ここ数年で新たに取り入れた、さまざまなトレーニングギア。
2016年には京都にて研修を受け、ViPRという筒状のトレーニングギアがどれくらい有益か、を確認。今までと違うアプローチができることから重宝しています。そのほかでも、アルティメットサンドバック、アクアバッグなど日進月歩のトレーニング業界。
スポーツ現場のコンディショニングやトレーニングに携わるものとして、新しいアイテムを上手に使いこなし、より効果的な選択肢を増やしていきたいです。
一方で、新しいギアやメソッドに向き合う際、いつも自分の頭に浮かぶセリフがあるんです。
2002年に3年半留学していたアメリカから帰国。日本に帰ってきてからすぐに、この業界の先輩からとても印象深いアドバイスをいただいた、その言葉です。
「弘田さ、畳一畳だけのスペース。何の道具も使わずにそこで1時間の効果的なトレーニング指導ができるか?その状況下で、普段の環境や施設と同様の質を提供できなくては、プロの専門家ではないんだよ」
…いや、それは無理。当時は瞬間的にギブアップでした。
25歳の当時は、「自分には限られたスペースで道具のない状況で提供できるだけの、トレーニング種目のバリエーションがないし…」と思っていました。
この考え方がそもそも未熟!
時を経るにつれ、この先輩が教えてくださった深い深い意味に感謝するようになりました。ちょっと極端な響きですが、簡単にいえば「道具や施設に頼らない」ということ。
特にトレーニング指導をメインとしているストレングス&コンディショニングの専門家は、屋外やトレーニング環境の整っていない状況で、指導を行うことも多くあります。
前もって天候や環境を調べ、出来うる準備をしていくことは当然。そのうえで状況変化に臨機応変に対応し必要な強度やレベルは保つ、ということが求められます。
まるきり同じレベルができるか、と言われればNO。キャリア17年目を迎えましたが、少なくとも私はそのレベルにはありません。
しかし自分が行おうとしていた種目や動き、時間や負荷には必ず目的があるはず。その目的と今置かれている状況を考えて、持っている選択肢の中から最善と思われるものを選ぶ。この発想が必要なんです。
そもそも一つの道具や考え方で、恒常的に強化・教育を進めていくこと。それ自体がトレーニングの基本原則である「全身性の原則」に反しており、偏りになります。
自分がマスターコーチだからといって、TRXだけ、ViPRだけ、オリンピック系リフトだけをさせる専門家はいません。いたとしたら、その方は「〇〇(←特定の道具ややり方)指導をするインストラクター」なのであり、少なくともスポーツ現場に必要な人材ではないですよね。
必要最低限の道具や施設、人材の中で最大限レバリッジを効かせて、最大効果を狙う。そのために俯瞰した視点と柔軟な思考を忘れない。
今回紹介した、15年以上前の先輩の金言。つい硬直化しがちな思考を戒める意味でも、いまだに思い出すことの多い、本当にありがたいお言葉なんです。
・日々出てくる新アイテムへのアンテナを張り、試してみるのは必要
・新しいギアやメソッドに飛びつき、方法論に終始する思考は危険
・「一畳で道具なし。1時間の効果的なトレーニングセッションを!」というお題は、トレーナーの力量を試すにはいい問題。皆でどんなアプローチをするのか、話し合ってみては?