全ての選手やトレーナー、コーチに『真・善・be』を
トピック PR

時間の概念は担当スポーツや属性によって大きく違う!トレーナーが押さえておきたい「現場特有の常識」

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

転職をしたことがある方にとっては、「え、ここではそれが常識なの?」
と驚いた経験が、一つや二つはあるのではないでしょうか。

スポーツ現場に携わるトレーナーにとっては「時間の概念」がまさにそれです。

今回は担当するスポーツや、属性によって違う時間の概念について考えていきましょう。

競技によって違う時間感覚と濃度

まずは担当する競技スポーツによって起こるであろう、時間間隔の違いについて書いていきます。

社会人野球の指導の際に感じた練習時間の長さ

先日久しぶりに社会人野球の練習に参加した時に普通に感じたこと。それが、
「野球の練習って長いなぁ…」
というものでした。

長年野球一筋であり、コンディショニングコーチとしても野球現場にどっぷりだった私。
正直、典型的な野球の練習スタイルや練習時間に何の疑問を抱いていませんでした。

それが所属していたプロ野球チームに、ボビー・バレンタインという外国人監督が
就任したことを機に、意識は大きく変わりました。

合理化が徹底され、『短く集中して』という文化が構築されたのです。

ああ、こういった工夫をすることでトータルの時間は大幅に短縮させるし、
集中力も維持できるなぁと2004~2005年頃は感心したものでした。

2014年春には、渡辺俊介投手に同行してアメリカ、フロリダ州の
ボストン・レッドソックスのキャンプにも参加。

休みはないのものの、練習時間は9時からスタートし遅くても13時には
完全にフィニッシュ。

その後は家族とゆっくりと時間を過ごすアメリカのBaseballスタイルにも、
ずいぶんと感銘を受けました。

 

社会人ラグビーの練習の短さと濃度

ところが2014年のシーズン途中から所属した社会人ラグビーチームに
合流した後、野球との文化の違いに衝撃を覚えました。

ウォーミングアップ時間を10分もらっていたのですが、予定時間を1分半ほど
オーバーしたときのこと。

外国人の技術コーチが顔を真赤にして、
「時間内にアップを収められないのか!」
と怒り始めたのです。

日本人のコーチからも、穏やかな口調ながらも
「チームアップを8分に出来ませんか?」
といって2分カットするように依頼されたり。

練習時間に対する概念が全く違ったんですよね。

社会人ラグビーでは、当時の日本代表監督だったエディー・ジョーンズ氏の影響もあり、
どのチームも練習は「Short&Sharp」が基本になっていました。

練習時間は90分から長くても2時間。

もちろんこの時間以外に、30分から45分ほどのストレングストレーニング
セッションや20~30分程度のスピードセッションが設けられています。

しかし、チーム練習との間には1~3時間ほどの休息時間があるのです。

ガッと集中して1つのセッションを行い、きちんとレストを入れたうえで
また次のセッションを全力で行う、という風潮なんですね。

その間、どれだけ試合強度を越えるワークレート(1分間に平均でどれくらい動くか)や、
High speed distance(総走行距離中、どれくらいきわめて速いスピードで走るか)を
出せるか、が重視されているのです。

GPSがより高機能になり、実践的なデータが集まってきたことで、
実際のラグビーの試合時に必要な強度やスピード、ワークレートや
トータルの走行距離などが明確化。

2018年現在はその数値を基にして効果的な練習を行っていこう、
というのが一般的な社会人ラグビーの方向性でしょう。

必要とされるワークレートを為すためには、特に練習間の時間の
マネジメントなどが重要。

本当に分単位で練習プログラムを決めていく方が効率であり、
自然と時間に対する意識が高くならざるを得ないのです。

 

時間が決められているスポーツと無制限のスポーツの大きな違い

短くシャープに!というラグビーに対して、野球はダラダラとしないで、
集中して行おう!といっても、もともとが時間無制限のスポーツ。

北海道日本ハムファイターズの中島選手のように平気で10球以上
ファールで粘るような野手がいたり、5点以上入るビッグイニングがあったり。

5回終了時点で2時間を越えるような展開もざらにあるわけです。

練習で効率的な練習を確立したりプログラムを簡素化しても、
1分2分をマネジメントするような感覚までには至らない理由。

それは、もともと野球のゲーム構成が時間無制限であることが
大きいと感じています。

キャッチャーのように、投球を捕る、キャッチングやスローイングの練習、
走塁練習、自身の打撃練習とすべきことが多いポジション。

彼らはキャンプ中などはどうしても長時間練習になりがち、
という違いも大きいですしね。

 

スポーツ種目によって選手の意識も違う

面白いのは、実際に練習を行う選手たちやスタッフの意識。

やはり文化というのは大きいもので、違うスポーツの時間に対する常識の
違いに興味津々だったりします。

野球の現場に耐えられるの?

知人のトレーナーとの会話の中で、素朴な疑問として挙がったのが、
「ラグビーの時間間隔に慣れてしまった今、果たして野球の現場の
お仕事をする機会があった際、適応できるのだろうか?
というもの。

当たり前のように朝から晩まで、365日のうち330日ぐらいは、
野球漬けの仕事をしていた10年前。

私自身、今となっては当たり前のようにそんな生活ができるか、
というと甚だ疑問です…

 

短すぎて不安にならないの?

なるほどなぁと感じたのは、社会人野球の選手たちが口々に、
「ラグビー選手たちって週4~5回で2時間ぐらいしかチーム練習
しないで、不安にならないんですか?
と言っていたこと。

中学や高校時代から積み重ねてきた、基礎スキルはある程度
確立されているわけで、私が見ている感覚では全く問題なし。

もちろん体を休めている時間にも、リコンディショニングとして
回復に努めたり、編集された練習映像をチェックして
ミーティングをしたりは行っています。

要はどれだけ能動的に、技術やチーム力向上のために
自分で動けているか、が大切なんだよなぁと改めて
気付かされたりしています。

 

クラブチームや部活でのスポーツのケース

プロスポーツや社会人スポーツの例を挙げましたが、
クラブチームや大学・高校といった部活動でも、時間に
対する概念や練習時間の長さはずいぶんと違うでしょう。

 

競技特性に関わらず限られた時間であることも

ラグビーの名門となったT大学。今まで関わってきたラグビー選手の
中にも、T大出身の選手が数名いました。

彼らが口々にいっていたのは、
「大学時代の練習量は半端なかった!今では絶対できない」
という類の台詞。

学生としての学校との関わり方や、学校方針、専門グラウンドの有無などに
よって、一概にラグビーだからといって、短くシャープに!というわけでは
ありません。

名門と言われるある県の高校野球チームは、限られた敷地の中でグラウンドを
広く使える時間は1日の中で30分ほど。

曜日ごとにテーマを決め、そこで打撃練習や、内外野の連携プレーなどを
短期集中で行っています。

勉学にも力を入れていて、試験2週間前からチーム練習はなし。
それでも毎年、ベスト4にはコマを進める強豪校となっています。

 

トレーナーが知っておくべき時間の概念の違い

時間は有限であり、どんなものよりも大切な要素であること。
トレーナー業に関わる我々はそのことを常に肝に銘じて置く必要がある。

言うまでもありませんよね。

しかしもう一歩踏み込んで、自分が関わる現場における
「時間の概念の常識」を理解しようとする意識が大切です。

こちらも併せてお読みください→職域から考えるトレーナー業界で生き残るために必要なストーリー

その現場の時間概念を知る=いい仕事をするための必要要素

前述したように、社会人スポーツであっても90分の練習が
いつもより長いと感じる現場もあれば、短すぎて不安
という現場もあるわけです。

いち早く「その現場での時間に対する共通概念」を見つけ出し、
その感覚に即して自分の業務を創り出していかないといけません。

ストレングス&コンディショニングが専門である私のようなトレーナーは、
チーム練習内で行う強化プログラムの導入の仕方にも工夫が必要です。

アスレティックトレーナーでは、応急処置に必要なアイテムは、
時間概念の短めのチームではより多く持参することになるはず。

トリートメントやトレーニングの必要性を監督やヘッドコーチ、技術コーチに
プレゼンする際も、内容もさることながら「どれぐらい効率的に行えるか」を
強調して提言するべきでしょう。

外国に留学した際、その国の言葉と文化を理解していくことと同様に、
そのチームが持っている常識を肌感覚で理解していくのが、時には専門知識
よりも大切なんですね。

 

敢えて時間に関する意見をいうことも大事

勘違いしてほしくないのは、「その現場ルールに合わせなくてはいけない」という
ことでは全くない、ということ。

なぜチームスポーツが、一定の頻度でコーチやスタッフを入れ替えるのか。

ある意味、そのチームの伝統にとらわれず外部の血を入れたいからという
側面もあるわけです。

その現場が持つ時間概念、というのは特に変化させるのに抵抗が大きい要素です。

ネガティブな反応をされることも多いですが、
「これ、合理的じゃないなぁ」、
「いやいや、どう考えてももっと量こなしてもらわないと効果がないよ…」

そんな風に感じたら、わざとちょっと空気が読めない雰囲気で、
練習のやり方の工夫や、練習時間を延ばすことを提案していくべきです。

いずれにせよ新天地でスポーツ現場に関わることになったら、まず掴んで
おきたいのが、現場に流れる時間概念の常識。

ここを意識するだけで、どう立ちふるまい、どんなアイディアを出していくかの
精度は大きく変わりますからね!

まとめ

時間概念の違いに気づくことができたのも、複数のスポーツにどっぷりと関わり、
様々なレベルや属性のチームを見てこれたから。

たくさんの現場を経験するってやっぱり大切だと改めて感じています。

今後、ラグビーや野球以外のスポーツ現場に関わる仕事をさせていただく
場合でも、こんな新鮮な文化の違いを感じることがあるんだろうなぁ…
と楽しみだったりします。

飛び込んでみないとわからないことってたくさんありますからね…

今回はラグビーと野球を例として、スポーツ現場における時間の概念の違いに
ついて書いてみました。

 

*記事が気に入ったら、下方向↓のバナー「いいね!」や、はてなブックマークをお願いします

The following two tabs change content below.

YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。
ABOUT ME
YUJI HIROTA
アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。