AED(自動体外式除細動器)を購入したいオーナーや経営者は多いはず。
ただネットでチェックしてみても、価格の相場がわからず、どうやって購入したらいいかも今一つわからない。
…なぜだと思いますか?
人の命に関わるAEDは、「高度管理医療機器」として、慎重に取り扱われるべきもの。
具体的な製品の価格などをネット上にあげることは、原則できないのだそうです。
トレーナー歴20年の私が、関わるスポーツ施設にてAED購入のお手伝いをした経験をもとに、価格の相場や購入時の注意点をお伝えします。
AED購入で知っておくべきこと
AEDの価格・値段について
まずは気になる実際の値段や相場について。
AED価格の相場
全くAEDの価格帯のイメージがわかない人、多いと思います。
10万円以下の価格帯を想像する人が多いとのことでしたが、間違いなくどの機種もそれ以上の金額はします!
使用する際には、心細動の有無をチェックする心電図が内蔵されているのがAED。
そりゃあ高いわけだ、と思いますが、相場は30~50万円ぐらいが一般的です。
初期費用だけでなく消耗品や耐用年数が大事
実際の価格はWEB媒体では載せちゃいけないらしいので、ブログでも一応載せないでおきます。
ただ、購入手続きを進めてみて実感したのが、「本体価格だけでは判断できないんだなぁ…」ということ。
機種ごとに値段が違うし、寿命(耐用年数)も違う。パッドやバッテリーも消耗品なので、耐用年数が高いものは期間中に交換しなくちゃいけない。
トータルで金額を考えるのが大事!というのを実感しました。
複数機種で比較すべし
最初、知人のAED購入を手伝うために「3社相見積もり」のようなスタイルで、調べていました。
日本のAEDメーカーって基本3大メーカーが独占しているんです。(日本光電、オムロン、CUコーポレーション)
それぞれの会社の見積もりスピードも対応も全く違ったので、「ちょっと時間がかかりすぎるなぁ…」というのが難点でした。
結果的に、AEDを一括して取り扱う専門店で、3種類のAEDの特徴を聞いたうえで、見積書を出してもらいました。
繁忙期ではなかったとのことですが、この専門店は仕事が早く、ネットで見積書依頼を出したその日に、即日見積もりをメール添付してくれたんです。
見積書の不明点も、担当者に電話してすぐに解決。ストレスなく話を進めることができました。
設置場所と管理者の確認が必要!とあるが…
AEDは人の生命にかかわる重大な機器です。「よし、購入しよう!」となった際、きちんと調べると、2つの確認が必要と思うでしょう。
それが設置場所と管理者です。
「けっこう面倒くさいなぁ…」そう感じるかもしれませんが、実は誤解が多いもの。これ、それほど厳密なものではないのです。
設置場所を決めておこう
設置場所は、目立ってすぐに取り出せる高さにあるべきです。施設の玄関に設置するケースが多いみたいですね。
意外と見逃しがちですが、直射日光が当たるところは避けるべき。一応0度から50度の範囲までは問題ない、とのことですが…
確かに思い返してみると、空港や駅でも絶妙な場所にありますよね。
管理者は難しく考えなくていい
設置場所と管理者。この2つに関しては私自身、誤解していました。
設置場所には、実は登録義務はありません。
AEDの管理担当者に関しても、その人に監督責任があるわけではなく、便宜上、サインが必要なだけ。
高度管理医療機器であるAED、決まりがきちっとしている必要があるのは、販売元。
購入側は実質的に、「製品説明を聞いた」という証明が必要なだけなんです!
対面でも電話でもOKで、具体的な使い方や注意点を確認しますが、時間にして15~30分程度。
負担に感じる必要はありません。
経費計上まで考えておくべき
安全面、倫理面どちらから考えても、導入すべきAED設置。ただ現実的には経済的な負担が大きいのも事実です。
ちょっと余計なお世話かも知れませんが(笑)、私が実際に税理士さんに相談した内容をシェアしましょう。
減価償却の場合は通常4年で処理
本体価格が30万円以上するAEDを購入する場合は、減価償却で処理することになります。法定耐用年数は4年が一般的だそう。小型車やパソコンなどと同じ扱いなんですね。
私のように個人事業主として働いている人は、もし購入価格を30万円未満に抑えることができれば、少額減価償却資産の特例を受けられる可能性もあるのです。
価格競争力のあるAED販売代理店であれば、30万円以下で優秀なAEDを獲得するのは、難しくありません。
実際、私が購入に関わった際も20万円を切る金額での購入ができました。
個人の売り上げが好調で大きい年に、思い切って購入する、という選択肢もアリです。
もちろん私は経理のスペシャリストではありませんから、減価償却を含め、必ず今回のご紹介通りになるとは限りません。
実際の購入の際には、担当者や会社の担当税理士さんなどに確認してみてくださいね!
リース契約できる機種を選ぶのもあり
私が実際にお手伝いとして購入検討をした3機種のうち、1つはリース対象外でした。
法人では税務上の問題で、リース契約の方がいい場合もあるでしょう。購入検討の際に、リース希望の場合は細かな点を確認しておいた方がいいです。
そういった意味でも、AED販売の担当者がいて、すぐに対応してくれる業者だとストレスがありませんね。
要注意!!自動販売機とのAEDセットキャンペーン
知人のスポーツジムで実際にあった話ですが、自動販売機を2台設置すればAED1台をサービス!というキャンペーンにてAEDを獲得。
これ自体が違法ではないのですが、自動販売機会社が無資格で販売していたり、別会社を入れて貸与していたケースが多くあったそうです。こうなると完全に違法ですよね。
自販機でAEDを入れる、というオファーがあった場合は、自販機会社に資格の有無を必ず確認しましょう。
先述のスポーツジムでも、後程無資格での転売だったことが発覚。最近、きちんとAED専門会社からリース購入したとのこと。
一安心しました。
スポーツジムや介護施設にAEDを設置すべき理由
マイクロジムや介護施設でも、絶対にAEDを置いた方がいいこと。後半では改めて、この理由を強調させてください。
理由1.ガイドラインが推奨するAED設置場所の1つ
自動体外式除細動器(AED)の適正配置に関するガイドラインに「AEDの設置が推奨される施設の具体例」として以下の施設が挙げられています。
1. 駅・空港
2. 旅客機、長距離列車・長距離旅客船等の長距離輸送機関
3. スポーツジム及びスポーツ関連施設
4. デパート・スーパー・飲食店などを含む大規模な商業施設
5. 多数集客施設
6. 市役所、公民館、市民会館等の比較的規模の大きな公共機関
7. 交番、消防署等の人口密集地域にある公共施設
8. 高齢者のための介護・福祉施設
9. 学校(小学校、中学校、高等学校、大学、専門学校等)
10. 会社、工場、作業場
11. 遊興施設
12. 大規模なホテル・コンベンション
13. その他
13-1. 一次救命処置の効果的実施が求められるサービス
13-2. 島しょ部および山間部などの遠隔地・過疎地、山岳地域など、
救急隊や医療の提供までに時間を要する場所
スポーツジムも、高齢者の介護・福祉施設も当たり前ですが、ばっちりAED推奨施設に入っているんですよね。
AED設置でリスクを回避し安全・安心を担保できる
ジム(フィットネス)やスポーツ施設は、「3. スポーツジム及びスポーツ関連施設」として、AEDの推奨設置場所として指定されていました。
運動やスポーツをすることで心肺には通常よりもストレスがかかります。施設利用直後に心肺停止事故のリスクは高くなるといっていいでしょう。
小さなマイクロジムの規模であれ、ジム施設を運営、経営しているならば、積極的にAEDの導入をすべきです。
介護施設も「8. 高齢者のための介護・福祉施設」として明記されていましたね。
食事サービスがあれば、誤嚥のリスクは必ずありますし、運動指導中に、気分が悪くなり心肺停止… こんなシナリオは避けるべきであり、起こらないに越したことはありませんが、100%ないとは言い切れません。
いざというときに利用者の命を救えなければ、安全・安心な施設とは言えないですよね。
また発生状況や対応によっては、訴訟などのリスクもあります。施設運営自体に影響を与える可能性もあるわけです。
理由2.スタッフが本気で心肺蘇生法に取り組むようになる
施設に所属するトレーナーや治療家、スタッフが本気でCPRに取り組むようになる。
これもジムや介護施設でAEDを設置すべき理由の1つでしょう。
2018年5月初旬、自宅近くの消防署にて普通救命講習を受けて資格更新してきました。
19歳でアメリカ留学時にCPR資格を取ってから、合計すると9回目の更新となっていました。…時が経つのは本当に早いものです…
20年以上の間に、心臓マッサージと人工呼吸の割合も大幅に変わり、心臓への圧迫のガイドラインもずいぶんと簡素化されましたよね。
ここ15年でAEDが開発され、救命行為の際には119番通報と共に近くからAEDを持ってくるように指示を出す、というのがマニュアル化されました。
一生に一度も遭遇したくないし、遭遇しないに越したことはない救命活動。
しかし目の前でその状況が起きた際、実際に行動がすぐ起こせるかどうかは、どれだけリアルに準備し、心構えをしておくかにかかっています。
そのためにも、施設にAEDを設置し、1年に1回はスタッフで救命講習を確認しあう。これはとても大事なことなんですね。
2010年4月2日。当時ジャイアンツの守備走塁コーチとなった木村拓也さんが、シートノックの最中に突如倒れ、帰らぬ人となりました。現場で救急隊が到着するまで、AEDも用いた救命活動を行われた木村氏の突然の死。
このつらい過去を通して、当時、読売巨人軍のトレーニングコーチだった伊藤博さんが音頭を取り、今もチームスタッフで1年に1度、救命講習を実施されています。
2016年6月。読売巨人軍の根津朋将トレーナーが、川崎市の路上で倒れている50代男性を胸骨圧迫及びAEDを使い、人命救助活動を行ったことがニュースとなりました。
もちろん根津トレーナーの勇気が一番なのですが、ジャイアンツ内でスタッフ全員が、日ごろから一次救命措置(Basic Life support)の意識を共有し実践してきた文化。
伊藤コーチが中心となり、地道に取り組んできた成果でもあったのだろうなぁと、とても心が温まる思いになったお話でした。
こんな風土を作っていくためにも、まずは基本となるAEDを設置しなくては説得力がない。そう思いませんか?
まず見積もり請求をするのもアリ
長々とAEDについてお伝えしてきました。人の命にかかわることなので、やっぱりきちんとしておきたい。
トレーナーやジム施設、介護施設に関わるリーダーたちも絶対にそんな思いを持っているはず。
それにも関わらず、きちんとした決まりが必要がゆえに、AED購入って正直わかりづらいんですよね。
見積もり請求をしても強引なセールスはできない
実際に見積もり依頼をしてAED購入のお手伝いをした経験からいえること。
それは、車販売や保険のように見積もり請求をしたとたんに、じゃんじゃんセールスの電話がかかってくる、というようなことはない!ということ。
業者の方も資格を有して販売している以上、ただ買わせるわけにはいきません。
必ず設置場所や担当者といった詳細を確認したうえで、情報を伝えていく義務があります。
「購入できるかどうかもまだわからないから…」としり込みをする必要はないんです。
「とりあえず」見積もり請求しどんどん聞こう
きちんと信用できる業者さんであれば、ガンガン見積請求してみるのをおススメします。
決まりがきちんとあるので、見積もり請求したうえで、不明点は、担当者にどんどん質問してみた方が早いです。
実際に私が利用したAED専門業者さんでは、リースについてや、耐用年数と本体価格の実際など、わかりやすく教えてくれました。
施設や現場にはいち早く設置しておくべきなのは間違いないありません。
近い将来のための基礎知識としても、まずは行動してみるといいですよ!
まとめ
・AEDはぜったい設置すべきだけど購入方法や価格がわかりづらい
・結果的にリーズナブルに設置するなら専門業者の担当者に相談がベター
・トレーナーだけでなくジムや介護施設で働くスタッフはCPRを覚えよう
・けっこういろいろな仕事の相談、受けています(笑)
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YUJI HIROTA
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