自分で思考することの重要性。
過去から得た知識に未来の方向性を示す思考は流されがちだからこそ、きちんと思考する。最近はこんなことを意識して過ごしています。
そんなトレーニングの一環に引っかかったのが「高血圧治療」の問題。生理学を何年も学んできたものの、この高血圧治療の対策に矛盾を感じていました。
血管の弾性が落ちていく老化に伴って血圧が上がるのは、ごく自然なこと。
体内をまんべんなく循環させる必要がある血液。ある程度圧を高めて循環を促すための適応として体が血圧を高めているのであれば。
…これを薬の力で下げるのは、体にとって悪影響ではないのだろうか?
物事を順序立てて考えたら、とても自然な疑問のような気がしませんか。
先日久しぶりに大型書店に立ち寄る時間があり、この疑問に答えてくれるような本に出会うことができました。それが「やってはいけない高血圧治療」という本でした。
NHKの番組内で紹介されていた高血圧人口のグラフを目にした記憶があります。
その中で「ここ10年で高血圧人口は増大の一途をたどっている」という説明と右肩上がりのグラフを見て、「わ、怖いなぁ。自分もきをつけなくちゃ…」と感じたものでした。
ところが高血圧人口が急増した境目となる2008年には、大幅な血圧の基準値の変更があったんですよね。
それまで実質的には収縮期(上の)血圧が180㎜Hgが改善対象だったものが、年齢問わずに一気に130㎜Hg以上が指導対象となったのでした。
そう考えると、単純に今まで最高血圧142㎜Hgで「問題なし」と判断されていたような人が、軒並み「高血圧」人口に数えられるようになっただけなのがわかりますよね。
2015年の日本における「国民健康・栄養調査」によると上の血圧の平均値は、男性131.1㎜Hg、女性は123.8㎜Hg。2005年からの10年間では、男女ともに有意に低下しているそうです。
イコール全体として健康になっている、という捉え方も安直すぎて気をつけなくてはいけません。
男女ともに平均体重も下がっていること(血圧は一般的に大きくて体重が重い方が高くなるのが理屈です)、血圧の基準値が下がったことで降圧剤を投与されている人口が増加していることも影響があるはずですから。
このように日本全体の平均血圧が増加しているわけでもないのに、高血圧人口が大幅に上がっている現状は奇妙なものですよね。
「30年前の降圧剤の年間売上高が2000億円 → 2008年の基準値改定以降の降圧剤年間売上高が1兆円を超え続けている」という事実。
…変に勘繰りたくはないですが、結局ここに関連しているのではないかと考えるのは、それほど突拍子もない発想でははないでしょう。
すべてを鵜呑みにするのではなく、自分なりの思考プロセスを組み立てながら判断しなくてはいけないのは当然。この本を読んで、自分や自分の大切な人たちが血圧の問題を抱えた際の基準ができたと思っています。
「お医者さんに言われたから」、「基準値より高いから」、「皆もそう行動しているから」、というのは決定的な理由にはなり得ません。
権威がこう言っていた、ネットにこう書いてあった、あの本に書いてあった、それだけで決めていても反応の域を越えません。
私の親、団塊世代の方は特に「ある種の権威からの情報」に100%従ってしまう癖があります。賢い選択を!あなたの健康を左右する「従順すぎる」診察室での態度
判断材料に対して、反応するのではなくきちんと自分で考え咀嚼して「判断する」こと。自分の体のことだからこそ、自分なりのリテラシーを高めておくことは大切です。
しんどくても、自分の脳で考えて納得解を導き出し、その結論に対して覚悟を決めて決断をする。こういったプロセスを怠らない。
選手やクライアントの健康に関わるトレーナー業である我々。世間で言われているもう一つ二つ深い考察を交えた知識を提供できないと、有益な情報として相手の役に立つことはできないはず。
深掘りする思考を癖づけていきましょう。
・収縮期血圧(上の血圧)は日本全体で上がっているわけではない
・「高血圧の基準値」そのものが引き下げられている
・降圧剤に関わる費用は年々増加している
・血圧上昇のリスクと降圧剤を使用し続けるリスクを天秤にかける必要あり
・聞いている常識をうのみにせず自分で思考しよう