2016年秋。タチリュウコンディショニングジムの代表取締役である藤田文武さんとトレーナー業界で活躍されている朝日謙太さんとお食事をする機会がありました。
その際、藤田社長からこんなお言葉を。「弘田さん、前よりも体がごつくなったんじゃありません?」
それを聞いて、
「うん、今はラグビーの現場で働いているからね。選手から見てそれなりに体がしっかりしていないと、なかなかいう事を聞いてくれないから。
あんまり好きじゃないけど、意識的に筋肉を大きくつけるようにしてるよ。」
と普通に答えたのですが、このコメントに予想以上に反応してもらって驚きました。
「そんな簡単なことじゃないでしょ!プロですね…」と言っていただき恐縮してしまいましたが、S&C専門家としてはある程度当たり前のこと、だと考えているんです。
半年ぐらいでは難しいでしょうが、一定期間以上を特定のスポーツ担当として携わっていると、ある程度その競技特性に体つきを寄せることが可能になります。
小柄な自分の身長を10㎝高くする、意外と大きい頭のサイズを小さくする、といった事は出来ませんが、体を大きくしたり引き締めること自体は、それほど難しくないです。
ストレングス&コンディショニングというニッチな専門職を生業にしているわけですから、治療家の方やアスレティックトレーナーよりも、そういった適応は自分自身が出来ていないと、仕事にならないですよね。
煙草がやめられない、自分の意志でなく大幅に太っている、提供しているプログラムをきちんとしたデモが出来ない。
そんな人の言う事を誰が聞くのでしょうか。
自分が主に仕事として対象にしているのがアスリートなら、もはや言わずもがな、ですよね。
逆に言うと意識をしていなければ、自然と関わるスポーツに体つきは影響を受けていく、という部分もあります。
私はそれほど器用なタイプの専門家ではありません。
ストレングス系もフィットネス系も自分で試しながら、理論上のものと自分の体験を組み合わせないと、自信をもってメニューを提供・指導することはできないんです。
フォワードとバックスでメニューを分けて考える必要がある時期などは、フォワードはスクラムポジションでのアイソメトリック種目を考えたりすることがあります。
いくつか候補を考え付いたら、ジムで実際にやってみるわけですよね。これはフィットネス系も同じです。
例えばこんなものも急に試したりします↓
提供するメニューの原理原則は変わりませんから、理論的にはサッカーであろうが、テニスであろうが、今まで全く指導したことがない競技でもきちんと成果をあげる自信はあります。
しかしそれは今までの自分の知識と経験を駆使して、デスクの上で、パソコンのソフトでササっと作るものではないんですよね。
きちんとその時に、頭から煙が出るほど考えに考えて、出来る限りの新たな経験を自分で試すことは必須です。
結果的に自分のトレーニングにおいても、それまでとは違うアプローチや量、効かせ方をしていくことになるので、体つきが変わるというところがあります。
少し引いた目で見て、「やり過ぎた体つきにならない」ことも同時に意識しなくてはいけないんですね。
上の画像は2017年夏のもの。ラグビーのS&Cだけを生業にしているわけでないので、ちょっとつけすぎになった時期です。
今は意識的に肩周りのエクササイズは減らして、一般の方に「気持ち悪がられない」程度に抑えています。
…特定のスポーツやそもそもトレーニング業界にいると、一般的な「いい体」からズレていくのは簡単。客観的な視点からバランスよく、というのが実は一番難しいことかもしれません。
2016年のヘルスプレスに興味深い記事が掲載されていました。「リーダー」を目指すなら筋トレをすべし! 優れたリーダーをつくりあげる方法とは?
米カリフォルニア大学バークレー校の経営学教授、Cameron Anderson氏らが『Journal of Personality and Social Psychology』(2015年12月14日)に発表した研究内容。
この研究は、標準化したビジネスシーンの写真を男女の被験者に見せ、登場人物の地位とリーダーシップの資質を評価してもらうというもの。
被験者は男性の登場人物に対して、身体的な強靱さと地位の高さ、リーダーシップを極めて強く関連づけて評価した、と結論付けています。
鍛えた体はある種攻撃的な印象を与える側面もありますから、何事も加減というものは大切。
しかし男性の場合は、ビジネスマンであってもこういった印象を抱かれるわけです。私のようなトレーニング指導を生業としている人間にとって、もっと重要なのは間違いありません。
自分の体がどんな斬新でお洒落なものよりも大切な「名刺」になる。独りよがりではなく、クライアントや選手から信頼してもらいやすい体を作ることは必須です。
当たり前のことではあるのですが、この仕事をしている限り基本ずっとトレーニングを継続し続けていきます。これって意外と高いハードル。
トレーニング指導を行うことがメイン業務ですから、その間は自分はトレーニングしないわけですよね。
長い時間拘束が基本なのがスポーツ現場でのスタッフ業務の基本。
一日中業務をし、自分のプライベート時間を削ってトレーニング時間を確保するのは、一般の方が時間を捻出しながらトレーニングするのとまったく変わりません。
一般の方で20年もの間、コツコツとトレーニング継続をしてきた方はそれほどいないし、周りから尊敬の念で認められるのではないでしょうか。
仕事なんだから当たり前だろ!と言われればそれまでなのですが、トレーニングを継続し自分の理想の体を維持し、常時動ける体を作っておくということ。
これ自体は決して低いハードルではない、ということはこの仕事に関わっていない方にも、理解してもらいたいところ。
日進月歩の医科学やトレーニングの知識を日々インプットすることや雑務もある中での、永続的な時間投資になります。
これから専門家としてS&Cコーチやスポーツトレーナーを目指す学生にも、この部分は肝に銘じておいてほしいところ。この道に進むという事はそういう時間投資を継続していく、ということなんです。
大変な部分がありますが、習慣化し継続していることによって、教科書的な理論や知識だけではない「感覚」や「勘どころ」といった知恵が増えていきます。
そのことが説得力となり自分の商品力を上げてくれるのです。
プロとして目的意識を強く持って「欠かせない手段」として、トレーニングを継続していきましょうね。
王道戦略としてフレームワークのヒントになるセミナーを行っています。
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・関わっているスポーツらしいボディメイクをすることも大切
・S&C専門家にとってボディメイクという目的は簡単なもののひとつ
・だんだん「スタンダード」がわからなくなるのに要注意
・トレーニング専門家らしい体作りは強力な名刺と一緒
・トレーニング継続こそ実は高いハードル。頑張りましょう