気がつけば師走に突入。2017年もあっという間に終わりますね。天皇陛下の退位を受けて長かった平成の年号も2018年4月には終わりを告げることになります。
毎年60~70冊程度は本を読む私ですが、本日は2017年の専門書以外でのおススメ本5つを紹介していきましょう!
魅力的なサブタイトルに惹かれ、キンドルにて購入したこの本。自分が不惑の年となり、やはり「40歳からの~」、といったタイトルや「独立」、「生涯現役」みたいなタイトルをみると、「お、自分にぴったりの本かも?」と興味をそそられることが多くなっています。
出版元のプレジデント社、というのも弱いんですよね…今までの傾向から当たりが多いので。
結論から言うと、とても有益な本でした。作者の井上氏はNECを経て、大手新聞社である朝日新聞社に入社。40歳の年に独立し、そこからはフリーランスのライターとして10年以上活動しているライターさん。
変則的な自営業、というスタイルで仕事をしている弘田にとっては、うんうん、そうだよなぁと同意する部分がたくさんありました。
[box class=”yellow_box” title=”本文より引用”]
『経営は自転車操業だが、サラリーマンと違って経費で処理できる費用がある分、可処分所得は(中略)ほとんど変わらない。言ってしまえば、「飼い犬」から「野良犬」になったわけで、野たれ死にするリスクはある反面、「鎖」と「檻」がないので自由に自分の問題意識に基づいて行動できる(後略)。』
『記事の内容が駄目ならいずれ仕事はこなくなる。これは記者以外の仕事でも、専門性を持って独立している人の場合は同じようなことが言えるだろう。』
『「仕事のプロ」とは簡潔に言えば、社内外に豊富な人脈を持ち、業界の中でも一目置かれる実績を出している人』
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ぐさっと刺さるような、芯を食った文章の数々を目の当たりにすることができました。
槍投げの選手である溝口和洋選手。ハンマー投げのレジェンド室伏広治選手を指導していた方、というのは聞いたことがありました。しかしその常軌を逸したウエイトトレーニングの量と方法に圧倒され、興味を持った溝口和洋という人物。
彼のアスリートとしての歩みがノンフィクション作品の本として出版されたのが『一投に賭ける』というこの本だったんです。
1962年生まれの溝口和洋氏は、現在農家としてトルコキキョウを育てている、まだまだ現在進行形の方。槍投げに徐々にのめり込んでいく中、世界で戦うにはウエイトトレーニングしかない、という結論に達した溝口氏が自分に課したのが、尋常ではない量のウエイトトレーニングでした。
ベンチプレスやスクワットを例に挙げて説明がされていましたが、冬季はどちらか1種目だけで一日費やすこともあったそうです。スクワットであればMAX80%(約200㎏)でのフルスクワットを10回x30セット。総重量60トン。午後からスタートしても22時は超えてしまう量だった、とのこと。
この量だけでも、実際にウエイトトレーニングを恒常的にやるものにとっては衝撃的なもの。
その上で、溝口氏はあくまでも「槍投げのためのウエイトトレーニング」を突き詰めて考え、手先・足先の末端まで強く意識。各種目への意識やコツを述べた部分は、実践に実践を重ねた人だからこそ掴める感覚だと感じました。
マニアックなぐらい細やかな描写。一人称で迫力たっぷりに述べられたこの第二章だけでもトレーナーには必読。思わず息をつめながら一気に読めてしまうはずです。
まるで溝口さんご本人が今、ここで語ってくれているかのように感じられ、危ういほど「道」を極めることに終始した狂人の姿が鮮明になりました。
『この道を興すには狂者に非ざれば興すことは能わず』。吉田松陰のこの言葉が思わず頭に浮かんでくる、そんな強烈な生き様を感じることができました。
科学や理論といったものは大切ですが、徹底的に実践し仮説を立て工夫を行うことの大切さ。「常識」とされているものを無視し、直感に従う潔さ。
私のようなS&Cの専門家や、アスレティックトレーナーなどにこそ、おススメしたい一冊でした。
挿絵やデザインも素敵で、それぞれの章に含蓄のある言葉がいっぱい。同じ1976年生まれの同い年の人の言葉なんだなぁと思うと、余計に刺激を受けました。
5章45項目にわたるメッセージの中から、特に心に残った部分を書き出してみます。
[box class=”yellow_box” title=”本文より引用”]・孤独を愛せ。器は独りの時間に大きくなる1ページずつ読み進められるシンプルなスタイルですが、言葉の持つ力を感じられる一冊。自分を奮い立たせて一歩前へ踏み出したい人には勇気をくれる一冊です。
過激な表現も多い堀江貴文氏の著書。しかし「多動力」の中で述べているメッセージは至極シンプルな気がします。総じて伝えているのは、有限の時間を無駄にするな、ということ。
ただせっかちに急ぐのではなく、「無駄を徹底的に省くこと。人からどう思われようが今までの常識がどうかは関係ない」として自分ルールを徹底。
「ストレスをためないこと。やりたくないことはやらない、付き合いたくない人とは付き合わない。その日のうちに不満は吐き出し、歌い騒ぎ眠る。次の日に持ち越さない。」という自身のライフスタイルにも、有限の時間を自分の時間として使い切る、という意思を持っているように感じました。
仕事に関して、特になるほどなぁ…とメモを取ったのは「仕事に必要なのは速度ではなく『リズム』」という部分。一定のリズムで優先順位をつけ、どんどんと決断しこなしていく。そのために邪魔になるから基本電話はとらないし、急に声をかけられても反応はしない。
ここまで極端ではないものの私も文章を書いたり資料を作る際、Wi-Fi環境を切り、ひたすらメモ帳に文章を書いていく、という方法をとっています。テレビも音楽もつけずに携帯電話の電源もOFF。
こういった時間を2~3時間まとめてとると、2~3日分ほどの内容を一気にこなすことができるんですよね。自分のこの方法も一種のリズムを作り出すテクニックなんだなぁ、と気がつきました。
この著書の中でもう一つ、インパクトを受けた章がありました。それが「基礎となる教養を身につけて『原液』を作る人間になることで初めて自分の分身をつくることができる」ということが書いてあった第5章。
自分オリジナルの観点や技術を「原液」として、それを周りの人が広めてくれれば、ある種自分の分身が二人、三人と増えていく。この影響力があれば24時間という限られた時間の中で、何倍、何十倍もの拡散力を持って周りに伝播していく。
だからこそ限られた時間は、自分でしかできないこと、自分にこそ思いつくアイディアなどに注力すべき。自分なりの「原液」を作るべきだ、というのが主旨でした。
自分の中には全くない考え方だったので、とても新鮮でした!
堀江貴文さんのことを快く思わない人もいるかもしれませんが、良くも悪くも影響力を持ち、とてつもないバイタリティを持った方であるのは間違いありません。この本も、著者に対する偏見から手に取ることを避けているのであれば、もったいない内容です。
自営業マインドで働いている人には、特に芯を食った内容。興味をもちエネルギーを注げることを、走りながら身につけていくような同時進行できるフットワーク。それが今後仕事をしていくうえでぜったいに必要になるんだよなぁ…と痛感した本でした。
さすがベストセラーになっただけはある本。有限の時間だからこそ「見極めて、捨てて、しくみ化する」意識をいろいろな角度から切り取ることができます。
この本の中で非常に印象深いエピソードがありました。一つだけ紹介しますね。
「めぐり逢えたら」や「恋人たちの予感」の脚本家、ノーラ・エフロン。脚本家としての彼女の最大の武器が物語の本質をつかむ力だ、という評価だそう。その彼女、その本質をつかむ能力を最も吸収できたのが、実は高校時代の授業だったというエピソードです。
[box class=”yellow_box” title=”「エッセンシャル思考」内のエピソード”] ビバリーヒルズ高校でジャーナリズム入門を教えていたのは、チャーリー・O・シムズという教師。最初の授業の内容は導入部の書き方だった。記事の要旨を簡潔にまとめることこそが大事だ、とシムズは語った。
いつ、誰が、何を、なぜ、どうしたのか。僅か最初の数行で情報の本質を伝えなくてはいけない。彼は生徒に予約を書くという課題を出し、次のような物語を読み上げた。
「ビバリーヒルズ高校のピーターズ校長は今朝、職員一同に研修旅行の知らせを告げた。来週木曜、職員全員でサクラメントに行き、新たな教育メソッドに関する会議に参加する。当日は人類学者のマーガレット・ミードや教育学者のロバート・M・ハッチンズ、カリフォルニア州知事のパット・ブラウンによる講演も予定されている」
生徒たちはタイプライターにmukai、いっせいに要約を始めた。
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…あなたならどんな要約文を考えますか?
「マーガレット・ミード、ロバート・M・ハッチンズ、ブラウン州知事は、教育会議に参加し…」「来週木曜日、高校の職員一同はサクラメントで…」
シムズは生徒たちの要約に目を通し、どれも駄目だ、と首を振り、こう言った。「正しい要約は『来週木曜は学校が休みだ』。」
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エフロンはそれを聞いた瞬間に、ジャーナリズムとは単に事実を繰り返すことではなく、核心を見抜く事だ、と気づいたそうです。事実を述べるのではなく、それがどういう意味を持ち、なぜ重要なのかを理解しなくてはいけない、ということを。
このエピソード、正直頭を殴られたような衝撃を受けました。本質って「核心を見抜くこと」って肝に銘じなくては…と危機感を覚えた部分でした。
弘田自身が一番苦手だと認識している「捨てる技術」。PART3に収録されているこの項目も、理想論的に「本質を見据えて生きよ」とだけ語るのではなく、そのために必要な技術として、断固として上手に断ることが必要だ、と語っています。
そのうえで魅力的なエピソードや具体的な断り方のスキルも満載。本当に実践的な内容であっという間にドッグイヤー(本の端を折ること)だらけになりました。
エッセンシャル思考というタイトル通り、本質的なことにフォーカスして書かれているため、仕事にも家庭にも応用できる具体的且つ効果的な本。専門書じゃないけど、何か仕事のヒントになる本ないかな~、と探している人にはビンゴの内容なので、おススメです!