自営業として仕事を行っているものとして、ITは避けて通れない世の中になりました。
初めてパソコンを購入し自分専用のアカウントをAOLで獲得したのは20年前のこと。電話回線を介して「…ピーッ!!ピゴーッ!!…You’ve got a mail!」と繋がったときにはえらく感動したものです。
回線がADSLになり無線になり、スマホやタブレットも開発され、20年前の自分では想像もつかなかったようなインターネットの世界が創造されました。
このスピードに乗り遅れることなく、流されることなく、使われることなく。
上手に距離を置きつつ、ITを使う側に回るという意識がとても大切なのではないか、と思っています。
(ブログやサイトデビューしたいけど不安ばかり…そんなトレーナー業が一歩踏み出すには?参照)
SNSには劇薬の要素あり
特にソーシャルネットワーキング・サービスことSNSの世界は、プライベートでもビジネスでも大きな変化を世の中に与えていますよね。
今までは限られた人物しかできなかった情報発信や主張を手軽に世界中の人に発信できる。すごいことです。
だからこそ、SNSでの炎上やトラブルも後を絶たなくなってきています。
面と向かっての会話と違い、その人の表情や雰囲気、その言葉の前後にある背景などが見えない分、誤解されることも多いですから、自然と緊張感も高まりますよね…
SNSという劇薬を上手に使いこなす達人として
弘田が非常に感銘を受けているトレーニング業界の先人のお二人がいます。それが、小俣よしのぶさんと遠藤一佳さんです。
東独の育成システムを研究されたジュニアユースのトレーニングにおける第一人者、そしてフィットネスビジネスのマネジメントのスペシャリスト。
お二人の専門性は違うものの、取り扱いの難しいSNSを上手にコントロールされているなぁというのがその理由。
SNS上でのお二人の言動ななかなか過激です。絶妙な毒っぷりをエッセンスとして加えることで、強い印象を残せるメリットがあるのは間違いありません。
その一方で捉え方によっては「ディスる」(笑)ような表現で自分の考えを発信するのって、ものすごいリスキーなことでもあるはず。
お二人とも数回お会いする機会に恵まれましたが、実際にお会いしたら二人とも驚くほど穏やかな紳士。
傾聴して下さる様子や全体を俯瞰しているような場の空気を感じる雰囲気を目の当たりにして、
「ああ、意識的にSNS上でのキャラクターを創っている部分も大いにあるのだろうな」
と勝手に納得してしまいました。
本質的なことを少しでも多くの方に届ける、という目的を持ってSNSを用いるのであれば戦術は相当数あります。
このお二人の場合は、上手く実像とのギャップを保ちつつインパクトのある方法で情報発信をされているのでしょう。
文章の一つ一つを読むと特定の人物を攻撃しているような表現はなく、最大限気を遣いながら毒を吐いている様子が感じられると思います。
どちらも「ジュニアスポーツを中心としたスポーツ界を変革する」、「フィットネスビジネスにメスを入る」という目的に対する手段として、覚悟を持って取り組んでいるのが伝わってきます。
小俣よしのぶさんとお会いした際の印象
2017年7月末日。そんな「SNSの使い手」である小俣よしのぶさんに急きょ大阪でお会いすることができました。
東独やキューバなど社会主義国におけるスポーツトレーニングシステムを研究しており、ジュニアユースからトップ選手までの適正選抜システムなどを専門とされている人物。
今自分が最も興味を持っているジュニアスポーツのシステム化や育成についての深い見地をお持ちで、学ばせていただいている大先輩です。受講させていただいたセミナーは6回を数え、オンラインセミナーも受講させていただいています。
質問攻めさせてもらおう!と意気込んで質問をたくさん用意していきました。
しかしPRIってどうなんですか?フランボッシュのドリルってどんな風に考えて取り入れていますか?など逆に質問をしていただく時間も多くありました。
ジュニアスポーツに関することもそうですが、小俣さんには前々から深く伺いたかった働き方やセルフブランディング、ちょっとした哲学などを語っていただけて本当に充実した時間を過ごすことができました。
「マイネル博士の「スポーツ運動学」は小俣さんとまだお会いする前に、小俣さんが強烈なメッセージでご紹介していた際購入したものの、あまりにも難解な日本語に正直積読になっているんです…」
正直にカミングアウトすると笑いながら、「確かに表現は難しいですからね~。訳の問題なのかもしれませんが。」と言ってくださりました。
その後、有料サイト「ジュニアユースアスリート育成」の中で、「スポーツ運動学」が難しく感じる人に向けての入門編としてということで「教師のための運動学」を紹介して下さっていました。
もちろん嬉しくなってすぐにamazonで購入しました。
深堀りできる人はコミュニケーション能力が長けている
つい今持っている知識の深さだけに着目しがちですが、このとき小俣さんは大阪で予定していた仕事が急きょなくなった状況での来阪。
本来の予定がなくなっても「よし、せっかくだから大阪に行くか!」と決めて「誰か会いませんか~?」と行動を起こせるフットワーク。
自分が興味を持っていること、疑問なことを「この人のフィルターを通すとどんな風に考えているのかな」と素直に質問できる好奇心と吸収力。
相手が漏らした問題点や課題などを覚えていて、
「この人がそうならば他にもこういったことで悩んでいる人がいるに違いない。よし、このことをシェアしてあげたら喜ぶ人がいるな」
とその時点で思いつき、すぐに行動に移せる気遣い。
ああ、こういったことを日々積み重ねているから、楽しみながら深く物事を学んでいくことができて、他者が「この人の見地を学びたい!」というレベルまでいけるんだな、と改めて納得したんです。
小俣さん指導の石原塾への体験参加で感じたこと
その出会いからさかのぼること半年とちょっとの2016年3月。19時から埼玉県川口のフットサルコーチにて行われている、石原塾内のサッカーフィジカル2コース。
当時小学5年生の次女を連れて、この50分のセッションに体験参加してきました。
目的は私自身が小俣よしのぶさんの指導法や実際の現場での立居振る舞いを感じたかったから。
小俣さんの担当クラスの中でも最も厳しいとおっしゃっていたセッション。これを自分の娘がどういった気持ちで参加し、どんな感想を持つのかを聞きたかったからです。
ゴールデンエイジスクールって名付けちゃったけれど
2010年、千葉県習志野市に「タチリュウコンディショニングジム」をオープンした際、私がまずやりたかったのが子供を対象とした運動プログラムでした。
当時4~6歳だった自分の娘たちを見つつ、同い年の子供たちの様子を見た際に、自分が子供だった頃自然と得ていた運動学習の機会が極端に少ないことに驚いたことがその理由のひとつ。
そしてこの段階では身につけておかなくてはならないであろう最低限の姿勢保持や反射、といった機能でもすでに大きく個人差があったことに少なからず危機感を持ったからでした。
同世代の子供を持つ親であれば、こういった状況には気づいるはず。危機感を持っているため必ずニーズはあるであろうと考えたんですよね。
体系立てたプログラムを作るのは正直無理があるなぁと考えていましたが、その時自分が持っていた知識を駆使し、「子供が夢中になって楽しみながら挑戦する」プログラムを考えたものでした。
キャッチーなネーミングだったこともあり、思い切り「ゴールデンエイジスクール」と名付けてしまい、2017年現在学んでいるジュニアユース育成の概念を考えるとちょっと恥ずかしいのですが…。
ちょっと極端な語り口で現在のゴールデンエイジ理論の拡大解釈に警鐘を鳴らす小俣さんの基本的な考えを学んだうえで、実際の現場で小俣さんが何を見て感じて、どう子供たちに接しているのか。
それを知りたくて今回の体験参加となったんです。
私語を交わす暇さえない50分間
セッションの中身はざっくりいうと「HIIT(High Intensity Interval Training」に近いものでした。
とにかく走る!間で体幹を使った手押し車やプッシュアップ、パートナーを抱えてのランなどを競争させながら織り込んで、心拍数のコントロールは最小限しつつも3回の給水タイムもそれぞれわずか20秒程度。
12名ほどいた子供たちは、横の仲間たちと声を交わす暇も全くなし。上は中学1年生、そして下は何と小学1年生!
加速走やN字・M字の切り返しランなど減速と方向転換を含んだアジリティランがふんだんに行われていました。
見学していた感覚で言うと実質45分で3㎞前後の総走行距離、1㎞以上のトップスピード(5m/秒)ぐらいを当時小5の娘は実施。
市内陸上ではダントツ1位を取り、小学校のシャトルランテストでも普通に3桁はこなしてくる次女。この部分のCompetency(能力)は相当高いなぁ…と客観的に判断している子なのですが「最初の20分で正直外れようかと思った…」と超ハードなセッションに感想を漏らしていました。
本当にきついクラスなので、自分で考えてついていけない、どこか痛いとなったら自分で判断して外れなさい。
クラス参加前に小俣さんが娘に伝えていた言葉です。
これはクラスの子にいつも言っていることだそう。自分で考える。そのうえで「続ける」と判断したのであれば目いっぱいの力で行う。
すごくシンプルですがこれを徹底していることに感銘を受けました。
短く厳しく最大限の気遣いで
小俣さんのセッション中の説明は短いんです。繰り返さないので、半数の子供は「?」となっていて小俣さんご自身もそのことに気づいていますが、敢えて繰り返さない。
「前見てついていけ!」といった姿勢です。
実施中のキューイングも非常に短い。必要な子供には戻ってきた間に的確に指導。その結果、もうちょっと変化を出したい、意識させたいと思ってもあまり指導しすぎないようにされている、と感じました。
集中力を欠いたり諦めかけている子供にも厳しく声掛けをしますが、乱暴な言葉遣いは一切なし。
目線を合わせて「どうした?やれるのか?やるならしっかりやろう!よし、いけ!!」…こんな感じでした。
そのセッションでやるべきことのアウトラインは決めつつ、子供たちの様子を見ながら微調整しているようで、無駄なく漏れなく指導している様子はコンディショニングコーチとしてとても勉強になりました。
充実感と経験したことのない筋肉痛を味わった次女
50分のセッションを終えて次女の感想は「超きつかったけど抜けたら悔しいから頑張った。終わってからの充実感は半端ない!(←原文ママ)」とのこと。
替えのTシャツは持参していたものの、靴下や下着までぐっしょり。急きょ弘田が用意していたベンチコートにくるまりながら帰宅の途につきましたが、帰りの車中では爆睡。
セッション参加の2日後、今までに経験したことのない筋肉痛に苦しみながらサッカーの練習に向かっていきました(笑)。
小俣さん曰く「大人に同じ強度をやらせたら壊れるか、途中でやめちゃう。子供の可能性はすごいですよ。」とのこと。
さまざまな感覚入力、スポーツを通してのつらさへの耐性や自己承認体験や適応力。「~理論」ではなく環境因子を整えて愛情を持って厳しく。
当たり前かもしれませんが、そんなことを感じられた見学となりました。
まとめ
・一流の専門性を携えたうえで「伝道師」としての発信力を発揮しているのが小俣さんや遠藤さん
・敵を作ることを恐れず本質を伝えるから「ファン」を獲得できているのでは
・知識だけに偏らず、実践的な指導力を持っているから小俣さんは「生きた方法論」を提供できる
・この人から吸収したいと思える人が多くいるのは幸せなこと
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YUJI HIROTA
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