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スポーツに関わる全ての大人が今向き合うべき問題。「日本の部活問題」を考えよう

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*これは2016年11月に旧サイトにて更新したブログをまとめたものです。

早いもので我が家の長女は中学生に。球技経験のない彼女が卓球部に入ったのには驚きました。

「カットマン」というスタイルもあり、なかなか大声をあげて応援できるような雰囲気ではないのですが、週末にも部活動に向かう様子に今の中学生は忙しいなぁ…と痛感しています。

長女の所属する卓球部はそれでも週2回は休みがあり、土日も試合のとき以外は一日が午前練習でもう一日はOFF、というペースなので学校内では比較的「緩い」そう。

厳しいことで有名なテニス部などは学校のある日は毎日朝練あり、土日も基本練習とのことで、こうなると友達と休日に遊んだり、ゆっくりと読書を楽しむ時間もなくなっちゃうだろうなぁ…と勝手に心配になってしまいます。

弘田の学生時代はまだ週休2日が確立されておらず、学校の時間割自体がもう少し緩やかだった気がします。そんな自分の経験を基に、小学校、中学校共に土曜日の3時間授業を隔週でもいいから復活させたらいいのに、と感じています。

昼ごはんなしで終わる土曜日に、学校であったメンバーと盛り上がり「昼飯食べたら、〇〇で待ち合わせて遊ぼうぜ!」みたいなこと、よくありましたよね?

その場の流れで普段関わりが少ないクラスメイトや異性の子も含めて集まることになり、思いがけず仲良くなったという経験も一度や二度ではなかったこと。ああいう感じ、大切だと思うんだけどなぁ…。

LINEやメールをガンガン使って…という苦言を呈する気持ちはわかりますが、完全OFFで会う機会が全くない場合、こういったツールに頼るのは仕方がないのかもしれません。

遊ぶのも「いつものメンバー」で固定されがち。結果としてLINEグループから外されることが、我々世代が考えているよりも大きな恐怖となってプレッシャーになっていたりするのでしょう。

 

教員と学生の負担を少なく長く部活動を続ける環境を

少し話は逸れましたが、部活動に対する視点の違う記事を二つ拝読したので、紹介しましょう。

それらがコチラ ⇒ 部活が土日にできなくなる!?文科省の改善案とは 

最初の記事は文部科学省が実際に調査を始めているという中学部活の改善案。現実的に教員の方の負担も相当なもの。

部活動への教員の指導はほぼボランティアで、遠征などが多い場合はむしろ手出しの額の方が大きいでしょう。授業準備への支障だけでなく、家庭内での不満につながるケースも多いと聞いています。

多忙な中、情熱を頼りに部活動に力を入れてくださる教員の方に、「自分はこれだけ犠牲を払いながら、この子たちのために時間を割いているのに…」という心理が働くと、オーバートレーニングや意図せずして虐待まがいの行為に走る可能性もあるでしょう。

そうでなくても指導して下さる教員に対して、とんでもないクレームをするモンスターぺアレンツも増えています。教員の方の精神的ストレスは相当なものがあると察します…。

生徒たちにとっても、中学時代までは友人と映画鑑賞に行く、平日に頑張った分半日を家族との時間をゆっくり楽しむ、といった「ゆとりある時間」が必要だと感じています。

多忙な時間しかないと、間には「スキマ時間」しか生まれません。結果的にネットサーフィンやモバイルでのゲームに時間を費やしてしまう部分も多いのでしょう。

どかんと6時間ぐらい時間がある!という状況が週に1回でもあれば、そこでずっとゲームやLINEに没頭できるはずもありません。

「飽きて」これだけじゃ物足りない、もっと楽しいことがあるんじゃないか、と工夫を凝らすようになるはず。

そういった時間こそ大切ですよね。

それに対して、二番目の記事も由々しき問題です。

部活が土日にできなくなる!?文科省の改善案とは

2年半に目いっぱい詰め込んでガンガン部活をしていたのに、引退した途端にほぼ0の状態になる。

中学から高校への移行期には特にこれは問題です。中学でスポーツ部に所属していた学生は同じ種目を選ばなくても、高校に入学してもスポーツ系の部活をする可能性は高いはず。

急激に体力低下した状態で、上級生と同じレベルで運動を再開すれば怪我のリスクは大きく膨らみます。

しかし14、15歳の子に「高校でもやるんだから受験勉強の合間にしっかりとトレーニングをしておけよ!」といっても、精神的にも知識面でも個人でやるのは困難でしょう。

そこに目をつけて弘田がディレクターをしている「タチリュウコンディショニングジム」でも中3会員といって、夏までに部活を引退した中学生を対象にトレーニング指導を行うシステムを導入しました。

こういった代替案を選べる環境にある子はいいですが、本来は卒業まで普通に部活に参加できるシステム化があれば、それに越したことはないわけです。

中学校レベルでできること

公立、私立を問わずにそれぞれの中学校でできるような取り組みには以下のようなものがあると思います。

中学では基本部活の週休2日をルール化

例えば週の真ん中の水曜日プラス土日のどちらか。中学校レベルで部活動を最大週5回まで、と決めてしまうというものです。

今までほぼ毎日もしくは週6回にしていた部活動が週5回になったところで、大幅に技術が下がることはないはずです。チーム全体の能力が週5回の練習頻度になったことでガクッと落ちるようであれば、それまでのアプローチを考える必要があるとも言えます。

限られた日数や時間の中でいかに効率よく質を高めていくか。自然とこういったところに意識がいくようになる効果が期待できると思います。

中学生にとっては「もう少しやりたいのに足りない」ぐらいの感覚で部活動に参加させる方が、より高いモチベーションで自ら考え工夫する力がつくはずです。

その部活を管轄する教員にとっても、平日と休日に一日ずつ決まったオフがあるというのはストレス軽減の意味からしても大きなメリットだと思います。たまには定時で上がり、家族と夕食を取らないとつらいですからね…

最上級生は基本卒業まで参加

入学当初からこういった方針を保護者にも説明した上で入部させれば、全く問題ないはず。

今までのようにスパッと最上級生が引退しないために新チームでの自覚が損なわれるのではないか、という心配もあるでしょう。しかし新キャプテンがそれまでのキャプテンに相談をしたり、アドバイスを受けたりできるのはプラスに働くはず。

通常、中学校レベルであれば最も技術面で優れているのは3年生であることが多いですよね。最後の公式戦敗退≒引退、では技術や経験を先輩からじっくり聞く機会はなかなかないもの。そのメリットは大きいでしょう。

最後の公式戦が終了した時点で新チーム体制は作ったうえで、最上級生も通常は参加。任意者は週3回、完全引退など選ばせるという形が理想。

受験対策といっても、授業後まっすぐに帰宅したところで間髪入れず勉強に取りかかり、勉強量が上がる人はそれほど多くないはず。

今までのリズムで現役時よりも精神的には楽な状況で体を動かし帰宅。そこから勉強に取りかかるほうが気分転換もできて集中力も増す可能性がありますよね。

勝利至上主義でなくオーバートレーニングやリハビリ不足の状態での出場を禁止

どう規定するかは難しいですが、ろくにリハビリもせずに痛みが軽減した段階で「本人の意思により」プレーさせる、というのを禁じてしまおうというもの。

無理やり出場させる指導者は今それほど多くないと信じていますが、もし「最後は自分の判断で決めろよ。行けるか?」といった質問をしている指導者がいるとしたら、その質問をすること自体が卑怯だしナンセンスです。

一生懸命にスポーツに打ち込んできた選手で、その質問にNOと答える子を今まで弘田は見たことがありません。

この時期の子供たちの将来を考えて、リスクがあれば必死に彼ら、彼女らとその「保護者」を説得し止めるのが本来の姿でしょう。

中学の時期は発育発達の観点から個人差が大きい時期でもあります。オスグッドに代表される成長期特有の痛みもでやすいため、慎重を期す必要がある時期。

ガイドラインを作り、勝利至上主義から脱却することが大切でしょう。

 

文部科学省レベルで行えること

学校全体を管轄するトレーナー(ディレクター)予算を捻出する

義務教育費国庫負担金(小学校・中学校などの先生の給料の3分の1を国が負担するためのお金)の一環として、予算を捻出するという提案です。

学校の規模にもよりますが、実績のあるアスレティックトレーナーやS&Cコーチが学校全体のスポーツ部のディレクターとして管轄するわけです。

イメージとしてはアメリカの体育系大学におけるヘッドアスレティックトレーナーやS&Cディレクター。このディレクターは、4月の始業前に各部活を管轄する教員と共に、一年間のトレーニングプラン及びガイドラインを作成。

練習の流れや量、痛みのチェック、リハビリの方針などを明確にすることにより、スポーツ障害保険の利用が抑えられる効果が期待できます。

少数の指導者に見られる、我流の指導法やアプローチに対する抑止力になるうえ、従来よりも各部活間での交流や統合性が見られて横のつながりも強くなるはずです。

その結果、一年生の学生などがそのスポーツが合わないと思った際にも違和感が少なく転部が可能になるというメリットもあります。全てのスポーツ部の大きな流れは同じディレクターにより作成されていますからね。

常勤ではなく週1回程度登校するイメージで、これであれば報酬も月数万円で済むはずです。後述するインターントレーナーの出勤するタイミングとできるだけ重なるように、ディレクターにも部活観察をしてもらうようにします。

 

毎月少額の部費を徴収し外部トレーナーを週2回雇う

スポーツ部に参加する生徒から毎月部費(500~1000円程度)を徴収し経験を積みたい若手トレーナーのインターンシップを週2回雇うという提案です。徴収した部費を基にインターントレーナーへの交通費に充てるのです。

ここには弘田の持論も入っているのですが、完全な無償ボランティアではトレーナーに必要な覚悟や責任は育ちませんし、継続的に関わる事が難しくなります。

有償(交通費支給)の代わりに「義務」として、ディレクターへのレポート提出を毎週行うシステムを確立。全スポーツ部を管轄しなくてはいけないディレクターが目に届かない問題点や雰囲気を、各インターントレーナーから情報として吸い上げることができます。

若手トレーナーにとっても経験豊かなディレクターから直接フィードバックを得られる貴重な経験を積んでいくことができるので一石二鳥の効果が期待できます。

そして部活に打ち込む生徒にとっては、悩みを相談したり痛みを伝えたりというきめ細かいフォローを受けることができて、安心して部活に打ち込める環境づくりができる。これが最も大きなメリットになります。

机上の空論にはしたくない

日本における各省庁が独立している問題点は、国の全体論で話が進んでいかないところでしょう。弘田の提案も文部科学省だけを考えた場合、予算が膨らんでしまうわけですから。

しかし国全体で考えた場合、ジュニアスポーツを行っている学生の外科手術の総数は劇的に減るはずですし、整骨院など地元の治療院で保険診療を受ける申請も減るでしょう。

超高齢社会になった現在の日本を考えた際、国全体が「治療」から「予防」に方針をシフトする必要があるのは間違いがありませんよね。予防への投資という感覚が一般化すればいいのですけれど…。

 

現場で頑張っている教員の方も多く知っていますので、部活問題がきれいごとでないのは分かっているつもりです。

中学生の子供を持つ親として、トレーナー業に携わる専門家として、自分なりに机上の空論ではなく現実に行えることは何かを今回考えてみました。

こういったシステム化が試験的にでも行われていけば目に見える結果も出るでしょうし、専門性を持ったトレーナーの新しい雇用の形も見えますよね。

 

まとめ

 

しかしこういった取り組みをスタートさせたい私立中学の校長先生や、文部科学省の偉い方、いないかなぁ…。もし興味があるようであれば、喜んで協力させていただきますのでお声がけ下さい!

掲載当時、こんな内容を書いていましたが2017年3月。

松野博一文部科学相が記者会見で、外部人材が中学や高校の部活動を指導したり、生徒を大会に引率したりできる「部活動指導員」を4月から制度化することを発表しました。

生徒の技術向上が見込めるうえに、教員の業務負担軽減が望めるとして効果が期待されています。ただ実際に運用する中で、まだまだ課題は多いようです。

現場のニーズに即して細かい修正を行い、本当に役立つ制度へと昇華していってほしいもの。個人的にも、今後の流れに注目しているところです。



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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。
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