ラグビー公式戦の登録メンバーは23人。スターティングメンバー15人と控え選手8名です。
ラグビートップリーグチームでは1チームでおよそ45~48名ぐらいの選手を抱えていますが、約半分の選手のみが試合出場登録をされるわけです。
試合メンバーと試合外メンバー。実はこれ以外にもう一つカテゴリーがあるのを知っていますか?
ラグビーにずっと関わっている選手にとっては常識。「バックアップメンバー」という選手たちが存在するんです。
緊急事態用の人材、バックアップメンバー
万全の状態で臨むのが理想的ですが、長いインシーズン。ときには怪我をおしての出場を余儀なくされる選手も出てきます。
もしくはいい状態だったにもかかわらず、試合直前の練習で足首を捻挫してしまったり肩を脱臼してしまったり。
23人のメンバーのうち、急きょ出場ができなくなるケースが年に何回かあるのです。
そのときに必要となるのが「バックアップメンバー」。控え選手が先発に回り、バックアップメンバーの一人が控えの枠を埋める。
プロップと呼ばれるスクラムを一列目で組む「THE専門職ポジション」の負傷者が出た場合など、バックアップからいきなり先発出場を担うこともあります。
試合開始15分前で先発出場となり最優秀選手賞をとった選手も
私がラグビーの世界に初めて飛び込んだ2014年。公式戦直前の練習でフルバックの選手が急性腰痛(ぎっくり腰)に。急きょバックアップメンバーだった坂本和城選手が、そのままフルバックで先発出場。
「俺の試合用のグローブ持ってきて!」と他の選手に声をかけて慌ただしく準備。10分後の選手入場直前に合流してすぐにキックオフ。
大丈夫かな…?と心配して見ていたら大活躍でチームの勝利に貢献。その試合のMan of the Match(最優秀選手)に選出された、というネタみたいな話がありました。
その年限りで坂本選手は引退したのですが、私にとっても思い出に残っているエピソードの一つです。
公式戦中の「縁の下の力持ち」
バックアップメンバーが急きょ登録されて試合メンバーになる、というのは年に1回あるかどうか。限りなく低い可能性に備えて、それなりに気持ちも体も準備はしなくてはならない。とても難しい立ち位置です。
遠征の際はバックアップメンバーが試合前の強度の高い練習のパートナーになり、試合後の後片付けにも入ってもらいます。
正に公式戦中の「縁の下の力持ち」なんです。
大学レベルまでは皆、主力選手として活躍してきたメンバーばかり。なかなか脚光を浴びることがなく、精神的にもきついと思いますが、献身的にチームのために頑張っている姿は頭が下がります。
難しい週単位での調整
ストレングス&コンディショニングを担当している私としても、バックアップメンバーの調整が一番頭を悩ますところ。
ざっくり言うとメンバーは試合に向けてピークを作る調整をすればよく、試合外メンバーは「試合を行うメンバーの強度や量」をプラスした強化を週単位で計算して実施していけばいいわけです。
それに対してバックアップメンバーは「試合に出る可能性のある試合外メンバー」。試行錯誤を繰り返していますが、試合前日は基本、試合外メンバーの練習には入れないようにしています。
私としては、常に試合外メンバーの練習には参加させて、今後公式戦出場のチャンスがあった際にフィットネス面でずっと試合に出ていたメンバーに見劣りしない状態を作ってあげたい。そう思っています。
しかし多くのバックアップメンバーにとっては、前日トレーニングで体が悲鳴を上げている状態で千載一遇のチャンスが訪れたとき。
既に体が疲れている状態でプレーをすることで後悔したくない、という気持ちが強いわけです。
プロップやスクラムハーフなど専門性の高いポジションは、どうしても同じメンバーがバックアップメンバーに選出されがち。何週間か続くと、彼らだけがチーム全体の中で練習の強度・量共にぐっと低くなってしまいます。
それを避けるために、休み明けの初日にランニング系のフィットネスをプラスすること。
そして公式戦のウォームアップが終わった後、10分弱の時間を利用して高強度のサーキットメニューを行うようにしています。
これでも総量としては足りないですが、少しでもカバーをしていくために課しているんですね。先日もこんな感じでサーキットを頑張っていました。
まとめ
時間的な制限も含めて、大変なポジションであるバックアップメンバー。試合外メンバーの中でも限りなくメンバーに近い選手達でもあるので、チャンスが目の前にあるという捉え方もできますが、心身ともに大変な位置。
公式戦のフィールドに飛び出していく選手のそのすぐ近くに彼らの存在が常にある、ということを一人でも多くのラグビーファンに知ってもらえれば嬉しいなぁ。
それではまた、お会いしましょう。弘田雄士でした。
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YUJI HIROTA
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