私も2005年ごろに頻繁に取り
入れていたコンパウンドトレ
ーニングの概念。
この言葉、既にちょっと懐か
しい感すらありますよね。
2010年以降の研究論文による
と、スーパーセットで複数回
繰り返す場合、類似動作で筋
収縮形態が違うものは効果が
高まりづらい、という結論が
多く出ています。
2010年以降は、私が実施する
スーパーセットはシンプルに
主働筋と拮抗筋の種目パター
ンが多くなっています。
定期的に勉強させていただいて
いる、佐々部考紀氏のブログに
学んだい内容をリライトしたも
のを、シェアさせていただきます。
2013年の研究論文をベースに、
佐々部氏はPost Activation
Potentiation(以下PAP)、
活動後増強と言われるコンセ
プトについて紹介してくれています。
それがコチラ→ PAP~直前の刺激でパワーが上がる?
事前に課題の動作(ジャンプやス
プリント)よりも強度の高い運動
(中~高強度のスクワットなど)
により筋肉に刺激を入れることで、
課題の動作のパワー発揮、パフォ
ーマンスが向上する、という概念です。
イメージとしては、私も以前行っ
ていたコンパウンドトレーニング
に似ている気がしましたが、目的が違うのです。
PAPを利用したいときのわかり
やすい例ではベンチプレスでの
活用があります。
ベンチプレスの1RM MAXに挑戦
するときなど、一度、自分の
MAXの120%ぐらいの重りをつけ
て、「ラック外し」、つまり
バーをラックから外してスター
トポジションまで持ってきて、
すぐにラックに戻す作業を2~3
回繰り返します。
その後2~3分、しっかりと休憩
をいれて自分のMAX重量に挑戦。
このとき、普段よりもその重さ
が「軽く」感じられるのは、ト
レーニング中級者以上なら、経
験したことのある感覚でしょう。
これが典型的なPAPの効用です。
強い筋収縮後の活動増強の研究
は1980年代から行われているそう。
しかし「PAPのメカニズムを利
用してパフォーマンスを向上さ
せよう」という取り組みは日本
のスポーツ界において現在あま
り取り入れられていない気がします。
大事なのはきちんとPAPを理解
し、トレーニング変数をコント
ロールすること。
どれくらいの重さやどういった
種目を事前に行うのか、どの程
度の休息時間を置くとPAPが最
大化されうるのか知っておく必
要がある、ということなんですね。
当然ですがPAPを起こすには、狙
っている動作の筋群と同じ筋群を
中~高負荷で実施しなくてはいけません。
垂直飛びの距離を伸ばすために事
前にスクワットをする、というよ
うなことです。
そしてその事前運動は狙っている
動作より大きな負荷を使う必要がある。
これが最初の知っておくべきことです。
更にPAPは短期的な適応である、
ということも理解しておく必要があります。
私も学んだFMSでいうところの
コレクティブエクササイズのよ
うにあくまでも短期的な適応を
狙っているものなわけです。
変化が出てから10分経てば減少
してしまうようなイメージです。
さらにコンプレックストレーニ
ングで処方する際の難しさは、
直後は疲労の影響によりパワー
発揮は増強されないという点。
ポイントとなるのは、一時的な
疲労の減少は活動後増強の減少
に比べて早いということ。
PAPを利用するには、狙っている
動作と事前動作の間のレストを
どれくらいとるのかが重要なん
ですね。
【こちらも併せて御覧ください】スクワットの深さにこだわれ!結果につながる理由、スポーツトレーナーが教えます
通常のエクササイズ同様、変数
にはこの休息時間のほかに負荷
設定、セット数、筋肉の収縮様式
など多くの要素があります。
PAPを引き起こすための適切な変
数は、トレーニングをする人たち
のトレーニング経験などによって
も当然変化するわけです。
より詳しい説明は、佐々部さんの
ブログ記事を読み込んでみてください。
ざっくりと現在の研究で分かって
いる部分をまとめると、狙う動作
の3~10分前に、1RMの60~85%
程度の事前動作(研究ではスクワ
ットなど下肢のエクササイズ)
を、複数セット行うことでジャン
プ力やスプリントスピードが向上
する、ということが判明しています。
一定以上の筋力を備えた3年以上
トレーニングを積んでいるアスリ
ートでは、Effective Size(ES)と
いう指標で0.81という中程度の結
果が出たそうです。
これは数値が高いほど効果が高い
ことを表す指標。
当たり前ですが基礎的な筋力が高
くないと、PAPの適応は起きづら
いもの。
負荷設定に関しては、60~84%1
RMという中強度が1.06という最
も高い効果を示しました。
セット数では1セットで0.24、2
セット以上で0.66というように複
数セットの刺激がより大きいPAP
を引き起こすようです。
最も気になる休息時間ですが、
2分以下は0.17、3~7分で0.54、
7~10分で0.70、11分以上は
0.02と3~10分の間が最も効果
的という結果だったとのこと。
アスリートの複数セット(2セット
以上)に限定すると、PAPのES
(効果量)は約1.5と大きい数値に
なっています。
トレーニングを積み基礎筋力の高い
アスリートに関してはこの概念を知
っておくと、高い効果が出せる可能
性が大いにありますよね。
毎回読み応えのあるブログ記事をあ
げて下さり、参考にさせていただい
ている佐々部氏の記事から、自分な
りにまとめてみました。
特に記録を狙った種目、高跳びや幅
跳び、砲丸投げのような陸上競技で
は直結してベスト記録作りに役立ちそう。
PAPを狙ったトレーニングを行うに
は時間がかかってしまうデメリット
がありますが、スクワット1RMテス
トなどの際、今後も試していきます!