*この記事は2016年4月に旧サイトに挙げたものをリライトしたものです。
「勝者の呼吸法」という本を紹介します。アスレティックトレーナーとして活躍されている、森本貴義さんと大貫崇さんの共著。
お二人ともアスレティックトレーナーとして、米国MLBで働いた経験があり、豊富なキャリアを持っていらっしゃいます。
個人的にも、2014年7月より日本でも定期的に開催され、トレーナー業界でも今とても話題になっている、PRI(Postural Restration Institute)をずっと学びたかったんです。
2016年の5月14・15日に名古屋で開催される二日間の講習会に参加できることとなり、2年越しの希望が叶う事となりました。
募集開始となる3月某日、開始時間の8時をターゲットにパソコンの前に座り、すごいスピードで受講申し込みを行った甲斐がありました!
著者のお一人の大貫さんが、日本におけるPRI講習会の数少ない認定講師ということもあり、PRIのコンセプトを分かりやすく予習するためにもいいなぁ、と思い今回の本を購入した、というわけです。
横隔膜の働きや機能の説明がトレーナーにもわかりやすい
基礎解剖学及び生理学は理解しているつもりですが、この本における横隔膜に関する説明は、本当にわかりやすかったです。
やはり一般読者が読むことを想定して書かれているために、できる限りの多くの例を挙げてくれつつシンプルに的確に表現。
おかげで弘田にとっても、改めて理解を深めることができました。
こういう文章を書くためには、本質的な理解が出来ていなければ難しいので、すごいことだなぁと実感しました。
左右非対称を前提としてのスポーツ考察
PRIのコンセプトにおいて最もインパクトを感じさせるのが、身体を左右非対称であるという前提からのアプローチ。
右肺は3葉、左肺は2葉に分かれているため非対称。
横隔膜の面積は右側が面積も広く厚い、そして右側に肝臓が位置しているため横隔膜は高い位置にドーム状の形を維持しやすい、といった説明がわかりやすく記載されています。
この左右非対称を前提として、自然とスポーツは構成されているのでは、という話がまた興味深かったです。
競技場のトラックや野球のベースは左回り。スピードスケートやフィギュアのジャンプ、そしてハンマー投げのスピンなども左回り。これは長い歴史の中でより効率的であったり、記録が残る方を残してきた結果だとすると、確かに身体の左右非対称が影響を与えているような気がします。
私の経験でも、野球だけでなくラグビー選手にも「10分クールダウンで自分のペースでジョグして!」と指示を出すと面白いように全員左回りになります。
今までは慣習からそうなるのだろうと思っていたのですが、もしかしたら本能的に体がターンしやすいほうにとリードしている部分もあるのかもしれません。
解剖生理学的な上記の見地を加味すれば、当然右体幹部の方が安定はつくりやすく、側方への蹴りだしも右足の方が安定することになりますからね…
左打者と右打者の軸の作り方の違いにも影響?
何でも野球に置き換えればいいというものでもありませんが、この考えでいえば、特に技術型のプレイヤーが多い日本において、左打者が前足重心タイプが多い(少し前へスウェイしながらさばく、低めに強いタイプ)ということ。
今や貴重になってきた右の好打者には軸足残しタイプが多い(しっかりとボールを引きつけて体に近いところで打つ、高めに強いタイプ)という仮説も成り立つような気がします。とても興味深い!想像が広がりますね。
まとめ
一般の方でも何とか理解が深まるように、わかりやすく工夫して書かれた「勝者の呼吸法」。
我々トレーナー業に携わる人間にも、再度復習の意味も込めて学ぶのにおススメの本です。巻末に書かれていた呼吸法で行ったことがなかったものも一通り全部試しましたよ!!
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YUJI HIROTA
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