ちょっと専門的な話ということで「チーム方針、チーム課題をまず探れ」というお話をしていきます。
先日ミーティングがあり、あるチームのプログラムサポートのためのヒアリングを行いました。オンラインでお話を聞いてからお手伝いをするんですが、このスタイルを含めてありがたいことに、いろいろなチームに関わらせていただいています。
私の専門であるS&Cというのは、ストレングス&コンディショニングの略です。トレーニングやコンディショニングの専門家ということなので、鍛えたり、怪我しないように体を作っていくということがメインです。
チームスポーツに関わるようになると、ついすぐに専門分野に着手しようとしがち。特に若い世代の専門家や、S&Cでもあまり経験がない方はどうしても自分が具体的にやれることを、すぐにプログラムしていきたくなるものです。
しかし何より最初に把握すべきなのは、チーム方針やチーム課題です。特にチームスポーツでプログラムを作る際には、最も大事なことでしょう。
例えば、昨年はリーグで3位だったとか、最下位で他のチームと同じレベルに持っていくためにまだこれから努力をしなきゃいけない時期だとか、2年連続で優勝しているなど…。
これらにより、チーム方針や文化も違っているし、やるべきことの優先順位も変わってきます。
方針や課題を抽出し、現状足りていない部分を探っていく。これは科学的なものだけではなくて、主観的なものでもいいでしょう。
監督やコーチ、トレーナーやスタッフ、そういった方たちにどういったことが課題だったと感じているかを、具体的にヒアリングしていきます。
「怪我人が多かったんです。」、「他のチームと比べるとフィットネスが低い気がするんです。」といった所感です。
トレーニングに求めることや、トレーニングやコンディショニングに対する理解がどれくらいあるのか、ということを把握していくという探りが必要だからです。そこから初めて
といった具体的なことを詰めていきます。
集めた情報をまとめて、そのチームや組織に必要だと思われる最低限の評価やテスト項目を決定。
精度の高い仮説を立てられたら、実際のプログラム作成に入ります。
実施していく中で、細かく修正と確認をしていき、適宜PDCAサイクルを回していく。こういった流れです。
前提条件をしっかり理解しないままで、実務準備をしてみても、結局また修正しなければいけなくて、すぐにズレていきます。
リクエストされたままプログラムを立ててみたけど、このチームは週に2回しかトレーニング時間を取れない、という基本的な頻度の部分で間違えてしまう
こんなエクササイズを導入したけれど、ここのトレーニング環境にはそういったマシンだったり、必要な数がないことに後から気がつく
こんな状態では、準備したことが無駄になってしまうし、大局的な視点からトレーニングを管轄することはできません。
変に自分でイメージを作りすぎて最初に作り込んでしまうと、チーム方針や練習パターンが違っていた、違うんだということが分かった時に最初に自分が考えた、計画やイメージとズレてきてしまいます。そうすると、今度は修正するのがなかなか難しくなることさえある。
…こんな状態では、いい結果を導くことなんてできませんよね。
ムダやムラを避けるために、まずはまっさらな状態でチームに関わること。
チーム方針やチーム課題を把握し、その上で「何が足りていないか」という現状課題を探り、年間スケジュールやチーム練習のパターン、トレーニング頻度や環境の把握をする。
その上で選手たちの個々の怪我やヒストリー、トレーニングの熟達度というところを大体のラインで把握していって初めてプログラムを作っていく。
そうすることによって、ムダなく、モレなく、チームに対して貢献しうる要素というところからしっかりと優先順位を持ってトレーニングに向かうことができます。
まずはチーム方針やチーム課題を探ることを考えていくのが大事だという意味をわかってもらえたのではないでしょうか。
具体的なことをする前にまずは「チーム方針やチーム課題を探っていこう」を頭に入れておきましょう。
最後に…
ムダなく、もれなく、優先順位を持って臨む。チームや組織に対する姿勢は、もちろん自身のキャリア形成にも絶対必要です。
今後はスポーツを愛し関わっている専門家のために「生き残る戦略を伝える人」としても活動していきたいと思っています。その導入として、1年半ぶりに「トレーナーに必要な10年後も生き残るための戦略2022」オンラインセミナーを行います。
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