく当たり前の事実。
筋がいいなぁと感じる若い世代のトレーナーや、「さすがだなぁ」と感じる同世代以上の専門家。共通しているのは、きちんと意識的に「みる」・「きく」を行っている点。
過去ブログのリライトですが、加筆して短めの記事をご紹介します。
「みる」・「きく」を深く考えてみよう
「みる」こと、「きく」こと。この2つはトレーナー業に関わる人間にとってもとても大切な技術。
日経メディカルの過去記事で「まさにそうだなぁ」と思うものをみつけたので、シェアしたいと思います。
それがコチラ→「聞く」と「聴く」は全くの別物
否定的接続詞にご用心
短い記事の中で、いきなりドキッとさせられるチェックリストがありました。それが下記のようなもの。
[box class=”yellow_box” title=”ドキッとしたセルフチェックリスト”]□会話に臨む前に「こういう流れに持っていこう」と決めておくことがある。または「相手はこんな人だろう」とか「こう反応をするに違いない」などとイメージしていることがある。
□ 相手の話を聞きながら思考していることが多い。例えば「それは間違っている」とか、「こうすればいいのに」……など。
□ 相手の話す内容が把握できたと思うと、まだ相手の言葉が終わらないうちから話し出すことがある。
□ 「でも」「しかし」「そんなこと言わずに」など、否定的接続詞をよく使う。
[/box]
…特に最後の2つは私も無意識に行っているパターン。全然対比になっていない場面で、「でも逆に…」と言い出す自分に気がつき、苦笑いすることがあるんです。
こういった否定的接続詞が口癖になっている人は、意外と多いはず。
上手にまとめてくれた方の言葉で「3Dを使わないこと」というものがあります。
3Dとは「だけど、だって、でも」だそうです。なぜ使わないようにするかはこれらの言葉のあとに続く台詞を考えるとわかりますよね。
完全に蛇足ですが、娘たちが大好きで収集しているマンガ、「ちはやふる」の中の一コマ。
太一くんが、かるた部の男子に、「これから『だけど、だって、でも』は禁止!」という場面があります。
高校生の段階でこんな指示を出し、「俺は小学校の頃から母親に禁止されている!」という太一くん、さすがです(笑)。
私も、自分自身への戒めとして、日々気をつけています。
傾聴を徹底しよう
コーチングを学んだなかで大切な技術とされているものの一つが傾聴。
とにかく相手を否定も肯定もせずに真摯に「聴く」。その姿勢が相手を安心させ、承認されているんだ、という安心感を生むもの。
相手の目をみることは基本ですが、じっと注視してしまうと、かえって相手は話しにくいもの。
ときおり、目線を落としたり、横にずらすことを心がけると、相手も気負わずに話しやすいです。
何となくではなく観察をすることが重要
今度は、「見る」と「観る」の違いについて。
選手の動きや状態を何となく目にするのではなく、集中して観察する。
この観察のスキルを持っていないトレーナーが、結構な数いることに驚くことが多いです。
目の前の同じものを見ていても、受け取る情報量が圧倒的に違う。
これって問題ですよね?
雰囲気や変化に気がつく観察力は仕事中だけではなく、自分のライフスタイルからくるものが大きい。たくさんの人と話し接している中で、最近はそんなふうに感じます。
普段から周りの人を観察する癖を
普段から「人を観察する」という意識が薄い人は、そもそも観る能力というか、感受性が低いです。
よくいうのが、
「電車に乗って座った瞬間、イヤホンを着けてスマホをいじり、隣の人や前に立っている人に一瞥もくれないトレーナーに、自分のこと、相談したいと思う?」
ということ。
極端に人懐っこいのも困ったものですが、柔和で相談しやすい雰囲気を持っておくことは、現場に携わる専門家として必要なこと。
ぜひ普段から、自分の周りの人を興味深く観察してみてください。
こなさずに選手やクライアントを観る時間を作ろう
また経験を積んできたトレーナーほど、現場での効率化を意識するあまり、「こなす」ようになりがち。
トリートメントや指示、準備などに集中して、実際にライブで動いている選手をほとんど眺める時間がない。
そんな方、多いのではないでしょうか。
確かに、ただ選手の動きをみるというのは、はたからみると「何もしていない」ように見えがち。
忙しく、キビキビと動いていたほうが見栄えはいいです。
しかし、本当に「生きた情報」や「違和感」といったものは、選手を観察していないと出てこないもの。
指導スタイルや自分の強みに依る部分もありますが、個人的には練習中や試合中は、極力選手の動きを観ることを優先する。
これをオススメします。
この「観察習慣」を1年続けた人と、業務をこなした人の1年の違いは大きいですから…
上手に「観る」ポイント
私なりの上手に観察するポイントを紹介しましょう。
ただその人や物事を凝視するのではなく、カメラのズームイン/ズームアウトのように「俯瞰と注視を繰り返すこと」です。
漠然と見るのではなく、一定量「観る」という作業を繰り返すと、以前よりも細かな部分を感じる能力が身につきます。
本来のその人の動きのイメージや持っているリズム、テンポとのズレに違和感を持つ、みたいな感覚がそれです。
動き全体をみて、「おやっ?」と引っかかった点があれば、その選手の局所的な部分にズームイン。左右の動かし方の違いや、いつものリズムとの違いを探す。
近くによリ過ぎて、かえってわからなくなったら、再度ズームアウトして全体を俯瞰してみる。
こんなことを繰り返しています。
その場にいるからこそわかる「張り詰めた空気」や「弛緩した様子」などを肌で感じる、ということを意識して観察するようにしています。
リハビリ選手やスタッフからは、「弘田はいつもボーッとしていて楽そうだな~」と思われているかもしれませんが…
まとめ
私自身は趣味の一つが「人間観察」。何気なく口癖や動き、雰囲気などをつかむのが当たり前になっています。
あまり深く考えずに、「きく」、「みる」の2つの技術をおざなりにしている人。
こんな人は、自分が考えている以上の損をしていて、実力の半分も能力を発揮できていないはずです。
コミュニケーション能力が大事、という考えに否定的な専門家はいないでしょう。
「聴く」ことと「観る」ことが苦手な専門職の人は、高確率でコミュニケーション能力は発揮できないはず。
改めてヒューマンスキルの基本ともいえる、この二つを意識していてみましょう!
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YUJI HIROTA
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