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知的な野武士、THEプロフェッショナルとの再会 ~高忠伸という男~

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10日間のオフ期間。滅多に降り立つことはない秋葉原駅にて昨年まで同じチームに所属していた「野武士」のような男に再会しました。

彼の名前は高忠伸。IBMから近鉄へ移籍。近鉄ライナーズではキャプテンも務め8年間在籍しました。

昨年限りで近鉄を退団し、今はトップリーグを目指して昨年トップイーストに昇格したばかりの清水建設ブルーシャークスにてプレーをしています。

尊敬できるTheプロフェッショナル

彼と初めて会ったのは2014年5月。第一印象は「前から知っているようなプロフェッショナル精神に富んだ一流選手」。

全くラグビーの知識がない私でしたが、「ああ、この選手は主力選手だな」とすぐわかりました。

体つきや話し方、彼が持つ気配。

覚悟を持って仕事に取り組んでいる選手は、その在り方が既に他を圧倒しているもの。ああ、こんな雰囲気の選手がいるんだなぁ、と嬉しくなったのを覚えています。

 

未だに思い出す2015年の彼の姿があります。

公式戦終了後の花園サブグラウンド。珍しくスタメン落ちした高が端の方でランフィットネスをやっているのが見えました。

後半15分から出場し25分以上プレーした彼。S&C担当としてはエキストラでのフィットネスは課していませんでした。

声をかけると「来週からスタメン復帰したとき、今日の強度は明らかに足りないので。自分の感覚でもう少し調整しておきます。弘田さんからもこんなのやっといたらいいよ!ってのあります?」

サラッと当たり前の口調で尋ねてきた彼。

これがチーム全体のスタンダードになったら、もっと強くなるだろうなぁ…と彼の意識の高さに感心させられた出来事でした。

 

戦場の軍人であろうとした姿勢

近鉄ライナーズでの最終年となってしまった2016年は怪我の影響もあり、不本意なシーズンとなってしまいました。そんな彼と約10カ月ぶりに再会。

同じチームに在籍中に何度か食事に誘ってくれ、当時も正直行きたかったのですが(笑)同じチームの選手とは仕事場以外では極力距離を置く、というのがマイルール。

試合後の反省会に一度お邪魔した以外は、プライベートな時間にじっくり話すことはありませんでした。

二人だけでじっくりと3時間ほど、彼と話すことができて改めて高忠伸という選手のプロ意識を感じることができました。

IBMを出て、プロ契約として近鉄ライナーズへ移籍した9年前。

「正しい表現かどうかわからないんですが…」

「弘田さんに以前から言っていたようにグラウンドって戦場だと思っているんです。その最前線に立つんだから俺らは軍人。プロの軍人にならなくては、って常に考えていました。」

そう。在籍中に全くプロフェッショナルな意識の欠けているスタッフに関して、「何であんな人がグラウンドにいるんですか。戦場にいちゃいけない人間を置いたらあかんっすよ!」と真っ先に憤っていたのが高だったんです。

「これも語弊があるかもしれませんが、今戦場に出ようと考えていたら自衛隊で訓練をするじゃないですか。まだトップリーグのレベルに達していない新人や、トップリーグのすぐ下で入れ替え戦を目標にしているチームは、自衛隊の中で戦っているようなものだと思うんです」

今彼は、トップイーストに昇格したばかりの希望に燃えている若いチームでプレーをしています。

「初めて今のチームの練習をみたとき、やっぱりレベルの違いには戸惑ったんです。感覚的にはまだ自衛隊の訓練にも達していないなぁって。言葉を選ばずに言えば、まだ本格的なサバイバルゲームを経験しているところ、というか。」

「でも微力ですけど自分が入っていったことによって、少しずついい影響を与えられている実感が出てきて。このチームのメンバーのうち、何人かは自衛隊での訓練にはもう少しでいけるんじゃないかって、そんな楽しみが出てきたんです」

嬉しそうに話す姿がとても印象的でした。

プロである対価としての報酬をきちんと得ていた近鉄時代と比べると、現在プレーしている環境では生活していくのに必要な収入は得られません。

彼の中にも今まで葛藤はたくさんあったといいます。

「今のチームで求められる喜び、感じてますよ。『報酬なりのプレーでいい』と少しでも妥協していたら、今の気づきはなかったと思う。グラウンドに立つ以上はプロだから!と真剣に100%の準備とプレーをしていてよかった。本当にそう思っています。」

そう話す彼の顔を見られただけでも、当日彼と会えた甲斐がありました。いい表情でした…

 

改めて家族との時間の大切さを実感

全く違う気付きで言うと、やはり家族との時間を多く過ごせるようになったことがあるようです。

8年間の近鉄在籍時は基本単身赴任。奥さんが関東で働いていることもあり、二人の息子さんとは年に数回大阪の家に1週間ほど滞在したり帰京した際に会う、というスタイル。

「今振り返ると、単身赴任中ってリラックスしているつもりでも全然だったんですよね。四六時中、ラグビーを中心とした生活で一定の緊張感の中にいたんだなぁって関東戻ってきて半年ぐらいしてから実感しました。」

「最初こっちに戻ってきて家族と暮らすようになって、ちょっと戸惑いました。普通の家庭では当たり前なんだろうけど、家族が待つ家に帰って休日を一緒に過ごすって経験していなかったから。」

「人生で初めて家族とゆっくりと一緒に暮らしています。ああ、こういう状態をリラックスしているんだなぁ、って感じますよ。」

一人で暮らす時間が長かったから、帰京当初は奥さんと喧嘩も結構したんすよ~と笑っていましたが、家族との貴重な時間を楽しんでいる様子が伝わってきました。

まだ4年目とはいえ、単身赴任生活を続けている私。一人でいるときに一定以上解けない緊張感と久々に家族とずっと過ごす時間への戸惑い、というのは大いに共感してしまいました。

 

理解されないつらさを抱えても貫く「在り方」

高忠伸は、言いづらいこともはっきりと口に出して伝えます。それも明確に。だから「なぁなぁ」で済ませたい事なかれ主義の人には煙たがられるでしょう。

敵も作るタイプかもしれません。そもそも誰からも好かれようとしていませんし。

だからこそ。

そんな高のプロ意識や在り方が私は大好きなんです。彼にはとても及ばないけれど、自分もそうでありたいから、共感してしまうんでしょうね。

「自分を裏切りたくないって気持ちが一番強いのかな。誰が見てなくても自分はわかっちゃうわけでしょ?」

正にその通り。

豊富な語彙力できちんと自分の心情や相手の様子を伝えられるところからも、彼がトレーニングだけでなく常に教養を身につけようと学んでいるのが伝わってきます。

プロであろうとする姿勢。格好いい響きですが、それを日々貫くのって並大抵のことではないです。普通に生きている人にはまず理解されないはず。

そんなつらさに負けることなく、「自分を裏切らないために」100%の状態でグラウンドに立とうとする在り方。

彼のそんな姿勢こそが何よりも貴重なものだと思います。

コーチングにも興味が出てきた、と語っていた彼。高忠伸のセカンドキャリアが楽しみです。

次に会うときにも高のようなプロフェッショナルから「弘田さん、また会いましょうよ!」と言ってもらえるような人間味のあるプロであれるよう。

自分自身も「在り方」を大切に邁進していきます。

 

まとめ

・新しくできた戦友の一人に会えて嬉しかった

・戦場←自衛隊←サバイバルゲームの比喩が秀逸だった

・こんな真面目な話をしている間に5種類のアルコールを15杯近く飲んでいた高のペース恐るべし

 

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。
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