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トレーニングプログラム作成で陥りがちなミスを避けよう

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最近聴いたオーディオブックの中で印象的だった言葉が「引き算による足し算をしていこう」。本日はトレーニングプログラム作成で陥りがちなミスについて、お伝えします。

「引き算による足し算」はトレーニングでも同じ

大企業などが100人くらいでミーティングをしているのに、ほとんどの人が聞くのみで、時間をつぶしているだけといったような状況はけっこう多いそうです。

現在では、少数精鋭で活発にディスカッションができる4〜5人のスモールグループを作って、それをいくつか作っていくというやり方をしているとのこと。

人数を減らし、使える戦力を敢えて減らすことによって結果としては強くなっていくことや、多く実りが取れるといった考え方には納得しました。トレーニングの専門家としても大いに共感するところがあったからです。

トレーニング専門家の大事な仕事の1つには、トレーニングプログラム作成がありますが、具体的なエクササイズ種目やセット数というのは、よほど意識しないとどんどん増えがちなんです。

ATやPTの方がプログラムを作るときにより顕著に

特にトレーニング指導が専門ではない、アスレティックトレーナー(以下AT)や理学療法士の方(以下PT)がプログラム作成をする場合、この傾向は計著になります。

「ある程度身体のこともわかるし、基本は知っているだろうからトレーニングプログラムを作ってよ、トレーニングを見てやってよ」

チームの予算に限りがあることもあり、チームに1人だけ常勤でいらっしゃるケースに、彼ら、彼女らがこう頼まれているパターンが、日本ではいまだにすごく多いんですよね。

要望を出す側はけっこう軽い感覚で依頼するわけですが、大変な業務負担になります。だからこそ、そこに対する批判は全くありません。

しかしS&C専門家以外がトレーニングプログラムを作る際の1番の弊害は、量が多くなることです。セット数、回数、種目数。全て増えがちになるのです。

一番の原因は不安感

どうして増えてしまうのかといえば、一言でいうと「不安感」です。こういった要素もやらせた方がいいな、足りないなと感じてしまう。

ATやPTの方が従来作成し実施するプログラムは、リハビリテーション。足首の捻挫や軟部組織系の怪我に対してリハビリとして考えるプログラムと、最小公倍数的な要素を抽出して、全体の70%に合致するように作成する強化プログラム。この2者の違いは大きいのです。

この絶対的な違いを理解せずに、今までの自分のアプローチで強化プログラムに着手すると、結果的に「足りない要素」にばかり意識を奪われてしまうんですね。

この傾向は、強化を主眼としたS&Cコーチであっても最も陥りやすい思考パターン。よほど強い意識を持って「最小限」のプログラムにしないと、増える一方になるものです。

二番目の理由はリアルな経験値

繰り返しになりますが、そもそもATやPTの方に、筋力強化やパワー向上のためのトレーニングプログラムを処方してもらうこと自体がお門違いではあるんです。そこを踏まえたうえで、もう一つの主な原因は「リアルな経験値が少ない」ことになります。

3回x5セットのバックスクワット。こういった回数とセット数の組み合わせ、S&C専門家以外にさらっと組むのは難しかったりします。

2回目を終えた時点で

「うわ、これ、五分五分で挙げられなさそうだ…代償動作出ないように、腹圧抜かずにクリアするぞ!」

…くすぐったくなるような太ももの前の力が抜けそうになる感覚に耐えながら、何とかギリギリ3回目を挙げきる。

ラックにバーベルを戻した瞬間、一気に大量の汗が吹き出す。
視界の上方、目の周りにチカチカと白い膜が表れて、少し血の気が引く。

目標回数3回って、こんな状態で行わせるための指示であり、ある種のメッセージでもあります。

自ら感覚として体感したことがないと「え、3回ギリギリの重さなんて怪我のリスクが高いよな…」と尻込みしてしまうものです。この躊躇が最初に理由にあげた不安感を増長させてしまいもするんですよね。

3Sを意識して「削る勇気」を

種目も回数も増え、トレーニング時間もどんどん増えていく。こうなると結果的にすべてを流してやるというか、こなすようになっていく選手が大半となっていきます。

選手を責めることはできません。実際に自分でやってみると「いや、この量と強度、できないもんね」と感じるものになっているわけですから。

この状況になると、向上させていきたい最大筋力やパワーといった、パフォーマンスに直接繋がる部分を高めていくことはできません。

トレーニングに関する原理、原則を抑えつつ「削る勇気」を持つ。これに尽きるわけですが、最終的に確認作業をする際に、私は3Sを意識しています。私なりのチェックリストのようなものですが、それを共有しましょう。

3Sとは

1つはStrongです。充分な強さを持ってプログラムとして機能しているか、を確認します。

2つ目がSharp。やるべき目的に対して「無駄なく、ムラなく、かぶりなく」最小限にまとめることができているか。

3つ目はSubtraction。引き算思考のことを指しています。不要なものや無駄なものをしっかり引くことができているか。

この3つのSということを考えてプログラムを最終調整しているんです。

チェックリストとしての3S
1.Strong
2.Sharp
3.Subtraction

まとめ

欧米諸国に比べると日本の文化そのものが「長くやる事はいいことだ。繰り返す事はいいことだ。」時間をかけることに対する美徳という部分があるように感じます。

昭和生まれの私にも、こういった典型的な日本人の思考というのは刷り込まれているものです。不安になるとどうしても長くやらせたいし、多くやらせたい。

しかしその不安に打ち勝っていかないと、きちんとした結果として反映するのは難しい。試行錯誤を繰り返しながら、20年以上トレーニングに向き合ってきた、私の正直な実感がこれです。

引き算思考によって、結果に対して足し算効果を生む。そんな理想形を目指して、日々研鑽していきたいものですよね。

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。
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