所属チームの引継ぎ作業もほぼ完了。今月末が納会のため、残り少ない単身赴任生活を十分すぎるほど満喫しています。こんな時期になると積読になっていた本が一気に読めるもの。
昨年末に衝動買いした一冊が今、私が最も興味を持っているジュニアスポーツに関わるもの。「ドイツの子供は審判なしでサッカーをする」という秀逸なタイトルに惹かれて思わず手に取ったんです。
サッカーの名門として知られるドイツ。2000年のヨーロッパ選手権リーグ敗退をきっかけとして、それまでジュニアスポーツにまで蔓延していた「勝利至上主義」を返上。ドイツサッカー連盟(DFB)を中心とした改革が始まったそうです。
子供たちは何のためにサッカーをしているのか。上手くなること、勝つことは大切ですが究極はサッカーというゲームを楽しむためにグラウンドにきている。これ、大前提であり最も大切なもの。
サッカーだけに限りません。日本のジュニアスポーツにおいて当たり前のこの欲求を最優先にプレーできるところって、どれほどあるでしょうか。
指導者一人一人の問題というよりも、もっと大きなシステムとしての取り組みが必要になること。
この本を読むことで、たくさんの人間味あふれるエピソードとDFBの具体的な取り組みをイメージすることができました。子供たちの「やりたい!」をサポートする改革が夢物語ではなく実際に出来うるものであること。そう思える良本です。
著者が暮らすフライブルク地方では、今U9年代までの大会では審判なしという新しい取り組みが始まったそう。正にその事実が本のタイトルになっているわけですが、「確かにそれぐらいでいいのかもなぁ…」と納得してしまいました。
著者と同世代のアラフォー世代の私。当時はまだまだ人気スポーツといえば野球が一番。
小学校が終わりランドセルを家に置くと、金属バットとグローブ、C球を持って近くの公園へ。早いもの順で正方形のグラウンドの四つ角を奪い合い、狭い敷地で3試合同時に行われる、というのが日常茶飯事。
当然審判なんていないので、お互いで勝手にストライクやボール、アウトやセーフを判定。言い合いになる事もしょっちゅうでしたが、基本そんなことはあまり関係なく、とにかくどんどん試合をしていたものでした。
10歳前後まではそれで充分、ワクワクドキドキ楽しかったもんなぁ…
夢中になって取り組むなかで、必要なルールを自分たちで考えて一生懸命に楽しむ。プロセスをひっくるめて、それこそかけがえのないことなんですよね。
この章の最後で著者の中野さんの締めくくりが印象的でした。
[box class=”yellow_box” title=”本より引用”]「主体性を持たせたいから、サッカーなどのスポーツをさせる」という親御さんも少なくありません。しかし、「大人がやらせて身についた主体性」は本物でしょうか。大人が考えるべきは「子どもの育て方」ではなく、「子どもの育ち方」なのです。[/box]
…うん、間違いないです!
タイミングを同じくして、為末大さんが挙げたブログ記事の内容(「人の学びを待つということ」)がこの本とリンクしているような気がしました。
立派なことを言っているように聞こえるかもしれませんが、私自身、一人の父親として娘たちへのアプローチは試行錯誤の繰り返し。
リスクや失敗を先回りして、子ども達が自ら体験し考え学ぶ経験の芽を摘んでいるのではないか。自主性を育めるような環境を作り、見守ること。難しいけれど、それができればいいなぁ…としみじみ思っています。
第4章の「子どもの『思いやる力』を育む」は特に日本の保護者の方に読んでほしい内容でした。
「夢」という言葉に潜む落とし穴や、親の過剰な期待がエゴやプライドを生んでしまい我が子に重圧を与える悪循環に胸が痛くなったり。
雨の日の試合で足を取られた相手選手が滑り、自チームの選手にぶつかり怪我をさせてしまったエピソード。
心配そうに駆け寄り自チーム選手をチェック。大きなケガでないことを確認するとアシスタントコーチのその子を任せて、すぐにケガをさせてしまった相手選手のもとに駆け寄り、「大丈夫だよ。わざとやったファウルじゃない。心配するな」と優しく抱き寄せてなぐさめた監督の姿勢。
当たり前のようでなかなか文化まで昇華していない日本の現実を考えさせられたり。
押しつけがましさは全くなく、すっと内省の気持ちにさせられるような愛情にあふれた本でした。いいタイミングで素敵な本に巡り合えたな~、と勇気づけられた一日となりました!
・スポーツをする子どもを持つ親、指導者にはぜひ読んでほしい本
・「本当の自主性とは」を考えさせられる
・ドイツのサッカーシステムを直に見たいなぁ