最近、メインで見ているのはラグビ
ー選手たち。
彼らを見ていると、多くの選手が上
半身のトレーニングを行う際に、肩
の可動域が出ないのが気になります。
オーバーヘッド動作では常にシュラ
ッグ(首を縮んだ状態)をしてしま
ったり、ものすごく腰を反っていた
り。
ガチッ!!と首周りが固まっている
んですよね。
結果として、胸鎖乳突筋や斜角筋の短
縮を引き起こします。
胸郭出口症候群のような神経症状を訴
える選手も結構な数いるのです。
特にスクラムを組んだり、コンタクト
の機会が多いフォワードによく見られ
る傾向。
肩の可動域は狭くなっており、腰に
かかる負担も大きくなるのは、ラグ
ビーあるあるですね。
「これだけ代償動作が出ているから、
肩のコレクティブエクササイズをプ
ラスしないとなぁ…」
そう考えるのは至極当然。
でも、肩の可動域を邪魔している一
番の原因は、首の動きが制限してい
るから、ということもあります。
こんな状態の選手たちに、いったい
どんなふうに指導をしているのか、
具体的にいくつか紹介しましょう。
最も簡単な首の調節はしっかりと
深呼吸ができるように促すことで
す。
仰向けになり、両膝を立てた状態
で口から息を吐ききらせる。
深呼吸がうまくできない選手は、
この時点で、腰を反らせて酸素を
取り込もうとしがち。
床と腰の間に隙間ができないよう
に、自分の手を入れて、そこを軽く
抑えつけるように、指導するのも効
果的でしょう。
そこから5秒かけて鼻から息を吸い込
ませて、10秒かけて口から「細く」
息を吐き出す。
正しい呼吸によって横隔膜の動きが出
てくるはずです。そうすると胸郭の動
きが引き出されます。
それほど首を意識しなくとも可動域が
広がり、結果的に肩の動きにも変化が
起きます。
特に肩の内転・内旋動作はわかりやす
く広がるはず。
ビフォーアフターでぜひ一度比べてみ
てください。
今回紹介した方法で、なかなかうまく
できないような重症なケースでは、
膝を軽く曲げ、壁に両足の裏をつけた
状態で、左手で風船をもたせ、首を
「長く」した状態で口から風船をふ
くらませたり、というのもオススメ。
PRIで学んだことの応用ですが、腹圧
を正しく入れるのに効果的です。
コレクティブドリルを用いて、頸部
回旋の可動域を出していくものを行
わせるケースもあります。
よく使うものが、肩を下制、内転
させた状態で、首を回旋させるもの。
フラットベンチに座った状態で、
後ろ手でやや重めのダンベルを
持つ。
自然と肩甲骨下制を促した状態
で、肩甲骨の内転をキープ。
「パッキング」と言われるテク
ニックですが、この姿勢を保持し
た状態で、首を右or左へ最大限回
させます。
この際、息を止めないように要注
意。
息を優しく吐きながら、目一杯回
して、行ききったらそこで深呼
吸を4~5回繰り返します。
左右ともにこれを行った後、2回
目は首を最大限回旋させた後、
更に腰を最大限回していきます。
この際も肩甲骨の内転がほどけな
いように要注意。
ちょっとわかりづらいですが、画
像をご参照ください。
これは最終手段に近いですし、必
ずストレッチの後には、選手本人
で自ら動かすような自動運動をさ
せる必要があります。
2000年前後からの長年の習性か
ら、つい手技を使った関与をし
がちである悪い癖が出ないよう、
私自身は自戒している部分です。
2010年以降広まった、機能的な
動きづくりの基本として、まず
は自身のモーターコンロトール
を利用したアプローチに目を向
けること。
これが大切です。
1や2はとてもシンプルな方法では
ありますが、「身体部位の相互依
存」というのを実感として理解で
きる変化です。
肩の動きが出ないから、肩にアプ
ローチする、という方法が悪いわ
けではありませんが、大きな原因
として肩が問題ではないと判断し
た場合。
可動性-安定性の関係から、まず
は近い関節である首や胸椎、腰椎
などに着目する、というのは実践
的な考え方でしょう。
ラガーマンに見られる典型的な肩
の動きが出ない選手に対して、こ
ういったアプローチを試すだけで
なく、「なぜこんな動きがイン
プットされているのか」という
ことに目を向けましょう。
ラットプルダウンやチンニングなど
のプル動作では、力むあまりに顎が
突き出た姿勢になっているかもしれ
ません。
首を少し引き込んだ位置を教え、
頭と首の位置を正したりしましょう。
ランドマインプレスなど肩の外転
を伴う「突き出し動作」を行う際
に、胸椎の動きがうまく出ず首
が縮んでいる状態になっているか
もしれません。
グラウンドでのスプリント、あま
りにもアームスイングの引く動作
が非効率的で首の上下動が大きく
なっている場合もあります。
影響を与えている動作や姿勢が1つ
だけであることは、私の経験上ほ
とんどありません。
複合的に要素があるはず、という
視点を持ち、できるだけたくさん
の仮説を持つようにすべき。
常に自戒しつつ、業務を行ってい
きましょう!