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野球におけるストレングス&コンディショニングの専門家を目指すのであれば

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2016年7月20日の米国の著名なS&Cコーチ、エリック・クレーシーのブログには非常に刺激的なタイトルがつけられていました。5 Steps to Becoming a Baseball Specialistというブログ記事です。

詳しい内容は原文を読んでもらうとして、彼は5つのポイントを挙げています。彼のように野球選手に特化した施設を持つというレベルには到底及びませんが、私もS&C専門家として最も得意な分野は野球選手に対するアプローチだと思っています。

学生時代に野球に明け暮れていた元アスリートのセカンドキャリアとして、治療家に次いで多いのが、ストレングス&コンディショニングコーチとしての再出発でしょう。

野球関連のセミナーには多くの方が興味を持って参加して下さり、自分自身、野球チームのコンディショニングコーチを目指している、という人も多いです。

エリック・クレーシーの挙げる5つのポイントには大きな説得力がありましたので、私なりの見解をちょっと補足していければと思います。

野球というスポーツを観察する絶対量が大切

出来ればライブで、その場に足を運んだうえで野球の持つ特性を肌感覚でつかむ必要があると思います。

特に投球や実戦形式での打撃に関しては、断片的に切り取った絵ではなく連続体として捉えていくことが大切でしょう。股関節や肩の角度、といった「場所フォーカス」ではなく、全身のまとまった物体として流れを掴めるように量をこなしていくことが必要になります。

こういった観察眼を養うためにも、とにかく絶対的な量を入れることをお薦めします。

理論上はあまり勧められないフォームであっても、連続体の中では「許される」体の使い方もありますし、ケガのリスクが高いとしても「絶対にいじってはいけないリズム」も存在します。

高い集中力で絶対的量を見てくることによって、「観る」感覚が養われれば理解できるはずです。

 

ランニング神話に流されず温故知新の部分を残す

日本特有の問題としては、とにかく技術コーチとの兼ね合いという部分が大きいでしょう。これ自体はまったく悪いことではないのですが、日本の野球における技術練習はとにかく長く反復回数が多いのが特徴。

エリッククレーシーが提唱するトレーニングへのアプローチ(特に肩の動作に関する詳細な方法論は尊敬に値します)などをそのまま日本の野球に置き換えても、文化というジレンマに陥る事は間違いないです。

少量を全力で!という概念がそれほど浸透していない部分があるので、一日や一週間、一か月単位での全体の練習量や力発揮の形態を考えて、トレーニングプログラムを作っていく必要があります。

日本では監督にせよ投手コーチにせよ、未だに「ランニング神話」は色濃く残っています。いい球がいかなくなる、スイングのキレがない、不調である…

ここ数年でその現象≒ランニングすべし!という安直な考えはなくなっていると思いますが、解決策の人気メニューに70~120Mの快調走や長めのファストジョグ、というのは根強くランクインしているはず。

ランニングをすすめる根拠として弱かったり、より良い代替案があるのであれば、コンディショニングの専門家として自信をもって提言する勇気が必要です。

対立したり技術コーチに反発するようでは専門家としては失格ですが、しっかりとコミュニケーションをとりコーチからの信頼も得たうえで、よりよい方法論を提示すべきでしょう。

私も30歳前後のころは気持ちばかりが先行して、技術コーチとコミュニケーションを取りながら…という部分が全くできていなかったのですが…。

ただ技術面での基礎練習の反復や絶対量こそが、世界において日本の野球が高い技術力を誇る一番の要因、という部分も間違いないところ。

フィジカル面でのパワーという要素よりも、全身を使って足からスタートした位置エネルギーを体幹から上半身、腕を通して指先へ伝える移動エネルギー。運動連鎖や筋力に頼らずに上手な体の使い方で速い球を投げる、的確にボールを打つ、という要素こそ日本の野球の強みなんですよね。

日本の野球が持つ本質的な強みや良さを「温故知新」な要素として守りつつ、そこに科学的であったり合理的なアプローチを加えていく。

近視眼的な考え方ではなく全体を俯瞰した視点をもって、その中の一部としてコンディショニング要素を捉えていく、というある種のフィロソフィー(哲学)を確立していくということ。

これこそが、日本の野球におけるS&C専門家を目指す人にとっては一番大切なんじゃないかなぁと思っています。

そうでなければ、例えば「プロ野球チームのコンディショニングコーチになりたい!」ということが目的になってしまい、その現場に立った時点から何をも為せないスタッフになってしまう可能性が高いでしょう。

それじゃあ悲しいし、そこに存在する意義がないのではないか。真面目な人ほど陥りがちな迷路にはまり込まないためにも、上記に挙げたような考え方を確立していく必要があります。

 

まとめ

・ダンジョン氏と並んでエリッククレイシー氏もぜひ会ってみたいS&C専門家

・絶対量を積み重ねることで野球の動作を理解していくことが大事

・「~ねばならない」理想的な動作が正しいわけではない

・温故知新の精神を持ちつつ、有効な知識を迷わず提供する哲学を持とう

 

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。
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