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「スポーツトレーナーです」自己紹介の理由と職域から考えるトレーナー業界を発展させるためのストーリーとは

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*この投稿は2016年1月に旧ブログUPしたものをリライトしたものです。

今回のテーマは、この業界ではアンタッチャブルな話題の一つ、トレーナー関連業務の職域と呼称について。

2016年の段階から基本的な私の立ち位置は変わっていません。

しかし2019年後半に、Twitterを中心に「職域と呼称」の問題はS&C関係者の間では盛り上がりを見せました。

その流れを汲んでブログにまとめて下さった池田克也さんと河森直紀さんの記事はとても
読み応えがあり、新たな発見も多くありました。

・池田克也さんブログ記事はコチラ

・河森直紀さんブログ記事はコチラ

今回のたくさんの専門家の意見も踏まえて、偏っている部分もありますが、コンディショニングコーチとして18年目を迎えている専門職の一意見を、ブログで述べていきます。

トレーナーという言葉の曖昧さ

第一に日本ではトレーナーという言葉自体の曖昧さが最大の問題です。

便宜上、私は自分が関わる業界をトレーナー業界、と呼びますし、一般の方には自分の仕事のことを「スポーツトレーナーです」と伝えています。

「コンディショニングコーチ」と名乗っても一般の方には何のことだがさっぱりわかりませんから。

1商品として一般の方に仕事を知ってもらったり、組織やチームに雇ってもらうためには、「相手に伝わるように伝える」必要がある。

そんな風に考えているからです。

正直、自分の肩書きを「トレーナー」とするのは違和感があります。NATA-ATCや日体協ATCにも申し訳ない気持ちになるんです。まるで専門が違いますからね。

世間一般のトレーナーの分類を浸透させていく

こういった問題の本質的な解決は、社会で言われている「こんな時にはトレーナーが必要だ!」の定義づけを浸透させていくしかない気がします。

「トレーナーが必要だ!」
「この場合は、怪我の予防やアスリハ、テーピングが出来る人材がマストですから、アスレティックトレーナーですね!」
「このチームには専門のトレーナーが必要だ!」
「フィジカル強化を目指して、という事ですから、ストレングス&コンディショニングコーチが必要だ、という事ですね!」
「トレーナーに何をしたらいいか聞いてこい!」
「手術後のリハビリの進捗状況を知りたいということですから、理学療法士に確認しなさい、という事ですね!」

こんな風に、我々専門家であったり、こういった棲み分けをキチンと理解しているスポーツマネジメント会社を介して(アセンダーズという気鋭の会社が出てきています)、「現場のニーズを翻訳できる」人たちを増やしていくということです。

いくら我々が業界の中で定義づけをしたり、共生を図ったとしても、世間では一向に「トレーナー」への認識は定着していきませんから。

業界内での話し合いだけでは変化は起きない

極端な例えですが、「トレーナーという定義や意義が日本の世の中で認知される」というのが目的だとしたならば。

目的を達成する手段としては、政治家を目指したほうが早いです。

今後の日本社会が必要とする、医療から予防への転換を大項目としたトレーナーのシステムづくりを提唱するような活動をしていくわけです。

現場で一人ひとりが「着眼大局着手小局」と考えて日々、一生懸命に活動するよりも、そのほうが目指しているものを為す確率は高くなるはず。

全く現実的でないかというと、そうでもないでしょう。

実際に私が長年親交のある、スポーツジム経営者である藤田文武氏は、2018年に衆議院議員初当選。2022年現在、日本維新の会幹事長というNo.4のポジションに登りつめ、国を良くなる政策を推し進めています。

ブラッシュアップしていくために、若い次世代のために、業界内でどんどん話し合いや議論を進めていくのは大事。

しかし変化を起こすのであれば、専門家である我々ももっと広い視座でアクションをしていく部分が必要だと感じています。

 

まずは「専門家だ!」というレベルまで高めよう

職域に関して現場にいる私たちがまず考えるべき事。それは専門家としての考え方や哲学、スキルや知識を一定以上身につける事しかないのだ、と思っています。

ここでいう一定以上とは、同じ職場や同業種、関連業種の人間から、専門家として認められるレベルです。

業界の先人たちや関連業のプロの凄さが「感じられる」レベルに

自分の専門分野、という円を考え得る限り大きくしていく。それを成そうとしたとき、そもそも自分の専門性について、深堀りをしない事には不可能ですよね。

その過程で自然に、自分の業界の先人たちのすごさや、関連業種のプロフェッショナル、と認められている人たちの偉大さやプロセスを、ぼんやりとですが『感じられる』ようになるのだと思います。

だから、弘田が尊敬する専門家の方々は、やはり他分野に関して、非常に尊重するし偏見や競争心はない、という共通項があります。まずはこのレベルになる、というのがスタートラインのはず。

 ある地点から専門領域にこだわらず「掛け算」を意識して

関わっていたジム施設のスタッフは、

「著名なトレーナーや専門家の方ほど、自分が身に付けた知識や技術に対して、多大なる投資をした努力と苦労を知っている。だからこそ他の専門分野に対しては触れないし、自分の分野に対する軽率な意見を嫌うのではないでしょうか」

という考えを伝えてくれました。

確かにそんな傾向はあるでしょう。私が関わっているS&C業界の先人や著名な方は、ほぼアメリカやオーストラリアといった海外での留学や業務経験があるので、余計にそういった線引きへの意識が強いはず。

一方で、私自身はアメリカでの留学生活に、職域のラインがあまりにもくっきり、はっきり線引きされ過ぎていて、辟易した経験がありました。

留学時代に受けた感覚は、横の専門業務に関するリスペクトというよりは、ベルトコンベア式な、『俺は鍛える人だから、アスリハでどう考えているかは一切考えない。俺の所に回されてきたのだから、その段階はクリアしているという事だから』というものに近くて、個人的には嫌だったんですね。

また専門家として確固たるキャリアを積んでいる方の中にも、提言すべき事などがあったとしても、『君子危うきに近寄らず』といった方針により、黙秘権を行使している、というタイプの専門家の方もいます。

それはそれでずるいなぁと個人的には思ったりもするわけで…

今後もS&Cの専門家としての自分の円を広げていく、自分の専門領域はS&Cである、というのは不変です。

プロとしてより良い成果を出すために、改善・工夫できるところは、自分のS&Cという領域にこだわらずに、どんどんしていきたい。

理学療法士的な思考や東洋医学のコンセプトは、弘田がS&Cの専門家にも関わらずに興味を持ち、取り入れている概念です。

もちろん一度(ひとたび)、自分の専門領域を出たときに、中途半端な知識ではその領域の方たちの価値を下げる事や、反発を受ける事は分かっている。そんなジレンマがあったし、今でも常にありますが…

私が鍼灸師免許を取得した理由

ただフリーランスという立場からも『継続的に食べていく』ためには、強い掛け算要素が必要な時期だ、と30代半ばで感じました。

そこで次のステージへの挑戦として、選んだ手段が「鍼灸師免許の取得」。

『肩書きや専門領域に関わらず、成果が出るもの、クライアントにより満足してもらうものは提供したい。』というポリシー。これを矛盾なく実行していくためには、最低限その重なる分野の認められた知識や資格を持っておく必要がある、と考えたからです。

2014年3月には無事、国家試験をパスし鍼灸師という資格を手に入れました。もちろん3年学校に通い、国家試験を合格し資格取得、というのは最低限のレベル。

今後研鑽を積み、鍼灸師・治療家という分野でプロフェッショナルとして活躍している、第一線の方々から認められる経験を積み能力を向上させていきます。

ただし、その方たちと肩を並べるような治療家を目指すのか、というとそうではありません。

あくまでも、極めて高いレベルのS&C専門家の価値を高める要素として、『鍼灸を用いた基本的な治療を行える』というのが、今の目指す着地点。

私の例で言うと英語と似た位置づけ(日常会話には問題ないが、英語通訳を生業とする事は難しいレベル)になります。

一つの分野で高い専門性を身につける、という事自体が極めて困難な事であるのに、違う分野で同様に専門家を目指す、というのは、私には出来ないし本質的な意味では傲慢だと思っています。

掛け算要素を求めるタイミングは慎重に

・独立xファンクショナルトレーニング(極めて表面的なもの)を推奨する方
・自分が十分に食べていくだけの能力や経験、人脈や覚悟がないのに『若手トレーナー育成』を謳ってセミナーを開く“独立起業”トレーナー
・治療の本質に目がいかずに自分が関わった競技のトレーナーになる事を目的とした治療家の方。

失礼な表現なのは重々承知ですが、上記のような人材にはならないように、と自戒しています。もともとの専門レベルが1以上ない人が他の要素をかけても、トータルは下がっちゃうだけというのは基本のはず。

自分のもともとの専門分野 2(業界のトップ50) × 新しい要素 最低1.1以上(業界の平均少し上の準医療従事資格、元プロアスリート、商品開発力、外国語、スポーツ/芸能などへのコネクションなど)


勝手に弘田が考えている公式ですが、これぐらいの基準じゃないと武器にはならない
と思います。

病院勤務の中で、莫大な数のリハビリ患者を見る中で、その継続性に限界を感じ、試行錯誤の末に足底版作製の第一人者になったPTである故入谷誠先生。

横浜ベイスターズで、現役時代に引退危機から救われた当時の牛島監督から請われて、コンディショニングコーチを務めた山口先生といったレベルのPT。

バリバリのS&Cコーチとして、全日本女子バレーを担当するなどずっと第一線で活躍されている中、今は家族でオーストラリアに渡り、見事に博士になられた甲谷洋祐さん(CSCSであり、NATA-ATCであり鍼灸マッサージ師です)。

専門分野から裾野を広げたキャリアを積んでいる方たちでも、このレベルであれば誰も“中途半端”という評価はしないです。

 長く業界を生きてきた先輩として

おこがましいけど、キャリアプランという観点で、私がこれから”トレーナー”を目指す次世代の人たちに、アドバイス出来ること。

それは、1プレーヤーとして頭一つ抜けた能力や経歴を備えること。

一般の人からもこの人の提案したものこそが『Theトレーナーのスタンダード』だ、と疑いなく信じ込ませられるだけの一流のプロフェッショナルを目指すこと、です。

それこそが実は日本でトレーナーという職域の拡大させる事に対しても、最短距離だと思うんです。

これは私自身が、自分に過度なプレッシャーにならないようにしつつも、目指している方向性。

その過程として、目的ではなく手段として、

・マネージャーとして現場のコントロールを身につける
・経営者としてのしっかりとした収益を上げるリテラシーを身に付ける
・著名人のパーソナルトレーナーを経験する
・アスリートスポーツやオリンピック種目のS&Cコーチやトレーナーを歴任する
・少しミーハーなテイストの雑誌にもトレーナーとして積極的に記事を書く

こんなキャリアを積む事。

そして同時進行で、説得力として必要と思われる能力や資格の習得を目指す。こういった考え方も必要なのだと思います。

実際に弘田も、2014年3月に鍼灸師免許を取得後、外部セミナーを行う際や、現場でS&C専門家として働いている今も、コメディカルの方からの理解も得やすくメディカルトレーナーとの信頼関係も築きやすいといった、有形無形のメリットを実感しています。

トレーナーの職域や役割を統一していく、トレーナー業界の棲み分けを整理していくことは今後絶対に必要。

そのためには、あるステージまで自分を高めた時点で、全てのトレーナー業界に関わる分野の専門性を理解する、強みを把握し尊重する、という事が不可欠にはなるでしょう。

影響力、説得力のあるキャリアを築きつつ、その過程で自分を信頼し協力し合える同志を集めていく、というストーリー。

大変な事ではありますが、これが一番現実味がある方向性だと、私は感じています。

夢の部分ではなく、実際に仕事として食べていくためのリアル。この辺りをご紹介するオンセミナーも行っていきます。興味のある方はぜひ一度ご参加ください。

まとめ

専門家としてごく真面目なトピックを、と力をいれて書きました。

弘田と同業種のS&Cコーチの方、アスレティックトレーナー、理学療法士や海外で学んできたフィジオ、柔道整復師や鍼灸師の方、それぞれに色んな思いがあると思います。

感じたことをまたコメントなどいただけると嬉しいです。

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。
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