突然「ウォームアップみてよ」…トレーナーがこだわるべき列と人数




スポーツ現場に赴いたトレーナー業なら一度は受けた経験がある無茶ぶり。それが「せっかく来たんだから、ついでにウォームアップみてよ!」問題です。これ、あるあるですよね。

治療家ベースの人やアスレティックトレーナーにとっては実はちょっと畑違いのウォームアップ。…何の準備もなしにアドリブでできると思ってるの?と思ってしまいますよね。

しかし指導者やコーチはそんなこと知ったことではありません…我々の専門分野の違いも理解していただけてないことがほとんどですしね。

自分が見学に伺ったり、関係値のある方から呼ばれて伺った場合。基本的には私は丁重にお断りしています。私にとってはウォームアップ指導は専門分野ですし、「ついでに」やるものではありませんから。
(過去ブログ記事「悪気のないにご用心」に私のポリシーを書いています)

ただ近しい間柄の友人や知人に頼まれたり、ウォームアップを一度指導することで「お、この人にアップだけでも任せたら上手くなるかも!」と感じていただき仕事につながるケースには、「それじゃあやらせてもらいますね」と本気モードに入ることもあります。

今回は以前書いた記事を手直し。私のウォームアップに対するこだわりの一つを掘り下げてみます。

 

状況に応じたウォームアップの人数と列について

細かすぎると思われるかも知れませんが、私がこだわっていることが「人数と列」。ウォーミングアップの際、一列どれくらいの人数にしチーム全体をどれくらいの列までにしたらいいか。

珍しくQ&A式にしてみましたので、トレーナーをされている方は自分なりに考えてから、私の考えに目を通してみてください。

前提条件としては、30人以上50人以下ぐらいの球技スポーツをイメージしてみましょう。それではスタート!

 

質問

Q1.与えられたアップ時間が短い場合且つ動的ストレッチを含む時は?またその注意点は?

Q2.アップ時間は8~12分程度。そのまま技術練習や集中力の必要なメニューに移行する際は?またその注意点は?

Q3.アップ時間は12~20分。試合期などではなく、SAQのようなスピード系要素を混ぜたものを実施する際は?またその注意点は?

 

自分なりの咀嚼をしたうえで、妥当な「自分解」を出してみてください。その後、私が普段考えている思考回路と具体的なイメージを読んでみていただければと思います。

 

 

 

 

どんなイメージになったでしょうか?私なりのANSWERをご覧ください。

 

Q1.与えられたアップ時間が短い場合且つ動的ストレッチを含む時は?またその注意点は?

A1.利用できる場所を目いっぱい使い、最大人数で実施。

→最小の時間で最大限動作を増やしたい。また動的ストレッチ要素も入れるため、動作間の休息時間もほぼ必要ないため。注意すべき点は、全員同時に行うため、一つ一つの動作の精度が低くなりやすいこと。技術コーチやスタッフをサイドなどに均等に配置し、「見られている感」を演出する必要あり。

声の大きさはゆっくり、MAXで。構成する動作はK・I・S・Sの 原則に則って(出来るだけ単純にわかりやすいもの)。全体の動作や疲労度、動きは俯瞰した感覚しか掴めないため、雰囲気として感じる程度で。

 

Q2.アップ時間は8~12分程度。そのまま技術練習や集中力の必要なメニューに移行する際は?またその注意点は?

A2.最大8列までで構成。人数は最大8名(6名までが好ましい)。1回のセッション毎に2動作、列毎のスタート間隔は5秒程度。1ターンを1分以内に終わらせるイメージ。

アップ終盤にかけテンポアップをさせ、自然にサイキングアップが為される状態を狙う。ある程度全員の動きに目を配れる人数の為、コーンの真ん中で2動作目を指示。この2つの組み合わせは基本面は合わせる(前向きヒップサークル→バットキック、ラテラルシャフル→カリオカ、など)。

声のトーンはスタート前に大きく、やや速めのスピードで説明。動作中のキューイングに関しては、全体に対して行い、2単語組み合わせまで(「腕を縦に!」、「前傾意識!」など)。

一人ひとりの細かな動作エラーは難しいが、最大公約数的な情報は取れる。疲労度、モチベーションを把握する事。特に前日や前の試合などで、受傷や痛み、強い張りを訴えていた選手の動きを中心に。

Q3.アップ時間は12~20分。試合期などではなく、SAQのようなスピード系要素を混ぜたものを実施する際は?またその注意点は?

A3. 基本列は考慮せず、最大人数は6名まで(4名がベスト)。時間に余裕があり、スピードトレーニング要素が入っているため、特に後半は、アップ間での休息時間を15~30秒程度取れるように構成。

アップ間の休息にムーブメントドリル(マウンテンクライマーや、長座位でのアームスイングなど)を入れて、心拍数の低下は防ぎつつ適切な休息時間を保つ。

→低強度のドリルは最小限もしくはスキップし、 中強度~高強度のドリルをメインに置く。1回のアップ毎のテーマを明確にし、同テーマが連続(翌日などでなくても) しないようにする。例えば『直線動作に関する加速/原則』、『横方向でのアジリティ要素』など。

当然このレベルのアップに関しては、年間計画の中に落とし込み、年、月、週でどのくらいの頻度を行いながらプログレッションしていくのかを最初に作りこんでおく。

一列当たり、この人数なら個別にキューイングを与えられる。各列のキーパーソンを中心に動作分析を意識。一つ一つの動作の精度と強度が求められる。声は中程度、トーンはやや高め。全体の精度や意識が低い時には、一度止めて注意。その際は大きく、ゆっくり、低いトーンで。

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…どんな感想を持たれたでしょうか。想像していたよりもおおざっぱだったでしょうか。それとも細かいところまで考えてるなぁ…と思いましたか。

私はStrength & conditiioningの専門家として、特にフィールドでの動きを重視しています。その一手段としてウォーミングアップは一年通してコンスタントに選手をリード、指導出来る貴重な時間として本当に大切。この部分の日々の積み重ねが、大きな差になってチームに反映しますから。

だからウォームアップの指導に対して、強い思い入れがあるんですね。

一度自分で仕切ってみると実感するのが、ウォームアップのリードの難しさ。こればっかりはやった人にしかわからない難易度とテクニックです。その分、上手く選手をのせて技術練習へ移行させられたときの喜びはひとしお。

「とりあえず体を温めさせて、ケガの少なく状態で送り出せばいいや…誰もこの内容の詳細なんてわからないし…」

自分の不安感やデモの自信のなさを、上記のような感情でごまかすのは簡単なこと。この「悪魔のささやき」に妥協するトレーナーが8割以上。私の今までの経験でそんな印象を持っています。

だからこそ不安に押しつぶされずに、自分の頭で考え抜く。濃い内容でリズムのいい「プロフェッショナルなウォームアップ」を演出できる専門家が増えてほしいです。

私自身、公式戦やジム同様、こんな目的意識を常に自分に言い聞かせつつ、毎回高い緊張感を持って、ドキドキしながら、グランドに立っています。「本質は細部に宿る」。頑張りましょう!

 

 まとめ

・状況に応じてウォームアップの列と人数、構成や精度、声のトーンなどは違う

・ストレングストレーニングの落とし込みと同様、長期スパンからの逆算で落とし込みを行う

・プロらしいウォームアップを演出するのは難しいけれど、ここもこだわりたいポイント

 

 

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。









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