2017年10月14日土曜日朝。本日、NHKのおはよう日本をつけていたところ、「けさクロ」として特集されていたのが以下のようなもの。

『甲子園を目指す野球少年の最新事情。充実したコーチ陣に最先端の動作解析。野球少年の「お受験化」の実態は?』

…びっくりしました。というかショックでした。今回はそんなお話です。

6歳の男の子に対する動作解析&指導

野球における小学生からの英才教育についてもの。最初に出てきたのは標準的な120㎝弱の小学1年生の男の子。

投球する様子を横から動画に収めての動作解析。専門のコーチが男の子とディスカッション。

「前足がどうなっているのが良くないと思う?」、「…そうだね、外に開くのが良くないよね。上半身の力だけで投げちゃうから」。

わかりやすい言葉できちんとコミュニケーションをとっていましたが、私がみるとそもそもその子はまだ対角線上の動きが体に備わっているようには見えませんでした。

文章で書くのは難しいですけれど、右足に体重を載せて左側に体重移動して左足で着地。右腕を振って投げる、という段階でないという印象でした。

何にも教えないで「ビュッて投げてごらん!」って教えたら、右足を出してほぼ体を正面にしたまま腕を振るはずなんです。

成長段階としてまだ捻る動きが習得できていない子に対して、我々大人が「合理的な投げ方」としてインプットしているバイオメカニクスで指導しても、効果は期待できません。

 

 

外注ではなくてもできる「運動体験」

この時期の子供たちがすべきことは「夢中になって遊びの中でいろいろな動きを勝手に身につける」こと。

親御さんに「投げる能力が伸びてほしいなぁ」という密やかな野望があること自体は悪いことではないです。でもそれであれば…

・大きさの違うボールをいくつも用意して右でも左でも投げる「ぶつけっこ」に付き合ってあげる。

・古くなった新聞紙を丸めて10球作って、下から投げてごみ箱の中に何球入るかゲームにしちゃう。

・川に行ったら薄くて広い石を3分以内に競争で探してくる。手持ちの石を使って川で水切りが何回できるか競う。

・フーっとちょうどいい勢いで紙風船を完成させて、紙風船がつぶれない程度の力で何回ラリーができるか数えてあげる。

・フリスビーを使ってテニスでいうフォアハンド、バックハンドどちらからでも投げられるようにキャッチボールを教える。

こんな風に自然に「運動学習」をさせた方がよっぽど後に生きてくるはずです。何しろ楽しいじゃないですか。子供からしたら遊んでいるだけなんです。これこそが重要なこと!

 

犠牲になるのは結局子ども

ちなみにNHKで紹介されていた小1の子が受けていた動作指導。1回50分、1万5千円だそうです。

親御さんは子供がかわいくて、何とか上手になってほしいからこそ選んでいるはず。それでも専門家である私からすれば、誤った「スポーツ科学らしいビジネス商法」に乗っかってしまった印象。

とても残念です。

今回の6歳の男の子、真面目に一生懸命言われた通りの投げ方を覚えれば覚えるほど、「送球」はできない子供になっていく可能性が高いです。

偏った運動体験を意図的に行う一方、この時期に自然に得たい動きの体験が少ないこと。いろいろな体勢や慣性が働く状況で「できるだけ早くボールを放したい」送球を覚えるには難しい環境ですから…。

週に1回通っていると紹介されていましたが、時間とお金という投資の仕方が違うんじゃないか、と思ってしまうんです。

月6万円使って200分をその施設で見守る。それよりもバトミントンでも季節外れの羽根つきでも、風船バレーボールでもいいから汗だくで遊んであげること。

こっちの方が子供は嬉しくて楽しいし、多くの運動体験を自然に得られるのは100%間違いないです。

子供の教育に力を入れることはどの家庭でもできることではありませんし、素晴らしいことだと思います。

ただしそのベクトルをしっかりと考えて、親自身もどんなことをしてあげればいいのか「自分の頭で考える」ことが真に必要なこと。

万が一間違っていたり偏っている方向に導いてしまったとして、その犠牲になるのは他でもない我が子です。

 

<合わせてこちらもご覧ください>
スポーツを頑張る我が子を応援する親御さんに気づいてほしいこと
子供の運動指導に大切なこと。結局重要なのは親の意識を変えること

ビジネスをする側のWHYがないのもNG

私もチームだけでなく個人への運動指導を行います。これを生業としているわけでお金をいただくビジネスなわけです。

有限であるお金と時間を投資してもらって任せられている。その本質的な意味をきちんと考えていれば、今回取り上げたようなサービスを小学1年生に行うことはないはず。

ここ5年ほどの最新の見地を吸収していけば、平均的な6歳の子にこういったアプローチをすることのメリットよりもデメリットが大きいのは明確ですから。

根は深いですが、そのことに気がつきつつも「おいしいスポーツビジネス」として老若男女問わずにこのサービスを優先的に売っているならば、まだわかります。

でも大抵のこういった施設に関わる人たちは基本真面目で情熱的な方が多いです。もし「このサービスは皆に役立つものだ!」と信じて提供しているとすると、問題はもっと深刻。

教育に関わるビジネスを行う人間として、「なぜスポーツ選手に対してこういったサービスを提供しているのか」というWHYをきちんと考えること。

そこが明確になれば、自分や自社の価値観という線が一本引かれるでしょう。ぶれることがなくなるはずなんですよね。

漠然としつつも初めは「こんな選手たちの助けになりたい!」というWHYから始めた事業。

目の前の顧客確保や収益をあげることに必死になると「どうすればこういったニーズにこたえられるか」、「何をすれば自分たちのサービスを受けてくれるか」というHOWやWHAT思考に終始してしまうのでしょう。

基本フリーランススタイルで働いている私自身、戒めとしてこういった思考に陥らないよう常に自分に問いかけていかないといけません。

 

まとめ

土曜日の朝から衝撃を受けた、運動指導の様子について考えを述べてみました。

親バカ万歳ですし、ときどき「バカ親」になる私、より良い環境を作り子供の教育をサポートしたい!という親の気持ちは痛いほどわかります。

それでも、親自身のリテラシーを高めて「なぜ子供たちのためになりたくて、何をどうするのがより良い選択なのか」を考えてもらいたいんです。

結局しわ寄せをくらうのは子供たちなわけですから…。

そしてスポーツに関わるものとして、サービスを提供する側の在り方もこれから先の日本では本当に大切。

自戒を込めて偉そうな内容を書いてみました。今回紹介されていた施設の詳しい情報がなかったので、知っている方がここに関わっていないことを祈るばかりなのですが…

 

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。









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2 件のコメント

    • コメントありがとうございます。指導者育成と保護者のリテラシーを高めること。特に少子化がますます加速している今、重要ですよね。

      スポーツビジネスが悪いことではないのですが、教育という側面を備えながらでないと、社会貢献という観点からビジネスが成り立たない。そういった意識が当たり前になっていってほしいです。

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