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スポーツチームと用具提供メーカーのリアル

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

アスリートチームで統一されているスポーツメーカー。目立つ部分にログがあるだけに、記憶している人も多いのではないでしょうか。

今回は、スポーツチームと用具提供メーカーの関係という話をしていきます。

ウェアや用具提供をしてくれるスポーツメーカー

ある程度の知名度や実力のあるアスリートチームというものは、広報や運営側が動いてくださった上で、ウェアや道具を提供してくれるスポンサーとなるメーカーが存在します。

私が関わってきたチームでいうと、20年近く前になりますが、2003年千葉ロッテ時代ではメインウェアはデサントでした。ウェアに関しては2021年まで同じデサントがスポンサーとなっていますね。

デサントは高級路線でお値段は張りますが、着やすくて格好いいウェアが多いです。未だに私が個人購入する際、ウェアはデサントがほとんど。

これからジャージ購入を考えている方は、ぜひデサント製品をオススメします。

所属チームのウェア提供メーカー遍歴

用具に関しては、当時は各自で声をかけてもらったところと提携する形でした。

今はわかりませんが、当時のロッテでは、どこも指定がない選手というか、まだ無名の選手はアシックスと交渉するようになっていましたね。スタッフもだいぶ割引はしてもらえましたが、基本的にアシックスから買ってね、ということになっていました。

キャッチャーはハタケヤマが有名だったので、ブルペンキャッチャーの方たちはほぼ全員ハタケヤマで購入していた記憶があります。古田捕手のイメージのあるゼットと契約していたのは、里崎智也や橋本将などがいました。個別にミズノやナイキ、内野手からは人気のあるスラッガーなど、様々なメーカーから提供していただく選手というのも、もちろんいました。

近鉄ライナーズ時代のチームウェアはミズノでした。そして現在所属している清水建設ブルーシャークスではアディダスがウェア提供をしてくださっています。

チームウェア等に関しては全て提供という契約が基本です。部分的に買い取りというケースもありますが、ウェアに関してはほとんどが広告費として提供してくださるパターンでしょう。

公式戦だけに関わらず、練習中やいかなるチーム活動の際にも「必ず同メーカーのものを着用してください」とチームからは徹底されます。当然ですよね。

例えばアディダスで契約しているのに、私が着ているものが上着でどーんとナイキや違うメーカーのロゴが入っていたら重大な規約違反。個人契約しているメーカーがある選手の場合は結構ややこしいところもあるんですね。

大谷翔平投手がメジャーで活躍していますが、日本ハムファイターズ時代のユニホーム類というのはミズノでした。ミズノのものしか着用できないのですが、個人として靴はアシックス。そしてプライベートというかウェアに関してはデサント契約していたはずです。

そうなってくるとなかなかチーム移動のところでは使えないですが「オフだよ」とか「自主練習だよ」といったときには必ずデサント着てねという制約はあるわけです。そういった視点でCM出演時の格好やブランドなどを見ると面白い発見がありますw

父との忘れられないミズノ本店での買い物

ちなみに私の父、弘田澄男も当時は著名なプロ野球選手の1人でしたので、ミズノとアドバイザリー契約を結んでいました。当時は無償で用具提供をしていただいた上に「弘田モデル」のグローブも存在。年間アドバイザリー料もいただいていた記憶があります。

そんな環境だったこともあるのでしょう。父は息子である私に対しては、グローブやバットスパイクなどは「ボロボロになるまで必ず使え」だったりとか「野球の技術はどうでもいいけれども必ず道具を大事にしろ」ということを徹底して教育していました。

そんな状況でしたが、鮮烈な思い出が1つあります。小学校4年生のときのことです。

オフのある日に「ちょっとグローブとバットを持ってこい」と父に呼ばれました。小2から使ってきたグローブやバットを相当使い込んだこと、そして小さくなってきたというのがわかったのでしょう。

「ミズノに行くから一緒についてこい。グローブを買ってやる」といってくれて、水道橋にある当時はミズノ本店に連れて行かれました。今ではエスポートミズノになっていますね。

野球全盛期の時代ですから、野球館みたいな名前で1階は全部グローブが軟式から硬式までずらっと並び、2階にはバットやヘルメット、手袋だけだったような気がします。

ものすごい広さの1階、たぶん300~500個ほどのグローブがザーッと並んでいる、壮観な景色でした。実際にグローブに手を突っ込むこともできて、感触を確かめることができました。今考えるとゼイタクな時代ですよね。

父に「選んでみろ」と言われて、自分なりに感触を確かめて父親のところに持っていく。「何だ、こんな皮の硬いグローブ駄目だ!」、「お前の手には大きすぎるだろ」などダメ出しされること2時間近く。「よーし。これならいいんじゃないか」と、ようやくグローブ選びに合格点をもらいました。

その流れで、「バットも短かったし、軽くなってきただろうからバットも新しくするぞ。それは俺が選んでやる」といわれて2階へ。素振りするゾーンもあったし、Tバッティングゾーンもあり、散々ダメ出しされながらも、嬉しい時間でもありました。なかなか普段、父に野球指導を受けられることはなかったからですね。

最終的に「このぐらいの重さでいいだろう」といってもらってバットも選んでもらいました。「バットケースちゃんと買えよ」といわれて「自分で管理するんだぞ」とバットケースも選んでもらって、バットとグローブとバットケースです。

もちろん全て値札ついています。なんか少し気になったりして、チラチラみていると結構値段高いのだけど大丈夫なのかな?と子供心に思っていたら、近くにメーカーの方というかスタッフの方がいて「弘田さん、こんにちは」なんて声をかけてくださりました。

父とミズノスタッフの会話

父「どうもお世話になってます。あの、この3つ、このままいただきます」
スタッフ「あ、袋に入れますよ!」
父「いえいえ、結構です。そのまま持って帰らせていただくので大丈夫ですか?」
スタッフ「はい。そのままどうぞ」

…?

そのタグがついたままのバット、グローブ、バットケースをそのまま持って、駐車場に向かって歩いて外出てしまったのです!

「お父さん、まだお金払ってないよ!!」
びっくりして怯えて声をかけても、
「いいんだよ、お父さん、アドバイザーになってるんだから。」
といって車に乗り込んでしまいました。

まだ昭和の頃の話ですが、処理の仕方含めてスゴイ時代ですよね。そんなことあるの?っていうこの経験、めちゃくちゃ鮮明に覚えています。


父の教えのお陰で未だに野球道具だけは、とても大切に丁寧に扱うようになりました

個人契約ではさまざまなランクが存在する

メーカーや契約の仕方によって、
・無償で提供してもらうパターン
・安く提供してもらうパターン
など、様々なランクが存在するのもちょっと残酷であり面白いところです。

最高位のランクは、前述した父のように用具全て無償提供プラス年間アドバイザー料を得るもの。

次のランクは、基本的な用具やウェアが年間○○万円までは無償提供されるタイプ。ここまでは基本そのメーカーの独占利用が義務づけられています。

その次のランクが「バット20本、グローブ2個、スパイク2個までは年間支給してあげますよ」というタイプ。当然、これだけでは足りないので、それ以降は割引があるものの買い取りになります。この場合、縛りはなく「他のメーカーのものを併用してもいいよ、でもビッグになったらうちと優先的に契約してね」といったニュアンスでした。

無名の若手選手などは、年間20本のバットといった条件では、極端な話、春季キャンプからオープン戦までで底を尽きちゃいます。

可愛がってくれている先輩からバットをもらったり、他の人のバットを借りつつ、自分が振りやすいバットを探す。気に入ったものが他メーカーであったら、定価であっても買い取りをしたり、涙ぐましい苦労があったりするんですね。

グローブにこだわりのある選手も多いです。どうしても提供してくれるメーカーではなく、違うメーカーのグローブを使いたいという選手なんかも存在します。

あまり大きな声でいえないですが、タグを外して「すいません。どうしてもこのグローブだけは使い続けたいので、そのメーカーのロゴを貼ってくれませんか?」というのを交渉している選手も見たことがあります。

本当にありがたいウェアや用具提供ですが、こういった交渉もあったりするんですね。

ゼットと個人契約をしていた現役時代の橋本将氏

靴だけは自分に本当に合っているものを

メーカー側からしても広告費として、相当なお金を使ってくれている、このシステム。選手は心から感謝して、大事に丁寧に支給品を利用しなければいけません。

ただ最近気になるのが、あるスポーツにおいては「全てメーカーで統一してきなさい」と謳う中にシューズも含んでいる場合が増えていること。

シューズ、特にスパイクは個人差がすごく大きいです。各自が苦労しながら自分に合ったメーカーだったり、形選んで一生懸命こだわっているというのが実状。

シューズまでがメーカー統一となると、慢性痛やオーバーユースなどの発症率が大幅に増大してしまう可能性が高いです。

チーム予算としても、コロナ禍での資金集めも大変であることは理解できます。しかしシューズに関しては、色や基本的な形を統一した場合は、どのメーカーでも各自が選んでよい、そのかわり自費で出しなさい、という形が1番いいなと考えています。

この記事はstand.fmにて音声配信した内容(「アスリートチームと用具提供メーカーの関係」)を基に記事化しました。

 

 

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。
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