現場スキル

鼓舞する指導、分析する指導

先日、意識の高いアスリート選手から嬉しいLINEメッセージが。

弘田さん、久しぶりにガッチリお尻に効いてます!
知らないうちに、いつもやってるプログラムでも色々かばったりしてたことに気がつきました。ありがとうございます

こうやったストレートなフィードバックをくれる選手は珍しいもの。

これでまた3ヶ月ぐらいは指導者寿命が延ばせたかなぁ…とほんのりじんわりとした気持ちになりました。

そんなエピソードから派生して、今回のブログでは
「鼓舞する指導、分析する指導」というトピックで書こうと思います。

トレーニング指導を大別すると2つある

現場でのトレーニング指導。

以前もブログ記事にしたこともありますが、クライアントのタイプなども考慮しつつ、内的キューイング/外的キューイングを使い分けるなども有効。

ただもっともっとシンプルな話として指導を大別すると2つに分かれる。そんなことに気が付きました。

1つが「鼓舞する指導」。もう1つが「分析する指導」です。

1.鼓舞する指導

シンプルに「実施しているクライアント/選手を応援する指導」です。

個人でやっているときには、どうしてもいい加減になったり妥協してしまう部分があります。

このタイプの指導でのメリットは「1人では追い込めない部分までプッシュしてあげられる」ことでしょう。

例えば、

・実施テンポ(3秒で降ろして、1秒止めて、1秒で上げるなど)
・最大可動域(動かせる範囲でめいっぱい動かす)

などは典型的ですよね。

リズム良く大きな声で実施回数を、
「1!ゆっくり~、2!!しっかり降ろしきろう、3!!」
みたいにカウントしながらチェックするのも、どちらかというと鼓舞するための指導になります。

意欲にばらつきがある集団指導では有効

集団に対するトレーニング指導の際に、鼓舞する指導の割合はより高まります。

やはり個体数が増えると、トレーニングに対する意欲にはばらつきが出るためです。

トレーニングに対して重要である5原則の1つに、「意欲性の原則」がありますよね?
どれだけ目的意識を持って、意欲を持って1回1回のセッションに取り組めるか。

ここを積み重ねていくことで、初めてストレングス&コンディショニング部門における成果が出るわけですから、本当に重要です。

追い込むことが指導のメインだと考えるな

監督やコーチ、チーム運営サイドの関係者は、こういった指導を非常に好みます。
彼ら、彼女らが期待する「鍛えている!!こいつらは追い込まれている!!」という映像に合致するからでしょう。

だからこそ、こういった指導法がトレーニング指導のメインである、と考えるのはやめましょう。
トレーニング専門家として、あなたの方向性を誤らせてしまう可能性が大きいです。

選手に変に気遣って100%の努力をさせない専門家は、現場失格です。だからプッシュさせるアプローチは大事なんです。
しかし、このアプローチは極端な話、専門家でなくてもできます。

「もう1回行こう!」、「妥協するな!あと10秒!!」

常にこれ一辺倒で「選手が常に追い込まれている状態」に満足しているようでは、トレーニング専門家とはいえません。

自分のレベルを下げないためにも、バランス良く鼓舞する指導を運用してほしいですね。

2.分析する指導

実施者の動きを俯瞰した眼で分析し、正しいフィードバックを伝える。
これが「分析する指導」です。

今回LINEにてメッセージをくれた選手に対しての指導も、このタイプのもの。

クライアントや選手が無意識に行っている代償動作や、心理的ハードルに目を向ける意識で行います。

私は現場畑のキャリアを積んできましたから、このアプローチを感覚的に習得してきました。一つ一つの動きに指示を出したり、回数を数えたりといったことは一切しません。

分析するアプローチを言語化すると

分析するアプローチ手順

少し俯瞰して相手の動きを「眺めて」、実施者の「中に入っていく」意識で、感じ取る。

出てきた違和感や気づきを「後づけ」で理屈づけする。

その選手のタイプや感じ方を考えて、どう伝えるかを考える。

言語で伝えることは非常に少なく、触ってみたり立ち位置で相手に気づかせたい、というアプローチが大半です。

意識が高く「内観力」のある選手であれば、私が伝えたい気づきにこの時点で気がつきます。そして、自分の知識の中での最適解を出そうと自主的に動きます。

その方向性が頷けるものであれば、そのまま何も伝えません。

もう少し具体的な手段があるのではないか、手段が必要だと感じたら、初めて
「〇〇がこう動くのが気になる。あなたが動かそうと思っている感覚とはずれているから。原因は△△寄りだと思ってる」
と伝えます。

リハビリからチーム復帰直前の時期の選手や、古傷を持っている選手などへの個別指導としては非常に有効なんですよね。

指導はこれだ!と変なプライドを持つな

こういった指導って、知識も経験もセンスもある程度必要。
はまってくれて選手に変化が出たり、とても喜んでくれると嬉しいし自信につながるもの。

でも。

「トレーニング指導は、こういったアートの部分こそ大事だ。ただ大声で煽る指導なんて邪道!」
みたいな考え方をもっていたら、それもその専門家のレベルを停滞させます。

常に透き通るように、選手一人一人の動きや感覚がわかるわけはありません。
そして、トレーニングの本質は単調で苦しい作業をどれだけ精度高く実施してもらえるかです。

変なプライドを抱えずに、あっさりと放り出す。
必要なときに「鼓舞する指導」と「分析する指導」をバランス良く切り替えながら、絶妙な比率で行ったりきたりできるか。

こここそが、現場指導の妙なのだと感じています。

まとめ

文章にしてまとめてみたら、シンプルすぎて笑っちゃうのですが、きちんと言語化できたのは大きかったです。

現在活動のメインとなっているラグビーの指導では「鼓舞する」スタイルがより必要とされています。

それに対して、月数回指導させていただいている社会人野球の現場では、完全に「分析する指導」一本で関わっています。

前者ではシンプルに体力が必要。後者は集中力がいります。プロテインを補給したくなるのが前者で、甘いものが食べたくなるのが後者って感じです笑。

得意なアプローチはそれぞれの指導者であると思いますが、「全身性の法則」と同じで極端な偏りがないことが一番大事でしょう。

ときおり棚卸しをしながら、もっともっと精度を上げていきたいと思います。

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。
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