下肢強化として効果抜群のデッドリフト。自分がトレーニングを始めた20年以上前から、効果が高いエクササイズであることは理解していたつもり。

それでも年齢を重ねれば重ねるほど、その奥深さや味わいといったものを感じるようになり、重宝するようになったエクササイズです。

上手い例えかわからないけれど、出汁の効いたみそ汁や旬の焼き魚のように「何でもっと味わってこなかったんだろう?」って思う種目なんですよね。

デッドリフトに関して2018年現在、私が思っていることをつらつらと書いていこうと思います。

 

競技特性上気をつけたい点

高重量で起きやすい「肩甲骨下制」への配慮

まずは競技特性上、必要となる注意点に関して。

当たり前ですが、両手に高重量のウエイトを持つことにになるデッドリフト。ビッグ3と言われ、優れたエクササイズなのは間違いないです。

それでも野球の投手に多く見られるように、肩甲骨の下制と下方回旋が過剰に起きているアスリートに対しては下半身強化が目的であったとしても、高重量のウエイトを手に持たせない方がいいですよね。

上半身のエクササイズ選択や肢位には非常に気を遣っているにも関わらず、下半身に関してはスクワットやデッドリフトを「ごくベーシックなエクササイズ」として無造作に設定しがち。

下半身のエクササイズへの配慮を見ると、よく関わる専門種目の傾向が分かったりします。名の通ったS&Cコーチの方であっても、野球やバレーボール、水泳などオーバーヘッド系種目をあまり担当したことのない方の作るプログラムでは、こういった要素をあまり考慮していません。

すべてのエクササイズにおいて、両手にかかる重量を気にしすぎる必要はないですが、高重量を扱うデッドリフトは上半身のアライメントに与える影響も大きくなります。

野球の投手は特に通常時も肩甲骨をやや高い位置に保持できるようにさせ、腕が頭上に上がる必要のある時、機能的にあげられるようにしておくのが理想。

今の時期のように春季キャンプに入ったタイミングで、チームのストレングスメニューで投手にがっちりとデッドリフトをさせるプロ野球チームは皆無のはず。

高量・中重量のバックスクワットや上前腸骨稜のラインにバーを置いたヒップスラスト、ケトルベルを用いたゴブレットスクワットなどで代用しつつ、デッドリフトに求めるような強化を進めていくのが得策です。

 

握力への配慮も必要

デッドリフトを考えたとき、さらに気を付けておきたいのが「グリップワーク」問題。投手への背中メニューとして重宝しているダンベルでのワンハンドローはもちろん極端な話、バックスクワットにしてもたくさんの握る動作が含まれます。

肘に慢性的な障害を持っている選手では、グリップワークが多すぎると、ジム内のエクササイズによって問題を引き起こしてしまう可能性があります。

手術後、投球プログラムの漸進に加えてストレングスエクササイズとリハビリを行っている投手などの場合は、下半身エクササイズであっても握ることによるストレスが蓄積しやすい状態。

私が現在メインのスポーツとしているラグビーであっても、スクラムハーフなどボールを捌く機会が多いポジションではチーム練習前のジムでのトレーニングにてあまりにも多くのグリップワークがあった場合、前腕部の不自然な張りにつながりパフォーマンスにも影響が出る可能性があるんですよね。

「今日は下半身寄りのメニューだから大丈夫だ!」

安直にトレーニング効果や効率だけを考えるのではなく、細かな配慮を持ってプログラム選択していく必要があるはず。野球関係のストレングス&コンディショニングを多く担当している方にとっては、当たり前の配慮。しかし関わるスポーツ特性によっては文化が違うところがあるから要注意ですよね。

 

スクワットとデッドリフトの順序

実は、2014年まで何の疑いもなくずっとデッドリフト→スクワット、という順番で行ってきました。重量そのものはバックスクワットの場合は特に、デッドリフトの方が軽くなります。

しかし正しいフォームで行うのがより難しいのがデッドリフトであり、脊柱へのストレスが高く張りを感じるのもデッドリフトの方が強い、というのがその順序の理由でした。

例外はルーマニアンデッドリフト(RDL)。フルレンジで行わず、メインに効かせたいのはハムストリングスなどの後面への補助エクササイズとして採用することが多いため、その際はスクワット→RDLという順番でした。

全身運動でありつつも下半身寄りのメニューに組み込むことが多いであろうデッドリフト。留学時代のインターンシップのころから、このデッドリフトからスクワットという順序で教わることが多く、「パターン」として私の中で確立されてしまっていたのでしょう。

まず前提として、現在は自分がストレングスプログラムを処方する際には、デッドリフトとスクワットを出来るだけ同じセッションでは行いません。担当しているラグビーではどちらも総量が多くなるし総重量も重くなりがちなので、負荷が高すぎるためです。

しかしオフシーズンではセット数の総量コントロールはしますが、この二つを同じセッションに並べることも出てきます。

2014年渡米した際に、パワーリフティングを行う専門家の方に「理論的に様々な原因は考えられるけれど、スクワットは絶対にデッドリフトより先に行うべき」ということをきっぱりと言われました。

一流のパワーリフティングの選手は例外なくスクワット→デッドリフトの順で行っていることを聞いてびっくりしたものです(…お恥ずかしい話ですが)。

確かに自分の経験上、デッドリフトで脊柱起立筋から臀部に強い張りを感じた後にバックスクワットを行うと、その後の種目の中で腰の「抜けそうな怖い感じ」が出たり、翌日に筋肉痛とは違う腰痛様症状が出ることがありました。

そこで2014年、新たにラグビーチームを担当することになったタイミングで自分のエクササイズをスクワット→デッドリフトに変更したのです。

そこから続けること半年。脊柱に対する予防という観点からも、感覚的な手応えからもこの順番が間違いなくベターであることがわかったんです(…お恥ずかしい話ですが)。

2015年のエリック・クレーシーのブログ記事にも彼のお気に入りのトレーニングの順番が紹介されていました。

a. 重いスクワット、反復回数のためのデッドリフト
b. 重いスクワット、スピードのためのデッドリフト
c. スピードのためのスクワット、重いデッドリフト
d. スピードのためのスクワット、反復回数のためのデッドリフト

…なるほどなぁ、という感じですよね?

RDLの例のように、シングルレッグルーマニアンデッドリフト(SLRDL)をヒンジ動作を協調するためのアクティベーション目的で組み込むのであれば、スクワットの前でもいいでしょう。しかし「強化」といいう観点からは、スクワットからデッドリフト、というのは間違いない気がします。

 

恥を忍んで過去の過ちを教訓にして

以前から当たり前のようにこの順番でやっていたS&Cコーチの方からは、「何だよ、そんな初歩的なこともつい最近までわかってなかったのか~。だから日本のストレングス&コンディショニングの専門家を名乗る奴は…(以下省略でご勘弁ください)」といった感想を持つ方もいらっしゃると思います。

ただ意外とこういうことってありますよね。自分の中で疑いなくパターン化してしまう、というタイプの過ちです。

脳も楽をさせずに、常に「なぜなんだろう、どうしたらより良くなるんだろう」を考えて現場に立たないといけませんね。自戒を込める意味でも恥を忍んで、私の犯したミスを紹介しました。

 

まとめ

・オーバーヘッドスポーツでは高重量のデッドリフトによる肩甲骨下制や握力からの影響を配慮する必要あり

・強化を考えるなら迷わず、スクワット→デッドリフトの順序で

・フレームワークは効果的だがワンパターンとなり思考停止は危険。体も脳も楽をさせない!

 

 

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。









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