これからスポーツ現場で働きたい、
と思っている人たちにとっては、
試合中のスタッフの動きって気に
なるはず。
スポーツやチームによって、ちょ
っとずつ動きは違いますが、今回
はラグビーの所属チームを例とし
て、緊張感のある中でのスタッフ
の仕事ぶりを紹介しましょう。
ラグビーをテレビで見ていると、
殆ど気がつかないと思うのです
が、少し試合が止まったり、ト
ライが決まったりすると、すご
い勢いでスタッフが駆けつけて
きて給水ボトルを渡したりする
様子が映っているはず。
いつでも出ていいわけではなく、
公式戦になると「ウォーター」
と呼ばれる給水係。
彼らが入っていいゾーンまで厳
格に定められており、そこで待
機しつつタイミングを見計らっ
て飛び出しているわけです。
まだ暑い時期には3名までが
エリアに入れますが、11月以降
は基本2名のみ。
そのうちの1人がトライ後の
コンバージョンや、ペナルティ
で権利を得た後のコンバージョン
と呼ばれるキック用のティー
を預かっており、必要に応じて
グラウンドに持っていく役割も
果たしています。
サイドラインのすぐ後ろには、チ
ームドクターとメディカルトレー
ナーが一人ずつ。
ここもビブスを着て誰であるかを
明確にしたうえで、まずメディカ
ルトレーナーがグラウンド内で自
軍の選手が倒れたり怪我をした、
となるとプレーが切れていなくて
も、慎重にかつ迅速に飛び出しま
す。
限られた時間の中で、
・選手がプレー続行可能か
・どういったチェックが必要か
・判断に必要な時間はどれくらいか
・該当選手を外す場合の交代選手の
準備依頼
・裂傷など必要に応じてチームドク
ターへの処置依頼
これらを判断し、インカムを通し
て監督やコーチ、スタッフに指示
を出します。
高い緊張感の中、短時間での判断
が必要で経験値が求められるポジ
ションです。
【コチラもご覧ください】
→アスレティックトレーナー必読!現場トレーナーによる試合中と練習中の怪我人対応の違いとは
チームドクターは、トップリーグ
レベルではHIA(Head Injury
Assessment)と言われる、脳震盪
の判断や骨折などの判断を適切に
行うべく、スタンバイしています。
主に主務が受け持つ役割が、選手
交代の管理です。
出血による一時交代や、イエロー
カードによるシンビンと呼ばれる
中途退場、後半にかけて次々に
実施される選手交代など。
中央にいる記録員に声をかけ、
無線マイク経由で主審に伝えて
もらい、スムースな交代を行う
緊張感の伴う役割です。
監督からの指示を受け、試合の
流れをみてスムーズなタイミン
グで選手交代を行う、経験が必
要なポジションだと思います。
私が担当しているのが、控え選手
のセカンドウォームアップや準備
です。
気温や湿度、展開によって多少ず
らしたり、アップ時間の長さを調
整しています。
基本的には前半2回、全員での
アップを行っています。
出場前なので、静的ストレッチは
ほとんど行いませんが、PNF要素
を含めたパートナーストレッチを
いれたりしています。
主務と試合時間を確認しつつ、
試合戦況を見ながら選手準備を
行っています。
公式戦になると殆どの会場では、
実際のプレータイムも掲示してく
れるので、ありがたいです。
しかし地方スタジアムでの試合、
トップリーグ下のレベルになると、
時間そのままのランニングタイム
は表示されるものの、プレーが止
まっている時間が正確にわかりま
せん。
この時間を計算しておかないと、
準備のタイミングがずれてきてし
まうので、1~2分単位での調整が
必要になるのです。
試合開始時間、後半スタートの
タイミングで、主務と一緒に時計
を開始させるようにしています。
試合開始直前、公式ジャージに
着替える前に、先発15名にGPS
ビブスを渡し、着てもらいます。
控え選手のアップ、指示をしつつ
前半終了5分ほど前から、チーム
PCの前に立ち、ライブGPSのデー
タを手書きで写していきます。
おおよその走行距離やワークレー
トなど、簡単なものではあります
が、選手交代や試合の中での個々
のパフォーマンスのひとつの目安
になるもの。
前半終了し控え選手と共に、ロッ
カーに合流する際に、コーチ陣に
データを渡していきます。
他のアスティックトレーナーは、
適宜水の補充や、交代選手のア
イシングやテーピング、試合中
の負傷退場する選手の担架やその
後の処置など。
分単位で目まぐるしい業務を1
つ1つこなしてくれています。
試合中のもう一つのポイントは
ハーフタイム。
私のポジション的には、前半終了
した瞬間からの1分が、制限なく
控え選手がスペースを使ったアッ
プができる最大ポイント。
インゴールエリア中心とはなります
が、両サイドライン間をめいっぱ
い使わせて、スプリントやキック、
ワイドに深めのパス練習などを1分
ほど行わせ、そのままロッカールー
ムへ合流させています。
チームスタッフ全員が分担して、
ハーフタイム間にロッカールーム
で摂るエナジーゼリーやタオル、
替えのジャージ準備、ミーティング
しやすい椅子のセッティングなどを
準備。
1秒でも無駄にしないように、この
時間をフル活用できるよう、すごい
勢いで準備をしているのです。
観客席から試合チェック、という形
でしか関われない監督以下技術コーチ
は、熱くなる気持ちを押さえつつ、
限られたハーフタイムの時間で、ど
のようにどういった表現で、必要な
修正点やスイッチを入れられるか、
を頭をフル回転させて更衣室へと合
流していきます。
「5分前!」、「2分前ね!!」、
「1分前になるよ!グラウンド出
よう!GO!GO!!」…
後半戦に飛び出していく選手達。普
段の生活でこれほど秒単位で時間を
意識することって少ないです。
うまくハーフタイムを演出できれば
スーッと後半に入ることができるの
で、この12分間の使い方は重要です。
選手交代も頻繁になる後半戦。
私の役割としても試合展開を見つ
つ、個々の選手への声掛けやアップ
指示を出していく忙しい40分になり
ます。
勝っても負けても、試合後のクー
ルダウンは行いますし、練習試合
時期であれば、出場時間の少な
かったプレイヤーの補強フィット
ネスを実施を試合終了後から行っ
たり。
試合に向けての準備や、試合後の
片付けも当然あります。
特に公式戦ではジェットコースター
のように目まぐるしいバタバタ感の
中、ようやく息をつくのはバスに乗
り込んだ後。
メディカル系はここでも選手にアイ
シングを施したり、声掛けをした
りして病院手配をしたり、と動い
ていますので、本当に大変です。
いかがでしょう。
応援しているチームの選手を目いっ
ぱい応援していただくのは勿論のこ
と、バレーボールにしろ、サッカー
にしろ、試合中のチームスタッフの
動きに注目してみると、スポーツの
違った面白い一面が見えるかもしれ
ませんね。