S&C系トレーナーとしての両輪である「評価」と「プログラム作成」

「トレーナー」。ざっくりと括るとそんな仕事ですが、私の専門分野はストレングス&コンディショニング(以下:S&C)というもの。

スポーツ現場において、グラウンドやジムで実際に選手と関わるS&C専門家としての土台となるものって何でしょうか。

今回は真面目にそんな話をしていきますね。

 

S&Cは究極「評価」と「プログラム作成」の両輪である

私は究極「評価」と「プログラム作成」という二つだと考えているんです。

「評価」と一口に言っても、日々行うコンディショニングチェック(Knee to wallやトーマステストなど)や、定期的に行う測定やテスト(スクワット1RMやYo-Yoテストなど)だけではありません。

現場におけるライブの選手の動きを観察していくことなど、含まれるものは様々です。

そして「プログラム作成」。これはクライアントの目的に沿った効率的かつ安全に順序だてられた「短期目標」とその「手段」から成るもの。

ゴールから逆算したこの道筋が明確になって初めて、伝えるべき優先順位に関して迷いなく一貫性を持った指導ができると考えているんです。

そして手段としての細分化されたスキルの中に、

・正しいデモを見せられる

・適切なタイミングでキューイングを与えられる

・漸進的過負荷の原則から適切なプログレッションをつけていける

こういった要素があるのだ、と解釈しています。

たくさんの要素を含んでいますが、そのうえでストレングス&コンディショニングコーチとして不可欠なものは、「評価」と「プログラム作成」だと考えているわけです。

 

「材料・素材」と「調理方法」だからどちらも偏ってはいけない

これ、料理に例えるとわかりやすいのではないでしょうか。

評価は、素材・材料。生ものである、傷んでいる部分がある、加熱すると栄養が逃げる、などの諸条件を考慮する必要があります。

プログラム作成は、実際の調理方法です。諸条件を踏まえた材料を並べ、望む料理に仕上げるためにスキルを駆使して様々な工夫をしていく。

この二つの要素は、両輪であり片方だけ独立して行う事って不可能なはず。比率こそあれど、常に心がけているのは、この二つの精度と専門性をバランスよく高めること。

入念な事前準備は大切ですが、臨機応変なアドリブ力と、選手やクライアントから全幅の信頼を得られる人間力が求められるスポーツ現場。

ここでコンスタントに力を発揮し、チームの戦力となっていくには、前提条件として、評価とプログラムが何より大切だからです。

 

S&Cを学ぶ若い世代に伝えたいこと

スポーツ現場でS&C要素を含んだ活動を目指して、今勉強や経験を重ねている若い方たちに気を付けてもらいたいこと。

それがどちらの要素もある程度まんべんなく学ぶ必要がある、という当たり前の事実です。

総じて、近年の風潮は「評価(アセスメント)」寄りの情報が多い気がします。立位姿勢評価やFMS、PRIなど、どれもツールとしてはとても有効でしょう。

自分の得意なアセスメント道具として身につけるのは重要なことですし、これらのメソッドには、評価即改善まで導くように精度の高いマニュアルが存在しているものも多数あります。

それでも評価はやはり評価です。この部分ばかりを深掘りしていても、専門家としての能力を発揮することは出来ません。

原理原則に基づいたプログラムデザインを学び、リアルなクライアントの目的設定から思考しメニューを適切に作成する。

一つ一つの種目やドリルには意味があり、そのデモを見せ、理解をさせるように100%の努力で促し、適切なフォーム指導やキューイングを与える。

こういったプログラム作成に関わる知識や能力は必須なんです。

専門家として「抜け落ちた要素」は避けよう

ごく少数派にはなるでしょうが、いわゆるS&Cのど真ん中、プログラム作成の中のストレングストレーニングや、スピードトレーニングなどに極端に傾倒。

評価に関して外傷歴以外はあまり考慮せず、基本的なプログラムを与える中で適宜修正を加えていく、というタイプの専門家も個人的にはあまり賛同できません。

ある程度のバランスを客観的に判断したうえで、評価についてもっと学ぶべきでしょう。

スタートの時点で偏りがある、ということ自体が、私が尊敬するストレングスコーチ、Dan John氏いうところの「Time will magnify all errors and ommisions (時間は全ての怠惰や抜け落ちた要素を拡大化していく」ことだと思うからです。

 

常に俯瞰したイメージで「学び方」を学ぶ意識を持とう

…言葉にしてしまうと本当に至極当然のこと。「弘田は何を言っているの?」という方も多いと思います(笑)。

それでも実際に、セミナーなどで質問をしてくれる方々や、自分がアドバイザーを務めている施設におけるスタッフ研修でも、こういった基本的な部分での整理が為されていないことって案外多いもの。

「学ぶ」という事は、私たちののような仕事に携わる人たちにとっては永遠に終わらないタスクです。量は質を凌駕するという言葉通り、圧倒的に学ぶ必要もあります。

しかし時間もお金も有限。自分にどういった要素が必要であり、どういった手順で学んでいけば効率が良いのか、という点はある程度咀嚼していく必要があります。

「学び経験していく」という過程から、こういったフレームワークというか、自分なりの型ができてくる。
そうすると専門的な評価法やプログラム立案などの精度も、当然早く上達します。

自分にとって速く効果が出る、必要な「最大公約数」を考えていくのはすごく大事な戦略なんですよ~。

まとめ

・シンプルに突き詰めると私にとってS&Cの仕事とは「評価」と「プログラム作成」

・食材の鮮度や特徴を知り、きめ細かな技術と工夫を持って調理をする、というイメージ

・この2つの中の細分化された要素が、指導スキルやエビデンスに基づく知識

・若い世代には、常に俯瞰した学びの箱をイメージして「今どの箱のどこを学んでいるのか」を考えて思考してほしい

 

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。
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