気がつけば15年を優に超え、トレーナー業としてそれなりに中堅どころになってきました。個別に相談を受けたりアドバイスをする機会も増えました。
そんな機会によく伝えるのが、「姿勢や動きをみる、というのは勿論大切だけど、そもそも人を観察をすることがもっと重要なんだよ」ということ。
あくまでも経験的なものですが、トレーニング中によく靴紐がほどけている男性は、大雑把なだけでなく社交的な方が多い。
上下同じウェア(メーカーが違ったとしても)でトレーニングする方は計画的な傾向。
夏でも半袖のTシャツを着ない女性は警戒心が強い。決まった場所でトレーニングをしたがる会員さんには、適度な距離感を保つと心地よい時間を過ごしてもらいやすい。
観察をすることが習慣化すると、実際の測定やスクリーニングする際に既に多くの情報を持っていることになります。ジムで働いているのであれば、施設入館の際の扉の閉め方やカードの出し方、目線、歩くリズム。これらも全て評価対象になっているわけです。
要は「一人一人に興味を持って観察する」というのをどれだけ行えるかが大切なんです。
天気が良ければ公園やそれなりに人が集まるところに行き、ぼーっとするのもぜいたくな時間の過ごし方。私は用事の合間などにはベンチに座り、30~40分ヒューマンウォッチングをすることもあります。
大阪では、公園に座っていると、小さな子供や仲睦まじいおじいちゃん、おばあちゃん、そして関西らしい個性豊かな方がたくさんいて、気分転換になります。…私自身は仕事は関係なく、人の様子を見て観察し想像するのが好きなんでしょうね。
今まで試したことがない人は、「ヒューマンウォッチング」というのも個人的にはおススメのトレーニングです。
さぁ仕事、というときに、いきなり洞察力が向上する、なんてことはありえません。何事もまずは圧倒的な量をこなしていくことで、それが質に転化するはず。
電車に乗っていてイヤホンをつけ、ずっとスマートフォンをいじりながら、窓の外の風景も、隣で立っている少し静的動揺の大きな同世代の男性にも、一瞥もくれないようなトレーナー。
…こんな人物が専門家として伸びないであろう、ということは至極当然だと思いませんか?
目の前のクライアントの問題を解決するのが、そもそもの自分の役割。当たり前ですがそれは別に「コンディショニングコーチとして」、「アスレティックトレーナーとして」である必要はないですよね。
専門家としてできることは限られているし小さいもの。専門家としてではなくても、社会人として、40を過ぎた人間として、目の前の人の助けになるのであれば、それが目的に対する手段になるんです。
私も習志野のタチリュウジムでのパーソナルトレーニングで90分ひたすらお話を聞く、というセッションを持ったことが数回あります。涙を流してお話しする方もいらっしゃいましたが、本当に感謝してくださいました。「ああ、自分の仕事は相手の役にたつことなんだなぁ…」と気づかされたいい思い出です。
まずは人に興味をもつこと。そうでないと、アスレティックトレーナーだろうが、S&Cコーチであろうが、近い距離で人と関わる今の仕事はきついはず。興味を持って、優しい感情を忘れずにその人の気持ちや思いを推察する。
そしてヒトではなく人間を見て、観て、診ていけるようになるといいですよね。
・学んできたテストや測定法が「人を評価している」と考えるのは狭小な考え
・一人ひとりの生身の人に興味を持ち、観察をするという量を増やしていこう
・専門性だけでできることは少ない。目の前のクライアントの役にたてばそれでいい