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迫りくる引退を前にした選手が経験するプロセスとは

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スポーツ現場を中心として仕事をさせてもらって16年。たくさんの選手達と出会いました。気がつけば今まで関わらせてもらったアスリートの数は450人以上になりました。

これだけ多くの選手と出会うという事は、相当数の選手の引退も目の当たりにしてきたという事。現在所属する近鉄ライナーズの2017-18シーズンも残り数週間。

デリケートなタイミングではありますが、「引退の迫った選手」との関わり方で私が感じている部分を書きたいと思います。

引退間近の選手が歩むプロセス

ほとんどの選手が「見てみぬふり」から始まる事実

その道でトップクラスまで上り詰めたアスリートには「身体に関する独自の感覚」がある。どんなスポーツであれ、これは共通しています。

ほぼ全てのスポーツ選手が捨てきれない「一番良かった時の感覚」とは全く別のもの。自分の軸となる感性というか体の使い方といったものが存在するんです。

だからこそ、一流どころの選手の衰えに真っ先に気づくのはその選手本人です。

私はS&C専門家として動きの変化や違和感をつかまえるのが得意であり自信をもっていますが、選手本人の気づきにはとてもかないません。

しかし大半の選手は「体の衰えに気づいているのに認めたくない」もの。

私が感じ取っているこの時期の選手の違和感は、実は動きそのものでなく「不調や痛みなどが原因ではなく今までにない衰えという要素で動けなくなっているのでは?」と感じている選手の不安なのかもしれない。

そう思うこともたくさんあります。

 

衰えに気づいていないように振る舞うのが礼儀

このモードに入った選手との付き合い方には、細心の注意を払わないといけません。なぜならその選手は、深層心理では自分が衰え始めたという自覚をもっていながら、「周りから気づかれているとは思っていない」からです。

今までよりも殊更に、「ちょっと体重が重く感じてきたから、少し減らさないと」、「少し張りは残っているけど、体の感覚そのものは全然悪くない」という類のコメントを発するようになります。

キャリアの終盤を迎えた選手自身が一番苦しい時期です。

この時期にその選手に向かって、「いや、ちょっと衰えてきている部分もあると思うよ…」といった表現は残酷なだけ。

技術コーチは、多かれ少なかれ自身の引退の際にこんな思いを経験しているもの。本能的にこの部分には敏感ですから絶対にしない過ち。心配ありません。

今までのキャリアの中で、自信にあふれた若い同業者ほど信じられないような残酷なことを「無邪気に」口にするのを聞いてきました。

私自身、たくさん間違いや失敗を犯してきましたが、この類の過ちを犯す人間は許せません。我々のようなトレーナー業も「選手に対する尊敬の念」が疑われるような下品な言動は絶対に避けましょう。

改善できる部分に関しては具体的な施策やアプローチをアドバイスしていくのはもちろんですが、『選手自身が自分の進退に関して深層心理では気がついている』と感じたら、いろいろなことをいうのは逆効果です。

 

 

「見守ってくれているんだ」と感じさせるだけでいい

正しいかどうかはわかりません。しかし私は、こんな選手には出来るだけ優しく少し寂しい目で「わかっているよ、もっと良くなるよ」といった言葉をかけるようにしています。

今は理解していなくても、その時期がきたら選手本人がこちらの意図を汲み取るようになるもの。ゆっくりと迫りくる『引退』の二文字に向き合い、覚悟を決める日まで出来ることは、ただ見守り必要とするヘルプをするだけ。

 

選手が醸し出す「独特の空気感」はすぐわかるもの

自分の引き際を覚悟した選手からは、独特の雰囲気が醸し出されます。この感じ、アスリートスポーツの中で生きてきた選手や指導者、スタッフならわかりますよね。

「ああ、今シーズンで幕を閉じるつもりなんだな」、「来季契約更新なし、という話をされたんだな」と感じつつ、普段通りに接する。始まりの終わりが近づいているのを嫌でも感じる、切ない時期です。

 

今まで見たことのないような優しくて少し寂しい目をした選手が、自分のところに握手をしにくる。近々経験するであろう、そんなシーンを覚悟しながら。

不甲斐ないシーズンとなってしまいましたが、負けたらお別れが早く来てしまう。今シーズン、家族よりも長い時間過ごしてきたチームメンバーと少しでも長くグラウンドで過ごせるように、スタッフ一同全力を尽くします。

 

 

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。
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