*この記事は2016年5月に旧サイトで掲載したものを加筆・編集したものです。

サーキットメニューでは、必ず入るといっても過言ではないプッシュアップ。腕立て伏せをやれ!と中学校時代に言われていたころから、今までの人生で何万回ぐらいの数を行ってきたのか、気が遠くなります。

2015年4月のStrength&Conditioning Journalに特集記事で組まれていたもの。『プッシュアップのバイオメカニクス:レジスタンストレーニングプログラムのヒント』を基に、自分への備忘録として、一度しっかりとプッシュアップを分類してみます。

 

 

プッシュアップのバイオメカニクス

標準的なプッシュアップは、最上点では自重の69%、最下点では75%の負荷がかかるというのが研究結果からでた平均値。

私のように、体重70㎏なら正しいフォームで行うプッシュアップ10回は50㎏x10のベンチプレスとほぼ同様の効果があるであろう、ということになります。

上半身を中心とした強化ではありますが、CKC(クローズド・キネティック・チェーン)の運動様式であり、特に大きな筋活動を起こす場所は、大胸筋61%、上腕三頭筋66%、前鋸筋56%、三角筋前部42%、僧帽筋上部45%、あたりが研究からの平均値とのこと(1)。

手、足の位置を変えることで筋の動員に変化を加えるパターンもありますよね。

Ebbenら(2)は、プッシュアップのバリエーションにおける垂直方向のピーク床反力を、

①標準的プッシュアップ
②二―プッシュアップ
③足を30.5㎝あるいは④61㎝のボックスに乗せて行うプッシュアップ
⑤手を30.5㎝あるいは⑥61㎝のボックスに乗せて行うプッシュアップ

で比較。

負荷を体重比で示すと、小さい順に、⑥(体重の41%)、②(体重の49%)、③(55%)、①(64%)、③(70%)、④(74%)、となったそうです。

またLehmanら(3)による研究では、手を不安定なサーフェス(スタビリティボールやBOSU)に置くよりも、足を手より高い位置に置く方が肩甲帯安定筋群に大きな刺激を与える事を報告。

肩へのアスリハ目的で行う場合であっても、手の下にBOSUを置くプッシュアップなどよりもボックスに足を乗せたプッシュアップの方が刺激は効率的に入る、ということですよね。

状況にもよるかもしれませんが、今までこういった概念は私になかったので参考になりました。

TRXのようなサスペンション器具を使ったプッシュアップもよく行いますよね。

複数の研究結果から一般的にいわれているように、標準的プッシュアップと比べて大きなコア筋群の筋活動を誘発するデータを示したとのこと。

こういったデータを知識として入れておくと、種目選択の際の一つの決め手になるでしょう。

高速で行うシンプルなプッシュアップがパワー向上には最適

プッシュアップに変化を与える要素は、動作スピードの変更によっても可能。

背筋を伸ばした膝立ち姿勢から、
① 床に倒れこんでプッシュアップし、再び膝立ち姿勢に戻るフォールプッシュアップ
② ジャンププッシュアップ
③ カウンタームーブメントプッシュアップ(すべての局面を高速で行うが身体を床から離さない)
を比較。

その結果、最大スピードで行われた③のカウンタームーブメントプッシュアップが最も高いピークフォースと力の立ち上がり速度を記録。

衝撃力を伴わず上半身のパワー面を最大化という目的にはとても効果的な選択肢になりそうです。

プライオメトリックプッシュアップが禁忌な選手もいる

クラッピングプッシュアップなども有名ですよね。

これらのプライオメトリックプッシュアップの一つ、メディスンボールでのオルタネイトプッシュアップでは、腰椎に6.224Nもの圧縮力がかかることが研究のひとつで判明しています(通常プッシュアップでは1.838N程度)。

腰椎下部の分離症やヘルニアなどのある選手には、手段としては適切ではないです。

データ整理し手段として適切なプログレッション/リグレッションを

デッドリフトやスクワットと共に、普段のプログラムにおいても出番の多いプッシュアップ。

こういったスタンダード種目ほど自動化して提供する傾向があるので注意が必要。

今回改めて論文研究を基に、データを整理。常に一定の強度リストではなく、目的を考えたうえでその都度、手段として適切なプログレッション及びリグレッションを提供できること。

これを意識して自分の気づきノートにも加えていきます。

 

前鋸筋の強化という観点からも深掘りすると

プッシュアップの大きな利点の一つが、伝統的なベンチプレスに比べて前鋸筋を効果的に発達させることができること。

特に肩甲骨の上方回旋において前鋸筋の強化が大切なのは、多くの野球関係のS&Cコーチやトレーナーには常識ですよね。

私にとって新鮮だったのは「前鋸筋が胸椎後弯にも大切だ」という視点です。

前鋸筋を考えるとき、つい停止である肩甲骨付着部やその動きに着目しがちですが、前鋸筋は胸郭前方にも付着しています。

それを表すのが肩甲骨を固定させるよう意識して行い最後に肩甲骨外転を加える、プッシュアッププラスでしょう。胸椎の後弯が最終動作で強調されますよね。

肩甲骨は側面からみた際に、緩やかにカーブをしています。肩の受動的安定性を考えるならば、胸椎には後弯(エリッククレーシー曰く『やや丸みを帯びた上背部』)が必要だ、という事になります。

もしカーブした肩甲骨が平らな上背部についていれば、肩の受動的安定性を失ってしまいます。肩甲骨の安定性を失うということは、実質的な肩全体の安定性を失ってしまう。

ローテータカフと呼ばれる回旋腱板は肩甲骨に付着していますから、平らな胸椎では安定しないことになってしまうのでしょう。

プッシュアップの際の体幹を安定させたフォーム指導が大切

前鋸筋のほどよい強化が、肩の安定性にも大きく影響を与える、という要素が少しつながったでしょうか。腕だけで行わずに体幹を安定させた正しいプッシュアップを行わせましょう。

しっかりと肩甲骨の内転・外転を意識し床に向かって押すことをしっかりと強調すること。

そうすれば肩甲骨はわきの下に向かって回旋します。この上背部の姿勢がしっかりと取れれば、回旋腱板の制御が短期的にも長期的にも向上していきます。

前鋸筋も考慮に入れたプッシュアップのバリエーション

私がグラウンドレベルでよく用いる、ローリングプッシュオフという種目。これもメインの目的は前鋸筋をきちんと使えることと、体幹の動的なコントロールです。

プッシュアップの応用編ですが、運用の仕方はずいぶんと違ってきますよね。

こういった観点からエクササイズ一つ一つを考えると、そのバリエーションも広がっていきます。自分なりの一工夫を考えてみるのも大切です。

まとめ

私自身、改めてプッシュアップを多く実施してみると、この種目がクローズドキネティックチェーン動作として全身に刺激を与えることができるなぁ、と実感しています。

バイオメカニクス的な見地や前鋸筋の働きに焦点をあてた内容をご紹介しました。

いろんな観点からシンプルな種目を深掘りすることにより、昔から行われている種目がなぜ長くスタンダードなものとして定着しているか、がもっと理解できるような気がしますよね。

<参考文献>
1.Baumgartner T, Oh S, Chung H, Hales D. Objectivity, relaiability, and validity for a revised push-up test protocol. Meas Phys Educ Exerc Sci 6:225-242, 2002.
2. Ebben WP, W urm B, VanderZanden TL, Spadavecchia ML, Durocher JJ, Bickham CT, Petushek EJ. Kinetic analysis of several variations of push-ups. J Strength Cond Res 25:2891-2894, 2011.
3.Lehman G, Gilas D, Patel U. An unstable support surface does not increase scapulothoracic stabilizing muscle activity during push up and push up plus exercises. Man Ther 13:500-506, 2008.

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。









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