スポーツの審判、機械化の声に現場トレーナーが思うこと

2018年9月。所属するラグビー
チームの公式戦がスタートしました。

1プレー1プレーで勝負が
どちらに転ぶのか、という
試合が続くと、どうしても
審判に対して、ついつい
不平不満を伝えてしまう
こともあります。

以前もスポーツにおける審判
の立場について考察した記事
を書きました。

今回は昨今、議題として挙げられ
ることも多い、ジャッジメントの
機械化に関して、自分の考えをま
とめていきたいと思います。

 

 

審判を機械化しようという流れをどう考えるか

画像や動画をチェックする機能が
著しく発展した昨今。

リプレーやスローでの再生により、
明らかな誤審なども明確になる
時代となりました。

いっそのこと、判定を機械に
判断させたらいいのではないか。

そんな声も聞かれる様になって
います。

審判の機械化への流れ、どんな
意見を持ってらっしゃいますか?

 

完璧なジャッジメントはできない

まず真っ先に私が感じるのは、
映像やレーザーなどを使って、
正確な情報が入るようになった
からといって、「完璧な」判定
が期待できるわけではない、
という点です。

角度があるプレーや交錯した
プレーヤーの一人ひとりに
判定しやすい絵として、情報が
得られるわけではないからです。

もし機械化への流れを推進する
方の中に、「これによって誤審
やエラーが撲滅できるから」と
考えている人がいるのであれば、
その点は注意が必要です。

 

サッカーW杯のVARの難しさ

このポイントは、2018年ロシア
W杯でのVAR(ビデオ・アシス
タント・レフェリー)で現実と
して、その難しさを実感した人
も多いはず。

映像を通してみると、確かにボール
は手に当たっている。

…しかしこれが故意かどうか。その
ジャッジメントには「審判の判断」
が入らざるを得ない。

同じ映像を見たとしても、状況や
審判の判断により、プレー続行にも
反則によるペナルティーにもなり
得るわけです。

なまじプレーが不自然に止まること
により、今までになかった「流れ」
を生む結果にもなり、なかなか難し
いなぁ、と感じたものです。

 

全てを人に頼るのは酷

全く別の切り口で考えると、昨今の
サッカーのテンポの速さには驚かさ
れます。

トップリーグのラグビーのスピード
感も10年前と比べれば、ずいぶんと
速くなっているのを感じます。

バスケットボールの攻守の切り替え
や、野球における投手の動くボール
の多彩さ。

レベルがどんどん上っていく、
これらのスポーツの全ての判定を
生身の審判のスキルにだけ頼る、
というのは、今後もっと厳しくな
るのではないでしょうか。

やはり運用方法は慎重に話し合い、
実際のケースの中で改善を勧めつ
つ、人が最終判断して、補助的に
機械化を進めていくこと。

現在の流れを踏襲しつつ、精度を
高める。

スポーツの持つテンポを損ねずに、
上手く活用できる方法を模索してい
くことが大切だと感じています。

高いストレスの審判はもっと評価されるべき

スポーツの審判やレフェリーに関し
ては、個人的に強く感じることが
他にもあります。

それが、「審判という役割はもっと
正当に評価されるべき」という思い
です。

この辺りの私の意見は、前述した
最高の試合を構成する大きなピー
ス、
「審判を取り巻く環境」は?
の中で書きましたので、お時間あ
る方はぜひ読んでみてください。

 

審判の技術がその競技の成熟度を表している部分も

しかし改めて考えると審判って
本当に大変。

きちんとジャッジをしても褒めら
れないし、疑わしい判定をすれば
初めて脚光を浴びて批判される。

コンディショニングゲームという
名前でフィットネスの一環として
ミニゲームをする際に審判をする
ことがある私。

自分がやってみるとジャッジする
ことってどれだけ難しいか、をつ
くづく感じます。

このレフェリーで選手たちから罵
声を浴びせられ、トラウマになる
のはS&Cあるあるの一つなぐらい
ですから…。

…とはいえ厳しい言い方をすれば
審判の方たちも、曲がりなりにも
プロ。

報酬が発生するわけなので一定レ
ベルにないと失格だし迷惑ではあ
ります。

プロアスリートたちは人生や生活
をかけて戦っているわけですから。

 

審判のレベルはスポーツの成熟度の指標

日本のラグビートップリーグのレ
フェリーの中でも、審判業だけを
生業にしている人は数名しか存在
しないそう。

それ以外の仕事を行いながら自ら
が担当する主審や副審の日程を確
認して試合会場にて笛を吹くわけ
です。

条件面での改善が望まれますが、
この問題がクリアされてこないと
レフェリーのスキルが世界レベル
に肩を並べる、という流れにはな
らないでしょう。

これは日本におけるどのスポーツ
でもそうだと思いますが、審判の
レベルをみればそのスポーツの成
熟度や認知度を表している部分が
あるのではないでしょうか。

コンディションを整えて審判が集
中してスキルを磨き経験を積み研
究を重ねる環境を作るのが先か。

突出した高いレベルの審判の何人
かが満足できる生活ができる条件
や環境を手に入れ、彼らを目標と
する次世代がレベルアップしある
種のプロ化を確立するのが先か。

 

ファン側の注目は集まりづらい要
素ではありますが、好ゲームを演
出する最も大事な要素である審判
の能力。

ここを更に引き上げるのは一スポ
ーツファンとしても注目すべきと
ころだなぁと感じています。

 

まとめ

競技特性上、ジャッジングが本当
に難しいラグビーやサッカー、
一試合300球以上をジャッジしな
くてはいけない野球などは、AI
の要素が徐々に強くなっていく
のは自然なこと。

人が判断する、という要素は残
しつつ、上手に共生していく
システムが構築されればいい
すよね。

時折大好きなチームや選手だけ
でなく、その日の試合の審判の
動きやジャッジメントに注目してみる。

そんな観点を持つとより深くそ
のスポーツの楽しさが味わえます。

そんな視点からもスポーツを楽し
んでみてください!

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。
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アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。

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YUJI HIROTA