20年前、仕事としてスポーツ現場に携わることになったとき、専門家として曲がりなりにもアスリートをサポートするようになった時に決めたポリシーがあります。
それが「シーズン中には、所属チームの現役選手と食事に行ったり、プライベートで会わない」というものでした。
選手と食事に行ったりプライベートで会わない理由
これはプロ野球選手であった父親が、私が幼い頃にそういった主旨の話をしていたことに感銘を受けたのがきっかけです。
当時の父のニュアンスとしては、「同じポジション(外野手)であったり、レギュラーを争っているような選手とは一緒に食事をしたりしないんだ、お互いライバルだから。」という昭和世代らしいものでした。
今の世代の現役選手たちはそんな意識はもうなくて、しっかりと仲良くしつつもグラウンドでは戦うみたいなオン・オフの切り替えができている気がします。
ただ私としては未だに父のこの感覚はしっくりとくるんです。結局私自身も、「シーズン中には、所属チームの現役選手と食事に行ったりプライベートで会わない」という決まり事を愚直に守っています。
無意識に感情移入するのを防ぐため
チームに所属すると50人前後の選手がいますから、どうしても合う人間、合わない人間、やはり人それぞれの相性というものがありますよね。
その中で、自分と相性が合う人間、好きな人間に対して、仕事以外で食事に行ったり、プライベートで会ったり、家族ぐるみの付き合いをしたりとなってくると、どうしても感情移入をしがちになります。それではシンプルに客観的に評価し、区別することができなくなっていくでしょう。
こういった区別と違って、甘いところが多い私の場合、どこか好き嫌いになってしまうんです。
プライベートな感情の部分で、この人をよく見て話しかけるとか、そうでない選手に話しかけないとなってしまうのはダメ。その可能性を潰すために、選手と一定の距離を保っているわけです。
スタッフとも一定の距離感は保つ理由
「選手とだけでなく、スタッフとも一定の距離を保て」というと、え、そこまで気にかけるのか…という顔をされることが多いです。
前述した選手たちと同じような理由で、私はスタッフとも一定の距離を保つようにしています。やはり、親しくありたいなと思っていますが、あまりにもプライベートで関わってくるようになると、現場での密なコミュニケーションそのものを疎かになりがちだからです。
しっかりとコミュニケーションを取りたいからこそ、きちんと現場のそのタイミングで話をするような関係を作って、そこでピシャッと完結できるような関係を築いていく。
私が考える理想がこんな関係です。
やはり近しくなりすぎて、なぁなぁの関係になるのが一番いけない。もともとの友人などとはやっぱり違いますから「まぁいいじゃん。後は頼んだよ。」みたいな感じだけになってしまうのは良くないです。
決まった選手やスタッフとあまり近しくしすぎないもう一つの理由は、特定のスタッフといつもつるんでいると、他の選手やスタッフが話しかけづらくなってしまうからです。
私の専門はトレーニングやコンディショニングなので、
みたいな声を掛けやすい環境を作っておくことは、そのまま仕事に直結してくるのでとても大切です。
選手が「あ、弘田さんに声を掛けたいな」と思った時に、いつも決まったメンバーでつるんでいる印象だったり、話しかけづらいっていうのは致命的なんです。
場所にも一工夫を
いる場所も「できるだけ適当に散る」感覚を持って動いています。
チームとしてのトレーニング時間が始まったら、真ん中寄りの端付近でウロウロして声を掛けつつ歩いている、チェックしているっていう状況を作る。グラウンドでも選手の目の届くところ、目の入るところに立つように気をつけています。
その現場を離れてからでも友好関係は築ける
一定の距離を保つ付き合い方というのは寂しい部分もありますが、相手が現役引退したり、移籍により別チームになった選手やスタッフと、積極的に交流するようにしています。
無論、もともとピンとこなかった選手や感情的に合わないスタッフはそれなりにいます。そういった方たちとは付き合う必要はないですが、
そんな風に感じる人達とは、こちらから積極的に会うように呼びかけてようにしています。ありがたいことに、だいたいはその後も関係が続いたりしています。
現役を辞めてから、チームを離れてからの方がむしろ本当の意味で仲良くなったりするものなんですよね。
いろいろな世代の気のおけない仲間が増えていく。そんな機会が多い仕事でもあるので、そこも実は魅力的だなと感じたりします。
同じチームや組織を離れてからが、友人・仲間としての付き合いのスタート。そこを楽しみに、近づきすぎない程よい関係を現場で築いていくように努めています。
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YUJI HIROTA
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