お久しぶり…そして今さら感もありますが、温故知新の知識として、未だにけっこう使えるよね!ということで「立位姿勢から見えてくるもの」という話を。立位姿勢の分析についてです。
そもそも二足歩行で生活している人間というのはバランスが悪い。この事実を把握しておく必要があります。
もともとの祖先は四足歩行だったわけで、肩の可動性を出して二足歩行にすることで、腕をフリーにすることが出来るようになった。そこからいろいろな作業を同時にできるようにしていく、という進化の過程で二足歩行になったわけです。
しかし元来が四足歩行向きの身体だったところから上体を起こしているので、負担がかかりやすくなっているというのは大前提となっています。
筋力テストやファンクショナルムーブメントスクリーン(FMS)といわれるものが、私たちの業界では有名です。
しかしこれらの評価法よりも根本的な問題が分かりやすいというのがあり、私は2007年頃から片足チェックから入った立位チェックというのを始めていました。
その後、勉強や修正を重ねて、他の方のアイデアを使わせていただきつつ、自分で改良を続けました。時間をかけて自分なりの立位姿勢のパターンを作っていったわけです。
もともと、その人が持っている根本的な問題がわかるというところが立位姿勢を見る大きな利点だと思っています。特に一般の人はまず、そもそもきちんと立ててないことが多いという印象です。
もちろん動いている時の評価と違う点も多いため、動的評価とは分けて考えなければいけない部分も多いです。しかしトレーニング指導する際に、その人の立位姿勢を見ておくとその人がもともと持っている体の使い方の癖だったり、使えているところ・使えてないところというのは相当量の情報として手に入る。
ですから、そういった意味で非常に有益だと思っています。
立位姿勢で最も注目する部位が骨盤です。骨盤というのは、くびれの下にある腰の骨の部分ですよね。骨盤の後方が極端に下がっている(後傾と呼びます)のも、反り腰に見えるような、上方に立っている(骨盤前傾)のも良くないです。
筋肉は骨盤のいろんな場所にくっついてる筋が多いので、キュッとなったりダラっとなったりしている筋肉群の状態によって良くない骨盤のポジションに入ってしまうんです。
おへそのちょっと下、左右に出っ張った骨があるのかわかると思います。そこを触ってみてください。
上前腸骨棘。英語名の頭文字でASISというのですが、名前はどうでもいいです。左右の1番高い所触ってみてもらうとそれを全身鏡で前から見たりすると、高さが揃っているかどうかチェックできます。
腰の下のほうにある今度は後ろです。ASISほどわかりやすくはないですが、腰の下の方にも出っ張った2つの骨が近場にあります。
これは上後腸骨棘。PSISというのですが、この高さとASIS(前の左右の腰骨の出っ張ったところ)の高さを比較することで骨盤の傾きを判断したりします。
ランドマークになる前の骨左右の前の骨と後ろにあるその骨2つを比較して高さを見ることで、骨盤がどういう状態にあるかを大体推察していくという感じです。
細かく言うと仙骨底の傾きも調べないと推察が雑になってしまうのですが、あまり難しい事は良しとして、「だいたい骨盤が後傾してるね」だったり、「ちょっと前傾してるね」だったり。そもそも左右差がすごく大きいねというのがチェックできたりします。
よく全身写真で見ると、肩の高さが全然違うね!なんて話になったりしませんか?でも実は、骨盤の高さそのものが既に違ったりしていて、その上に乗っかっている上半身は全然高さの差がないということもあるんです。
最近見ることの減ったマッチ箱をイメージしてみて下さい。マッチ箱が上半身として、上半身用のマッチ箱を支えている下のマッチ箱がそもそも歪んでいるとしたら…。
上が全く歪んでなくても、下が歪んでいる形のまま上に乗っかりますよね。そうすると結果的に上のマッチ箱の上辺の2角。上辺の2つの角も高さが違って見えるので、上で肩の高さが違うじゃん!と言われたりします。
でも実はそもそもの下半身の土台から歪んでいるということがあったりするんですね。
こういった姿勢が「常態化」といって日常的に起こってくると、やはり腰痛であったり頭痛の原因にもなったりするわけです。
もちろん「これが正解!」という姿勢が存在するわけではないです。
骨盤の前傾が強いと腰痛が出やすいというのは一般的に言われたりしますが、これはアスリートには全く当てはまらないことも多い。一般的な比率よりもアスリートたちは圧倒的に骨盤前傾が多いですから。
一概には言えませんが、大きな筋肉たちの筋のテンションがそもそも高いから、前方に力強く進みやすいようなのが骨盤前傾の位置なので、そういったポジションに入りやすくなっているのだと思っています。
また姿勢そのものを考えても、そもそも左右対象みたいな体は存在しないです。体系立てられた考え方として、理学療法士さんやトレーナーの間でここ7~8年ほどで浸透してきた考え方にPRIというものがあります。
人間の臓器はそもそも右側に肝臓はあるが左側にはない。横隔膜も右側が左側に比べて大きい。肺も右側は三葉に分かれているが、左側は二葉のみ。構造的に支持されていることを前提とすべき
この視点は正直「目から鱗」でした。
見た目は左右対象に見えるから、無意識にそこに近づけようとするのが人間の性。それが正解だなと直感的に感じてしまうのですが、体の中を透かしてみたときに(実際に透けて見ることはできませんが)、構造的にそもそも非対称という事実があるんですね。
だから、見た目にわかりやすく姿勢を良くすることを目的にするのではなく、安静時の立位姿勢から多くの情報を抽出することを目的とすべき。
その上で明らかに負担がかかっている姿勢に関しては、治療や運動・ストレッチなどを使って改善していく。こんな風に考えるといいと思います。
歪んでいるとか、負担のかかる姿勢になっている。だからイコールすぐ治療してもらったりマッサージということではなく、実は運動を使っても改善していくことができるんです。
いずれにせよアスリートであれ一般の方であれ、立位姿勢の癖にはたくさんのヒントが隠れています。
そんな視点で誰かの立ち姿を見ると結構面白いです。性格なんかもちょっと見えてきたりするところもあって奥深いのが立位姿勢なんです。
私が2013年に出版した「姿勢チェックから始めるコンディショニング改善エクササイズ」という本は、ありがたいことに未だにアマゾンなどで販売しています。
専門書ではありますが、同業者や理学療法士の方でまだ読んだことがなくて興味あるなという方は、わかりやすく書いていると思いますのでアマゾンでポチってみてください。