すっかり慣れ親しんだ大阪の家。3年住んだマンションから運び出したのは10個の段ボール。多いのか少ないのかはわかりませんが、いよいよこの部屋ともお別れとなりました。
本日が近鉄ライナーズ2017-18シーズンの納会。明日には埼玉に完全帰京します。
2014年5月末に近鉄ライナーズに初めて足を踏み入れてから約4年。振り返ればあっという間だった気もします。毎年シーズンが終わるごとに感じる独特の虚脱感。今まで更新してきたブログと共に振り返ってみます。
実業団ラグビーの世界で初めて、辞めていくスタッフや現役引退をするプレイヤーなどを目の当たりにしました。野球とはスポーツが違えど落ち着かないし、寂しいものだな…と改めて感じています。
一期一会。契約社会の現場スポーツに籍を置くと、この言葉の重みを感じます。
引退を決めた、一人の外国人プレーヤー。身辺整理の為、必要な印鑑証明を取る必要があり、先日私も同行(当時は通訳補佐もしていました)。
ハンドルを握り前方を見つめたまま、「もう充分だって思ったんだ。」という横顔は、寂しそうでほっとして、今まで感じた事のない雰囲気を醸し出していました。
聞いていいものか、と思いつつも、「奥さんはなんて言ってた?」と尋ねると、「ほっとしたって言ってたよ。」と即答。「もうひどい怪我をする事もなくなるんでしょって。」と笑顔で続けました。
…その彼とも昨日、別れの挨拶とハグ、握手を交わしてきました。
フェイスブックやメールで世界は狭くなりましたが、このチームを通してでないと知り合えなかった、たくさんの人たち。もうこのメンバーが一同に介することはないでしょう。
そしてまた、新しい選手やスタッフが入り、同じ名前でチームは再編成され、新しい歴史を刻んでいくわけです。
選手と違い明確な引退の境目がない、我々スタッフ。それだからこそ、現場に携わる仕事をしている間は、自分自身も単年毎に緊張感を持ち、一日一日をプロとして過ごすべきでしょう。
それは社員の方ではない委託契約をするスタッフが持つべき覚悟であり、実は最大の自由なのだろうと思っています。
私が来季この場所に帰ってくるかはわかりません。
とりあえず様々な環境の変化の中で、2014‐15シーズンを近鉄ライナーズのスタッフとして、やり遂げた事。もっと出来たことはあったと思いますが、「修行だ!」と言い聞かせたりもしながら何とか完走できた事。まずは自分を誉めてあげたいと思います。
寮も花園ロッカーも全部綺麗に片づけました。3月半ばからここに戻ってくることがあっても、また新鮮な緊張感で1シーズン業務を遂行できるように。そして、今日がここに足を踏み入れる最後の日になっても、すぐにまた武器を拾うために走れるように。
まずは、お疲れ様でした。
2014-15シーズン終了後、近鉄に戻ってくる可能性は正直10%程度だと思っていました。私が希望を出していたオファーは「ストレングス&コンディショニングの専門家のリーダーとして」契約をしてもらうこと。
ラグビーの世界で1年足らずの実績の自分。常識的に考えれば難しい話であり、私としてもそれは認識していました。しかし関西という新天地で新たな経験を積むのであれば、その環境下でなければ意味がないと考えていたんです。
さまざまな他の環境因子も味方してくれて、私の希望が通った形で近鉄に戻ってくることができたのが2015-16シーズンでした。
昨晩、近鉄ライナーズの2015-16納会が終了。その後スタッフで慰労会。今季でチームを離れる、何人かのスタッフと別れを惜しみつつ、さよならをしました。
このメンバーで、一年やってきました。振り返ればあっという間。一期一会。ご縁があり、私にとっては家族より長い時間を共に過ごすことになった仲間でした。
時に口論になることもあり、意見が対立することも一度や二度ではなかったです。だからこそスタッフ、選手、会社とが一つのユニットとして、まとまりを持って過ごせた一年になったのだと思います。
自分の現場のキャリアの中で、最もやりがいがあり、充実したシーズンを過ごすことが出来ました。本当にありがとうございました。
別れ際の、好きな言葉があります。今季を持って、違う現場で働くことになる仲間たち。寂しいですが、そのメンバーたちにも、その言葉を送って、次の一年にまた挑戦していきます。
「また会いましょう。」
この年は16チーム中7位の成績。自分がヘッドコンディショニングコーチという名のもと、ストレングス&コンディショニング部門のリーダーとして先頭を引っ張った1年でした。
チーム成績は手ごたえのあるものでしたが、1年やってみてもっとできること、すべきことが明確になったと感じた年でもありました。
よし、ラグビーの世界でもっともっと役に立てる専門家になるぞ!と次のシーズンに向けて一点の曇りもない年の最後だったと記憶しています。
2017年2月8日水曜日。所属する社会人ラグビーチーム、近鉄ライナーズ納会が行われました。公式発表がまだなので詳細を伝えることはできませんが、この日を限りにチームを離れる選手も多く、2015-16シーズンよりも寂しさの募る会となりました。
…幸せでした。
やりきったので悔いはありません。
感謝と悔いが同居しています。
心血注いでラグビーに打ち込むことができました。
仲間に、スタッフに、家族に感謝の気持ちでいっぱいです。
これで終わりではなく次のステージがありますので、これからも変わらずに付き合って下さい。
そんな言葉を紡いでくれた退団していく選手達。…ただただ涙を流すのみで言葉にならない選手もいました。
いつか来る引退や契約満期での退団。それでも2016-17シーズンのチーム成績がもっと良ければ、この中の何人かは今季限りで近鉄を離れずに済んだのではないか。
最後の挨拶をしてくれる一人ひとりの言葉たちを噛み締めながら、寂しさだけでなく悔しさが込み上げてくる、つらい納会となりました。
このシーズン、引退する選手の一人が言った言葉がとても印象的でした。
「前に引退していった仲間が『皆の前に立ち、ここからの景色として仲間や家族、スタッフの顔を眺めると引退するんだ…って初めて実感しています』と言っていたけど、彼の言葉の意味がわかりました。自分もついにこの時が来たんだな…って。」
涙と共にそんな別れの挨拶をしてくれました。
いろいろな思いや覚悟を込めて、それを冗談や笑顔に包んで、選手は一年一年をグラウンドという戦場で戦っている。
そのリアルを感じた上で、自分自身が当事者として「その日」に向かっている自覚を持って現場に立たなくてはいけない。
納会参加後はいつもそう思いますが、今年は特にその思いを強くしました。
私も間違いなく近い将来、あそこに立ち皆の前でお別れの挨拶をする日が来ます。スポーツ現場のど真ん中に入り、仕事をしていく人間は皆必ずそうなんですよね。
その日、チームに残る選手やスタッフ達の正面に並び見える「あそこからの景色」が悔いなく清々しいものになるように。そんな風に一日一日を過ごしていきます。
前半から調子に乗れず苦戦が続きましたが、2勝4敗の状態から全く勝てないまま8連敗。最終戦にようやく勝利し3勝12敗で入れ替え戦へ。この入れ替え戦には勝利して16チーム中13位でフィニッシュ。
この年には数多くの選手が近鉄を離れることになりました。予想外だった選手の数も多く私自身のショックも大きかったです。
S&Cという一部門のリーダーである自分にも大きな責任がありましたが、近鉄からオファーをいただくことができました。「不退転」の気持ちで次のシーズンに見返してやる!という思いでした。
そんな3シーズンを通ってきての本日。忸怩たる思いですが、チームの結果は最下位。自動降格という最悪の結果となってしまいました。
たまたまシーズン開始した直後、「いずれにせよ今シーズンで近鉄を離れよう」と決心したものの、その思いがなくてもこの成績ではチームに残ることもできなかったと思います。
自動降格が決まった後のブログで自分の心情は整理しました。やってきたこと、自分の在り方に関して後悔はありませんが、とにかくチームスポーツは結果が全て。
前年の2016-17シーズン、引退の際に「ここからの景色として…」とスピーチしてくれたのは、バックスの松井寛将選手でした。まっちゃん(松井の愛称)の言葉を胸に、一点の曇りもない晴れ晴れとした気持ちで皆にお別れの挨拶をしたかったなぁ。
悔しいですが、これが自分の受け止めるべき近鉄での最後。最大限の感謝を選手とスタッフに告げてきます。