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疲れても膝に手をつくな!からわかること

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本日は「疲れても膝に手をつくな!からわかること」というお話をします。

スポーツの世界、特にチームスポーツの世界では長らく徹底されてきた日本の文化があります。

それはいっぱい走って疲れたり、少しレストが取れるタイミングのとき。

ハァハァと息が苦しくて膝に手をついて下を向いている選手がいた場合に、「おい、下を向くな!膝に手をつくな!相手チームに弱みを見せるな!」というものです。

「顔を上げよう!苦しい素振りをするな!」と声を掛けて、選手は一生懸命に何とか顔を上げる。しかし顔を上げても、もうどうしても苦しいので両手を頭の後ろに回し、肘を張っている選手の姿を見たことがあると思います。

昭和生まれの私としては、これ自体はすごく良く分かります。こういったことをよく聞いてきた世代なんです。

ただ、最近の研究結果で面白いものがありました。実は、膝に手をつく動作をすることによって、より効率的に呼吸を整える作用があることが示されたそうです。

実は効率的な「膝に手をつく姿勢」

すごく肺が苦しい、呼吸が苦しい時に、両膝に手をついて背中を丸め、腰を曲げてハァハァと下を向いている状態、脊柱を屈曲した姿勢では横隔膜と胸郭の間の表面積が最大化されるわけです。

重力に対して直角に入っていくということもありますが、最も酸素交換を効率化していく姿勢になるそうです。

マラソンで走り終わった後、すぐに倒れてしまうパターンもありますが、立っている状態だと両膝に手をついて、下を向いてハァハァ…

そこにタオルを掛けられるという姿はよく見ます。誰に教わったわけでもないはずですが、あの姿勢を取るということは、楽だからなのです。

我々は自然とやっているからこそ、あの姿勢には合理的な体のシステムがあるというのは分かる気がします。なので、ある意味、あの姿勢を取ることは合理的だと判断することもできます。

こうなってくると、伝統的な習慣やチームとして統一した意図を持った強がりも含めた文化と、それに対して明らかになった新事実、はっきりと数値化されたり、研究で証明された事実という二つの軸ができるわけです。

伝統と科学の二極化になりがち

今までにも同じようなことは結構ありました。古くは「水分補給」がその典型的なものです。

私が中学生ぐらいまでは、夏場でどれだけ暑くても練習中に水を飲むことは禁止でした。今、考えてみれば禁止だった意味自体が分かりませんが、とにかく飲めませんでした。

泥だらけの手で顔を洗う振りをして、水を飲んだことがある人は多いと思います。プロ野球とかでもそうでしたから、昭和50年代くらいはそういう時代でした。

その後で言えば「アイシング」もそうです。スポーツ選手は体を冷やしてはいけない、氷につけるなんてもってのほかだ!という時代が実際にありました。

それこそ、東京ロッテオリオンズの村田兆治投手が、アメリカで行われていたアイシングをそのまま取り入れて、氷水を入れたバケツに肘を突っ込んでいて、何をやってんだ、クレイジーだなんて言われた時代があったわけです。

今はむしろアイシング信仰者というか、もう何でもかんでもアイシングするという文化も出来すぎていて、これはこれで問題となっている部分もあります。

これらも初めは「伝統的な習慣」対「明らかになった事実」という構図で、喧々諤々と話し合いをする場が持たれたわけです。

しばらくは伝統が幅を利かせる、そしてある地点を潮目に突然、新しく証明されたものが著しく採用されていくというのが、日本のスポーツの傾向だと思っています。

ですが、私としてはどちらもバイアスに捉われすぎなのではないかと懸念していて、少し冷めた目でみている部分があります。どちらも思考停止に陥っている感じがして、もう少し状況に応じて、より良い方を選んでいけば良いのではないかという風に考えています。

正解思考ではない幅を持とう

例えば、疲れても膝に手をつくなということは、結局正解があるわけではないと思っています。膝に手をついてハァハァとやっていた方が数パーセントでも呼吸を整える効果があるとなれば、それをやること自体は悪くないです。

私が所属するラグビーチームでこの話が出た時に、意見が人によって全然違いました。そして結構、みんな熱くなります。

なぜかというと、やはり信じてやってきたことが否定されたような気がすることもあります。一方で合理主義な選手だと、「良いと分かったのであれば、なぜそれを否定する必要があるの?みんなでやればいいだけだろ?」となったりするからです。

この辺りは、特にラグビーですとバックスの選手は合理的な判断をしたがり、フォワードの選手は精神論というか、それでも頭をあげて目線を上げて顔を上げる方が大事だという選手が多かった気がします。

ポジション特性もあって面白いですが、いずれにせよ、チーム内でも意見は割れるわけです。ですが、これはどっちが正解という風に考えるとちょっと賢くないなということです。

合理主義の選手が敢えて膝に手をついているのに、精神面を重視する選手が注意をするのは違いますし、その逆もまた然りです。

大事なことは、チームとして全員で話し合いをして、意見の擦り合わせをした上で、チームとしての方針を打ち出すということでしょう。

うちはすごく合理的なことをやっていこうというチーム文化なんだから、苦しくて相手にトライされた時とか、自分たちがトライして少し休んでチームで話し合う時には、みんなで膝に手をついて少し下向きになりながら円を描くようにして、打ち合わせをしよう。

チームとしてそんな考えがマジョリティであれば、統一されている絵になります。それほど弱い印象は受けないでしょうから、私はありだと思います。

一生懸命に顔を上げている選手もいれば、うずくまっているような状態だったり、膝に手をついてずっと下を向いている選手がいたり…とバラバラだからこそ、余計その絵が苦しそうに見えるわけです。

膝に手をつくことで数パーセントは得かもしれないけれど、そんなことよりも相手に与える印象や、自分たちが強くありたいというカルチャー自体が大事だとチームとして判断したのであれば、全員が統一して頑張って顔を上げる。

アイズアップ、アイズアップと声を掛けて、目線を上げて一生懸命みんなで顔を上げていこうということを統一する。そうすることによって、チームとして弱みを見せない、我々は戦えるんだという意思を示したいのだなということが見えてくるので、これもまた良い効果をもたらすと思います。

大事なことは新しく分かった事実に対して、今までの文化との間に、どのくらいのリスクがあるかを考えるプロセスを作る、ということでしょう。

水分補給のケースでいえば、今までの練習中に水を飲むなというのは、温暖化が進む日本だけではなく、世界の状況を考えても、明らかに命の危険があります。

そもそも、ただの水分ではなく、しっかりと塩分を含んだ電解質を含んだ水分を取らないと命の危険だけではなく、筋肉が攣りやすい、怪我をしやすいといったリスクもあるので、新しく分かったことをより重視するべきです。

アイシングに関しては、回復遅延を念頭に置くべきです。アイシングをすれば徐痛効果(痛みを和らぐ)はあります。急性のときの炎症、強い炎症を抑える効果もありますが、長く、多くアイシングをやることによって回復自体が遅くなるというのも分かっています。

2日後にまた試合があるという時に、ずっと冷やしているというのは問題です。ある程度の回復を促さなければいけない場合には、短いアイシングですぐに離して常温に戻して、また常温に戻ってから少しアイシングをする。

こういった組み合わせを使ったり、アイシングに近い効果はあるが、ずっと冷やしっ放しの弊害がないようなマシンを使うといったことをやっていく必要はあります。

まとめ

今回の膝に手をつくかどうか問題というのは、それほどリスクがあるものではないですよね。

チームや監督・コーチの元で、みんなが統一した見解を持ち、その方向にみんなが合わせていくことが、一番現実的なのではないかと思いました。

私は科学(サイエンス)を重視すべきトレーニングの専門家ではありますが、俯瞰した視点から合理的な判断をするという価値観を持つことが大事です。

あなたはどう考えますか?

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。
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