1年以上前のことですが、神戸製鋼が音頭を取って下さり、関西圏のラグビーチームのトレーナーが、株式会社ライフフィットネスのショールームにて集結。ゲストスピーカーによる講演と勉強会を行いました。
私も喜んで参加させていただき、とても有意義な時間を過ごせました。その中、アスレティックトレーナーの方々の試合時の怪我対応の話を聞き、あ~、なるほどなぁと感じた部分をシェアさせていただきます。
勉強会では「ハムストリングス受傷に関して」というのがメインテーマ。まず最初の判断をどうするか、といった話題になった際に、各チームのチーフ格の方たちが「試合中なのか、練習中なのかで判断が全然違いますよね」と口をそろえていたのが印象的でした。
アスレティックトレーナーを生業にしている方々にとっては当然かもしれませんが、試合中、特に公式戦においては受傷の判断は1秒を争うもの。
笑い話として、まだその選手の下に駆け寄っている最中に、気の短い外国人監督やコーチから、
「どれくらいの怪我なんだ!行けるのか、いけないのか?」と叫ばれることがある、という方もいました。
こんな場合、嫌味ではなくて断固無視するそう。理由は「まだみていないので、わかりません。また報告します」と無線を通して返す時間も勿体ないから。…プロですよね。
逆にボールの行方に集中しすぎて、倒れている選手に全く気がつかないコーチも時折います。交代選手の候補やどのポジションに誰をもってくるか、ということをシュミレーションしてもらわないといけないので、これはこれで困りますよね。
試合中は、一番最初に「行けそうか?」と聞く。これが経験豊かなトレーナー陣の共通見解でした。
当然それだけで判断をするという意味ではなく、本人の感覚を確認することである程度重症度が予測できるからという意味。そのうえで短い時間でできる他動的なROM、自動運動での痛み有無、抵抗運動での痛み確認、を行いながら、適宜無線連絡。
「プレー続行難しいかもしれません。一度外しますが、交代の準備をお願いします。」といった報告を、出来るだけ迅速に行う事が一番大事とおっしゃっていました。
それに対して、練習中というのは基本慎重に保守的に、と考えていることもほぼ共通した見解でした。まずグラウンド外に運び、そこから丁寧にチェックを行い、五分五分だなぁという判断では念のために外す、というような方針のところが多かったです。
私はコンディショニングコーチとして、試合中はリザーブメンバーの選手交代に備えてセカンドアップやストレッチを担当しています。
練習試合であれ、試合中の緊張感は独特でありとても高いもの。
特に怪我の判断を迫られるチーフ格のアスレティックトレーナーは、インプレー中にタイミングを見てピッチに飛び込み、その中で頭をフル回転させて判断していきます。
よく小柄なトレーナーが倒れている選手の傍らにしゃがみこみ、確認しているすぐ横を大男たちがプレーを行っている様子をTVなどでもみることがありますよね?その傍から離れるような暗黙ルールはあるらしいのですが、それでも命がけ。
4年間同じチームで関わってきたチーフメディカルトレーナーの飯田さんも、公式戦後のバス移動のときにはずいぶんと疲れている様子が感じられます。キャリアを積めば積むほど、現場の怖さを感じるんだろうなぁ、と尊敬します。
その他、ウォーター係やベンチ回りで処置の準備、時間を管理しながら選手交代をスムーズに行うチームマネージャーなど、ポジションが違えど、ミスは許されないのが試合の現場。
これからスポーツ現場のスタッフを志す学生たちには、大きな緊張感の中での仕事なんだというのを改めて認識してもらいたいもの。
そんな視点でテレビでのスポーツ観戦やライブでの試合観戦をしておくと、イメージをつかみやすいですよ!
・怪我への対応は練習中と試合中で大きく異なる
・試合中のスタッフの緊張感も想像をはるかに超えるもの。特にメディカル系トレーナーの判断は秒単位
・これから選手のサポートを目指す学生は試合中のスタッフの動きをチェックするのも勉強になります