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自動降格

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15位順位決定戦終了後。チームバスに乗り、花園に戻りチームの荷物を他のスタッフと共に降ろしてから、キャリーを引っ張り、自分のマンションに戻った私。

気がつけば電車の中に。移動中にインターネットでチケット購入し新幹線に揺られて東京へ。

電車とバスを乗り継いで1時間ほどかけて埼玉の自宅に帰りました。22時近くに何も告げずに帰宅したインターホン越しのパパの姿に驚きつつ、妻も娘たちも優しく私を迎えてくれました。

守ってる意識をもっと持たないといけないのだけれど、やっぱり守られている。この愛しい家族と離れて戦ってきた4年近く。最後の結果が自動降格となってしまいました。

 

16チーム中最下位となり自動降格

悪循環にはまっていくチームを感じながら

正直、シーズン途中まで自動降格の可能性をリアルに考えたことはほとんどありませんでした。 ウインドマンス明けの11月から頭の中は入れ替え戦に行ってから、いかにいい状態で一発勝負に臨むか、ばかり。

レッドカンファレンスの偏り。ホワイトカンファレンス豊田織機の劇的な逆転勝利からの宗像サニックスとの順位決定戦。公式戦13試合で0勝のコカコーラが6勝しているNTTドコモに勝利する勝負のアヤ。同じレッドカンファレンスのNTTドコモとの15位順位決定戦へ。

すごい勢いでどんどん近鉄にとって悪い流れになっていくのを渦中の一人として感じていた。その流れをチームとしてせき止めることができませんでした。

選手はプライドをかけて今までにない大きな重圧の中、最後まで諦めず前を向き続けて体を張り続けてくれました。一切選手を責める気持ちにはなりません。

しかし結果は13対21での敗退。89年という長い歴史を持つ近鉄の2度目の2部落ちに。

試合終了後、涙する多くの選手達。見たこともない沈痛な表情をした仲間も。この試合限りで現役を離れる選手もおり涙に濡れた表情で「ありがとうございました」と握手をしに来てくれ…。

昨年まで主将を務めた豊田大樹は「申し訳ありませんでした」と小さな声で詫びました。かける言葉も返す言葉もなく、ただ肩を軽く叩くことしかできませんでした。

 

集大成の年に

7位、12位、そして16位。自分がヘッドコンディショニングコーチとして、ストレングス&フィットネスを任せられてきた3年間の成績。

2014年途中からラグビーの世界に初めて飛び込み、2015年から自分の専門分野のリーダーを任せていただきました。家族に迷惑をかけている自覚はありながら、気がつけば4年近い月日が経過。

2017年3月。新シーズンが正に始まるという日の朝。頭の中に、
「今年をラストイヤーにしよう。自分の集大成の年にして家族のもとに帰る。信じる文化と目に見える成果を残るメンバーに引き継いで、新しい環境に身を置くんだ」
という明確な意思が自分の中に「降って」きました。

近鉄のS&Cの仲間、メディカルスタッフには春先から今季限りで退団する意向を伝え、その当時、およそ逆算した残りの日数は270日程度。悔いを残さず、笑顔でやり切れるように、と思いながら過ごしてきました。

…こんなラストで終わるはずではなかった。あまりにも想像外過ぎて、試合終了後、涙も悲しみもリアルには出てきませんでした。

 

「自分のせいだ」も「自分の分野の責任は果たした」も違う

俺の力不足で勝たせてあげられなかった。カリスマリーダーや監督でない限り、そんな思いを抱く権利も力もないはず。こんな発信をする同業食の専門家は自己陶酔しているだけ。肯定する気は全くありません。

でも。

「勝敗そのものは自分の専門性や成果とは別の要素が大きすぎる。結果を出して欲しいが、その如何によって自分の仕事の評価が変わるのはおかしい」

そんな一見正論に聞こえる理屈を本気で唱えている人もまた「ああ、『アスリートスポーツの本当のところを知らないんだな』」と感じます。

チームの結果を残すこと。平たくいえば勝つため。その大事な手段として我々専門スタッフは呼ばれています。理にかなわないとか、合理的でなくても、その目的を最優先に手段を講じるプロであるべきなんです。

 

この4年近く、自分のしてきたこと、スタイルに悔いはありません。それでも割りきれない苦しみに押しつぶされそうです。

負けた悲しみやショック。その後にやってくる本当の苦しみ。来季の体制はどうなるのか。予算や方針は大幅に変わるのではないか。トラウマが残り、生活の不安に直結する。

スポーツ現場でチームや個人が結果を残せないって、つまりそういうことだから。

 

このタイミングでチームを離れる自分は、既定路線だったとしても、自分だけ故障した船からボードで漕ぎ出すような気分。4年以上、家族より長い時間をかけてきた「自分のチーム」が試合が終わった瞬間、遠い存在に変わってしまいました。

勝たないとダメ。勝たないとダメなんだ、チームスポーツは。誰も救われないんだから。

 

腹を括り次のステージへ

ラグビーをすることが生業となりプロとして戦う選手たち。このレベルは結果が全て。勝つこと。勝つことが正しいこと。勝たないとダメ。

プレッシャーで吐き気がする。終わった後、何時間も茫然自失になる。家族も、ファンも、伝統も背負って戦う。その舞台の一番近くに自分はいるんだ。

本当の意味で「腹を括って」いたのか?試合翌日の今も頭の中にその思いがグルグル回っています。

 

ぐったりとした疲労感でそれでも全く眠くならない新幹線の中。電子掲示板のフラッシュニュースでサントリーがパナソニックを破り日本一になったニュースが流れてきた。

引退選手の涙も大樹の握手もチームを去るコーチの「ずいぶんワガママ言ってきたけど、ありがとうな」の言葉も。何だか一気にいろいろなシーンがあふれてきて、初めて涙が出ました。

近鉄ライナーズでの自分の時間は終わってしまったんだなぁ。

 

近鉄の二部降格。これは紛れもない事実。受け止めよう。近鉄も、チームを離れる自分も。
この結果をどう次のステージに活かすのか。これからの自分たちの歩みで証明するしかないのだから。

最後になりましたが、不甲斐ない試合が続く中、ずっと熱い声援を送ってくださったファンの方々。選手や我々スタッフを支えてくれた家族。近鉄ラグビー部をサポートしてくださるOBや会社の方々。

選手は持てる力を出した試合でしたが、力及ばず自動降格となりました。1スタッフとして申し訳ない気持ちしかありません。今シーズンのサポート、本当にありがとうございました。

最初にラグビーの世界に飛び込んだチームが近鉄ライナーズで良かった。このチームが大好きです。

 

 

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YUJI HIROTA

アスリートスポーツの現場をメインに活動するトレーニング・コンディショニングの専門家。「コンディショニングコーチ」ですがスポーツトレーナーといった方がわかりやすいのかも。実は鍼灸師でもあります。
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